会社を辞めるときには、退職後に「失業保険」をもらえるかどうかは非常に重要です。
失業保険を受給できればしばらく生活に困りませんが、受給できなかったらたちまち困窮してしまうかもしれません。
今回は失業保険の受給資格が認められる要件や具体的にもらえる給付金額、失業保険を受給する際の注意点について解説します。
失業保険の受給資格
そもそも失業保険とは何なのか、どういった制度なのかを理解しましょう。
そもそも失業保険とは
失業保険とは、会社を辞めた労働者が国から受け取れる給付金です。退職しても次の就職先を見つけるまで生活に困らないように、失業保険の制度が設けられています。
実は「失業保険」は正式な法律用語ではありません。正しくは「雇用保険」といいます。会社や事業者は一定規模以上で労働者を雇用する場合「雇用保険」に加入しなければなりません。
雇用保険は労働者の雇用の安定と促進を目指すための公的な保険です。
基本的な受給資格要件
雇用保険に基づいて失業した労働者が給付を受ける手続等は以下のとおりです。
雇用者が雇用保険に加入している
会社(雇い主)が雇用保険に加入していることが必要です。会社側が雇用保険に未加入である場合や雇用保険で必要となる届け出を怠っている場合には、失業保険給付を受けるのは困難です。
受給資格がある
労働者が退職前の一定期間雇用保険に加入していることが必要です。
労働意思と労働能力がある(一定の求職活動を行っている)
労働者に労働する意思と能力が必要です。具体的には受給期間中に一定の求職活動を行い、これをハローワークに報告する必要があります。
自己都合退職の場合
自己都合退職と会社都合退職とでは失業保険の細かい受給資格が変わってきます。まずは自己都合退職のケースからみてみましょう。
自己都合退職とは、労働者側の事情により退職するケースです。
この場合、受給資格として「退職前の2年間に12か月以上の雇用保険加入期間」が必要です。ただし12か月は1社である必要はなく、2つ以上の会社で2年の間に通算12か月以上雇用保険に入っていれば受給資格を満たします。
また、自己都合退職の場合、退職後3か月間は失業保険を受給できません。この3か月の待機期間を「給付制限期間」といいます。
なお、自己都合退職であっても正当理由による退職であれば「特定理由離職者」として会社都合と同様に受給資格が緩和されます。
会社都合退職の場合
会社都合退職とは、リストラや会社の倒産など会社側事情での退職です。この場合、労働者保護の必要性が高いので失業保険の受給要件が緩和されます。
具体的には退職前の1年間に6か月以上の雇用保険加入期間があれば、失業保険を受給できますし、失業給付の給付制限期間もありません。
会社都合退職の失業者を「特定受給資格者」といいます。
失業保険の受給資格がない例
病気、けが、出産・育児、介護等の理由で就労できない
このような場合は「労働能力」がないとして失業保険の受給資格を満たしません。ただし受給期間中に労働能力を回復して求職活動を開始すれば、残りの期間について失業保険を受給できる可能性があります。受給期間延長は就労できない理由により1~3年の範囲で延長できる場合があります。
再就職した
退職後に再就職して給与を受け取ることができるようになった場合、失業者ではないので失業保険を受け取ることはできなくなります。
失業保険の給付金はいくらもらえるのか
失業保険から給付される金額はどのくらいになるのでしょうか?
