一人親方のような個人事業主は、原則として国の労災保険の適用対象外となっています。
ここでの個人事業主とは、従業員を雇わず(年間使用労働者延べ100日未満を含む)、事業を営む方のことです。
業務災害や通勤災害による怪我や疾病に対して健康保険は原則使えないので、労災に巻き込まれた場合は、雇われている方々とは異なり、自己負担(責任)での対応になるリスクがあります。
業務災害や通勤災害による怪我や疾病等で仕事を休んだり、働けなくなったりした際のセーフティーネットとして労災保険を活用するためには、特別加入制度を利用する必要があります。
この記事では、労災保険の全体像や、なぜ必要なのか、といったポイントをご説明したうえで、補償の内容や保険料についてご紹介します。
一人親方以外の自営業者や、特定作業従事者も労災保険の特別加入の対象になります。どんな職業の方がこれらに該当するのか本文で補足します。事業主の方であれば特別加入制度を使える可能性が高いので、ぜひご参考ください。
一人親方の労災保険特別加入とは?制度の全体像と必要性を解説
労働者を雇用せず、自分1人で事業を営む人のことを一人親方といいます。
ここでは、なぜ一人親方に労災保険は必要なのか、特別加入制度とはなんなのか、といったポイントをご紹介します。
一人親方は労災保険の対象外!補償を受けるには特別加入が必要
大前提として、人を雇用せず一人で事業を営んでいる方は、特別加入制度を利用しない限り労災保険に加入できません。労災保険は、労災のリスクから被雇用者を守るための制度なので、事業主を守ることは本来想定されていません。建設事業における元請会社の労災保険も使えません。
事業主であろうと従業員であろうと仕事中や通勤往復途上での事故にあうリスクがあることに変わりありません。一定の条件を満たした事業主であれば労災保険に加入が可能です(特別加入制度)。
ご自身が仕事中に事故・怪我をすることは想像しておらず、わざわざ保険料を払いたくないと思う方もいるかもしれません。
そこで、なぜ一人親方にとって労災保険が必要なのかもう少し詳しくご説明します。
一人親方が労災保険に加入しないリスク
労災保険人加入しない主なリスクは次のとおりです。
労災保険に加入していない場合 | 労災保険に加入している場合 |
現場に入れないことがある(建設事業) | 現場に入れる(建設事業) |
労災に健康保険は原則利用できない | 労災保険の給付を得られる |
治療費・手術費は自己負担 | 傷病を治すための費用は全額支給 |
労災による怪我で休むと収入が途切れる | 休業給付として1日の収入の8割程度が休んだ日数分支給される |
後遺障害が残って収入を維持できなくなる | 重度の後遺障害が残った場合は、亡くなるまで一生涯の給付が支給される |
建設事業の場合、労災保険に加入していることが仕事を発注する条件になっているので、労災保険に加入していないと現場に入れないこともあります。
万が一、業務災害や通勤災害に遭った際には、傷病を治すためにお金がかかりますし、働けなくなって収入が途切れる恐れがあります。業務災害・通勤災害での傷病に対して、健康保険は原則使用できないので、治療にかかる費用をはじめ生活費の補償などもなされず、借金をする恐れもあります。
労災保険に加入していれば、傷病を治すための費用は全額支給されますし、重い障害が残って働けなくなった場合も給付を得られます。雇われている方同等に業務に従事をされる方であれば労災にあうリスクは決して低いわけではないので、労災保険に加入して働けなくなった時の安全と収入を確保したいところです。
労災にあいやすい業種とは?肉体労働者にこそ労災保険は必須
肉体労働をされる方ほど労災のリスクがあるのは誰でも想定できると思いますが、実はあらゆる業界で労災の被害にあう方がいらっしゃいます。
どのような業種の方が労災にあうリスクが高いのか、令和2年の労災発生状況をもとにもう少し詳しくお伝えします。
労災で4日以上休んだ人の割合が多い業種は、1位: 製造業(19.6%)、2位: 陸上貨物運送業(12.1%)、3位: 建設業(11.4%)でした(第三次産業を除く)。
上記のグラフの職種に携わる方は、労災保険に加入する必要性が高いでしょう。
労災保険に特別加入できる一人親方の範囲と、一人親方以外で加入できる事業主
特別加入制度を利用できるのはどんな事業主なのか、『一人親方その他の自営業者』『特定作業従事者』のそれぞれに該当するのはどんな方なのかご説明します。
一人親方その他の自営業者とは
一人親方その他の自営業者にあたるのは、次に該当する事業主です。
一 自動車を使用して行う旅客若しくは貨物の運送の事業又は原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業
二 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業