基本的な計算式
基本的には、以下の計算式で算定します。
「1日あたりの賃金額×給付率」×給付日数
1日あたりの賃金額と基本手当日額について
1日あたりの賃金額は「退職前6か月の賃金合計額÷180日」として計算します。そして「1日当たりの賃金額×給付率」を「基本手当日額」といいます。
以下のように、年齢によって1日あたりの賃金額と基本手当日額の上限が定められています。
離職時の年齢 | 1日あたりの賃金額の上限 | 基本手当日額の上限 |
29歳以下 | 13,630円 | 6,815円 |
30~44歳 | 15,140円 | 7,570円 |
45~59歳 | 16,670円 | 8,335円 |
60~64歳 | 15,890円 | 7,150円 |
給付率について
給付率は離職時の年齢や1日あたりの賃金額に応じて50~80%の範囲内で決定されます。よって、失業保険の給付金額はだいたい賃金額の5~8割程度の金額になります。
何割になるかについては個別のケースによって異なるので、ハローワークに問い合わせて確認しましょう。
給付期間について
失業保険の給付期間は雇用保険に加入していた期間や離職時の年齢、会社都合退職か自己都合退職かによって変わります。基本的に雇用保険に加入していた期間が長ければ長いほど受給期間も長くなります。
また会社都合退職の場合には90日~330日間となりますが、自己都合退職の場合には90日~150日間です。
会社都合退職の場合、失業保険の受給開始が3か月遅れるだけではなく受給可能な給付期間も制限されるので、給付総額が大幅に減額される可能性が高くなります。
失業保険の給付金申請から受給までの流れ5ステップ
失業保険の給付金を申請してから受給するまで、どういった流れになるのか、5段階のステップを踏んでみていきましょう。
離職証明書の確認と離職票の受け取り
一般的に退職が決まったら、会社から労働者へ「離職証明書」が示され、内容の確認を求められます。特に問題がなければ、労働者は記名捺印あるいはサインをして会社側へ返します。
会社が労働者による確認済の離職証明書と添付書類をハローワークへ提出すると、ハローワークが内容を確認して会社側へ「雇用保険被保険者離職票」を交付します。
そして会社はハローワークから受け取った雇用保険被保険者離職票(離職票)を労働者へ渡します。これが失業保険申請の際に必要となります。
離職票をもってハローワークへ失業手当の申請に行く
会社から離職票をもらったら、労働者は住所地のハローワークへ失業保険の申請に出向きます。
その際以下の書類や資料が必要です。
- 雇用保険被保険者離職票
- マイナンバーを確認できる書類(マイナンバーカードや住民票、マイナンバー通知書など)
- 身分証明書(運転免許証など)
- 写真2枚(縦3cm×横5cmのもの)
- 本人名義の普通預金口座番号がわかるもの(通帳等)
- 印鑑(認印でかまいません)
雇用保険受給者説明会に出席して講義を受ける
次に「雇用保険受給者説明会」に参加して話を聞く必要があります。受講を終えると失業保険を受給するための「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付されます。
失業の認定を受ける
失業保険を受給するには「失業者としての認定」を受けなければなりません。そのためには4週間に1度「求職活動をしている」状況をハローワークに知らせる必要があります。
指定された日時にハローワークに行き、求職活動をしていることを報告し「失業の認定」を受けましょう。
失業手当が振り込まれる
失業の認定を受けられたら、会社都合退職の場合は7日の待機期間経過後、自己都合退職の場合には更に3ヶ月の給付制限期間経過後に、失業手当の給付金が振り込まれます。
給付金を受給する際の注意点4つ
失業保険からの給付金を受給する際には、以下の4点に注意してください。
ハローワークへの就職申し込みの曜日(失業認定日の曜日)
失業保険を受給するには、4週間に1回ハローワークに通って「失業の認定」を受けなければなりません。
「4週間に1回」なので、毎回の失業認定日は「曜日」が固定されます。「最初にハローワークに求職の申込みに行った曜日がその後の失業認定日になります。
別の用事などで都合の悪い曜日があるなら、当初から都合の良い曜日を選んでハローワークへ求職申込みに行きましょう。
就職活動と認められる行動を継続する
失業保険を受給するために「失業の認定」を受けるには「求職活動」を継続する必要があります。求職活動として認められるのは、以下のようなものです。
- ハローワークの窓口で就職相談する
- ハローワークが主催するセミナーに参加する
- 求人へ応募する
1回失業認定を受けるために2回以上「求職活動」していなければなりません。何もせずに家で過ごしていると失業保険を受け取れなくなってしまうおそれがあるので注意が必要です。
アルバイト等の就労再開により給付が受けられなくなることもある
失業保険は失業者のための給付なので「就労」すると打ち切られます。
生活費が足りないなどの事情でアルバイトをしたとき、バイト先で雇用保険に加入すると、その時点で失業保険が打ち切られるので注意が必要です。
なお、雇用保険に加入する必要があるのは以下の2つの要件を同時に満たすケースです。
- 1週間に20時間以上労働する
- 雇用期間が31日以上
失業保険を受給できる期間とタイミング
失業保険を受給できるタイミングや期間は人によって異なります。
まず「会社都合退職」か「自己都合退職」かで大きな差があります。会社都合退職なら失業後すぐに受け取れますが、自己都合退職なら3か月経たないと受け取れません。また受給期間も会社都合退職の方が長くなります。
会社都合退職の方が労働者にとっては圧倒的に有利になるので、退職理由がどちらになるか微妙な場合には会社と交渉して「会社都合退職」扱いにしてもらいましょう。
会社側が自己都合退職で処理していても、これに異議がある場合、ハローワークの調査により会社都合退職に処理が変更されることもあります。異議がある場合にはハローワークに相談してください。
まとめ
失業保険は労働者にとって重要な権利です。退職する際、まずは受給資格を確認しましょう。
また自分から申請に行かないともらえないので、退職したら離職票をもらって早めにハローワークへ申請する必要があります。
退職理由についてはその後の処理に大きく影響しますので、実態に即した処理がされるよう注意しましょう。