三 漁船による水産動植物の採捕の事業(七に掲げる事業を除く。)
四 林業の事業
五 医薬品の配置販売の事業
六 再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業
七 船員法第一条に規定する船員が行う事業
八 柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二条に規定する柔道整復師が行う事業
九 高年齢者の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)第十条の二第二項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第一号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第二号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業であつて、厚生労働省労働基準局長が定めるもの
十 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)に基づくあん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師が行う事業
十一 歯科技工士法(昭和三十年法律第百六十八号)第二条に規定する歯科技工士が行う事業
特定作業従事者とは
特定作業従事者にあたるのは、次に該当する事業主です。
(1)特定農作業従事者
(2)指定農業機械作業従事者
(3)国または地方公共団体が実施する訓練従事者
(4)家内労働者およびその補助者
(5)労働組合等の一人専従役員『委員長等の代表者』
(6)介護作業従事者及び家事支援従事者
(7)芸能関係作業従事者
(8)アニメーション制作作業従事者
(9)ITフリーランス
引用元:特別加入制度のしおり
ご自身が一人親方に該当しているか不明な場合や、一人親方に該当していない場合も、特別加入制度を利用できる可能性があります。加入できるかどうか不明な場合は、労働保険事務組合に確認しましょう。
一人親方(建設業例)の労災保険で補償される範囲
主な補償の対象
一人親方(建設業例)として、労災保険の補償を受けられる対象は次のとおりです。
補償の対象 | 説明・具体例 |
請負契約に直接必要な行為を行う場合 | 見積もり、下見、通勤など |
請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合 | 工事に必要な資材などを買いに行くなど |
請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合 | – |
請負工事に関する機械や製品を運搬する作業 | 請負工事に使う機械や製品を、自宅や資材店などから運搬している最中 |
突発事故(台風、火災など)により予定外の緊急の出動を行う場合 | 自然災害から建物を守るために出勤したとき |
精神障害も労災保険の対象になる
一人親方に限らず、業務に起因する精神障害になった場合は労災給付の申請対象となります。
労災が原因の精神障害での労災補償の申請件数は、2000年と2015年を比較すると7~8倍程度まで増えています。一人親方に限らず、現代人であれば誰でも精神障害を抱える恐れがあるので、業務が原因で精神障害になったら労災申請ができることを頭の片隅に入れておくといいかもしれません。
新型コロナウイルス
業務上で新型コロナウイルスになった場合も労災保険の給付を受けられる場合があります。医師の指示によって4日以上休む場合は、休業補償の対象になります。
労災保険特別加入時に健康診断が必要なケース
以下の業務に一定期間携わっていた場合は、労災保険に加入する際に健康診断が必要です。
業務内容 | 働いた通算期間 | 必要な健康診断 |
粉じん作業を行う業務 | 3年 | じん肺健康診断 |
振動工具使用の業務 | 1年 | 振動障害健康診断 |
鉛業務 | 6ヶ月 | 鉛中毒健康診断 |
有機溶剤業務 | 6ヶ月 | 有機溶剤中毒健康診断 |
労働局が指定する機関で、期限までに健康診断を受けなければなりません。費用は無料です。健康診断をした際に、すでに疾病にかかっていて、療養に専念しなければいけない場合などは特別加入制度を利用できないことがあります。
一人親方が労災保険に特別加入する6つのメリット
- 現場に入れる(建設事業)
- 国の生活保障制度なので、割安な保険料で手厚い補償
- 傷病を治すための費用は全て支給される
- 休業している間も収入が途切れない
- 後遺障害に対して一生涯の給付があるので、収入が減っても生活できる
- 保険料は経費にできる
現場に入れる(建設事業)
業種や職種によっては、労災保険に加入していることが仕事を発注する条件になっていることもあります。このような仕事に携わる方は、特別加入制度を利用することで、より多くの現場に入れるようになります。
国の生活保障制度なので、割安な保険料で手厚い補償
疾病や怪我に備えるためには、民間の生命保険や医療保険を選ぶ選択肢もあり得ます。しかし、労災保険は国の生活保障なので、補償内容の割に保険料が割安です。例えば、民間の医療保険の場合、病気になるとあらかじめ決められた一定の金額が治療費や手術費として支給されます。労災保険のように、治療に必要な金額の全てが補償されるとは限りません。
労災のリスクに備えることが主な目的であれば、まずは労災保険を検討し、足りない分を民間の保険で賄うようにすると、いざという時に十分な給付を期待できるでしょう。
傷病を治すための費用は全て支給される
傷病を治すための治療費に関して、お金の心配をする必要はありません。
限度額や期間の制限なく、傷病を治すために必要な費用は全て支給されます(手術費や治療費、入院費、看護料等)。
休業している間も収入が途切れない
医師の指示で4日以上仕事を休んだ場合、1日当たりの収入の8割にあたる休業給付を、休んだ日数分支給されます。
特に最近であれば、新型コロナウイルスに感染すると5日程度休むことになります。
有給休暇がない一人親方にとっては必須の給付ではないでしょうか。
後遺障害に対して一生涯の給付があるので、収入が減っても生活できる
後遺症が残ると、働けなくなることもあり得ますし、働けたとしてもこれまでの水準の収入を維持できなくなる恐れがあります。
労災保険には障害給付があるので、後遺障害による収入の減少を補填できます。
治療後一定期間かかっても障害等級1級~7級にあたる後遺障害が残った場合は、亡くなるまで一生涯の給付が支給されます。
保険料は経費にできる
労災保険の保険料は経費にできます。
一人親方が労災保険に特別加入した際の保険料
労災保険に加入すると、保険料がどの程度かかるのかご説明します。
補償と保険料の算出の基になる給付基礎日額は選択できる
補償と保険料算出の基になる給付基礎日額はご自身で設定できます。ご自身の収入に見合った日額を選択しましょう。
以下、労災保険の保険料の算出方法をご紹介します。
労災保険の保険料
労災保険の保険料や補償の金額を算出するためには、給付基礎日額という用語の意味を把握しておく必要があります。
給付基礎日額とは、1日あたりの平均収入に相当する金額のことです。給付基礎日額に応じて、保険料や給付の金額が変わってくるため、労災保険に加入する際はどの給付基礎日額を選ぶのかが重要です。
以下、給付基礎日額別の保険料(建設業・個人タクシー事業例)をご紹介します。
年間保険料は次の式で計算します(細かい計算方法は把握しなくても大丈夫です。)。
年間保険料=給付基礎日額×365×保険料率
保険料率は、業種ごとに決まっています。
次のセクションで、労災保険の給付内容と金額をご紹介します。給付基礎日額によって給付の金額が変わるので、ご自身の収入に値する給付基礎日額を念頭にご覧いただくと、具体的な給付金額をイメージしやすいかと思います。
一人親方が労災保険に特別加入した際の給付内容
労災保険の給付内容をご紹介します。どんなときにいくらくらいもらえるのか、給付基礎日額が1万円だったと仮定してご紹介します。
参考:特別加入制度のしおり<一人親方その他の事業者用>|厚生労働省
療養給付
どんなときにもらえる? | 業務・通勤による傷病を、病院等で 治療する場合 |
給付内容 | 治療が全て無料 |
特別支援金 | なし |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | 給付金日額に関係なく全額支給 |
休業給付
どんなときにもらえる? | 業務・通勤時の傷病の療養で、医師の指示を受けて4日以上休んだ場合 |
給付内容 | 休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の60%にあたる額を支給 |
特別支援金 | 休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の20%にあたる額を支給 |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | 20日間休業した場合 ①休業(補償)等給付 1万円×60%×(20日-3日) =10万2千円 ②休業特別支給金 1万円×20%×(20日-3日) =3万4千円 |
障害給付
障害等年金
どんなときにもらえる? | 業務・通勤での傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った |
給付内容 | (亡くなるまで一生涯支給されます) 第1級は給付基礎日額の313日分 第7級は給付基礎日額の131日分 |
特別支援金 | 第1級342万円(一時金) |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | 第1級の場合 ①障害(補償)等年金 1万円×313日=313万円 ②障害特別支給金(一時金) 342万円 |
障害等一時金
どんなときにもらえる? | 業務・通勤での傷病が治った後に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った |
給付内容 | (亡くなるまで一生涯支給されます) 第8級は給付基礎日額の503日分 第14級は給付基礎日額の56日分 |
特別支援金 | 第14級8万円(一時金) |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | 第14級の場合 ① 障害(補償)等年金 1万円×56日=56万円 ②障害特別支給金(一時金) 8万円 |
傷病年金
どんなときにもらえる? | 業務・通勤での傷病の療養開始後1年6 か月を経過した日以降、以下の2点に該当する場合 ①傷病が治っていない ②傷病による障害の程度が 傷病等級に該当する |
給付内容 | (上の①②両方に該当する間ずっと支給されます) 第1級は給付基礎日額の313日分 第2級は給付基礎日額の277日分 第3級は給付基礎日額の245日分 |
特別支援金 | (一時金) 第1級は114万円 第2級は107万円 第3級は100万円 |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | 第1級の場合 ① 傷病等年金 1万円×313日=313万円 ② 傷病特別支給金(一時金) 114万円 |
遺族給付
遺族等年金
どんなときにもらえる? | 業務・通勤で被保険者が死亡した場合 (年金額は遺族の人数に応じて異なる)
いつまで支給される? ・配偶者:死亡または再婚するまで支給 ・孫、兄弟姉妹:18歳に達する日以後の最初の3月31日が終了するまで支給 |
給付内容 | (遺族1人の場合) 給付基礎日額の153日分または175日分 (遺族2人の場合) 給付基礎日額の201日分 (遺族3人の場合) 給付基礎日額の223日分 (遺族4人以上の場合) 給付基礎日額の245日分 |
特別支援金 | 遺族の人数にかかわらず一時金として300万円を支給 |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | 遺族が4人の場合 ①遺族(補償)等年金 1万円×245日=245万円 ②遺族特別支給金(一時金) 300万円 |
遺族等一時金
どんなときにもらえる? | ①遺族(補償)等年金の受給資格をもつ遺族がいない場合 ②遺族(補償)等年金を受けている方が失権し、かつ、他に遺族(補償)等年金の受給資格をもつ方がいない場合で、すでに支給された年金の合 計額が給付基礎日額の1000日分に満たない場合 |
給付内容 | ①の場合 給付基礎日額の1000日分 ②の場合 給付基礎日額の1000日分からすでに支給した年金の合計額を差し引いた額 |
特別支援金 | 遺族の人数にかかわらず一時金として300万円を支給 |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | 遺族が4人の場合 ①遺族(補償)等一時金 1万円×1000日=1000万円 ②遺族特別支給金(一時金) 300万円 |
葬祭給付
どんなときにもらえる? | 業務・通勤により死亡した方の葬祭を行 う場合 |
給付内容 | 以下の高い方 ・31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額 ・給付基礎日額の60日分のいずれか高い方 |
特別支援金 | なし |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | 31万5千円+(1万円×30日) =61万5千円 |
介護給付
どんなときにもらえる? | 業務・通勤での労災で、障害等年金また は傷病等年金を受給している方のうち、介護を受けている方 |
給付内容 | 介護費用を支給(上限と下限あり) |
特別支援金 | なし |
給付金額例 (給付基礎日額1万円の場合) | ・常時介護を要する者 最高限度額 171,650円 最低保障額 75,290円 ・随時介護を要する者 最高限度額 85,780円 最低保障額 37,600円 |
一人親方が労災保険に特別加入する方法・手続きの流れ
労災保険に特別加入する方法は、次の2つです。
- 特別加入団体をつくって申請する
- 既存の特別加入団体を通じて加入する
特別加入団体を自分で作ると会費や手数料などを自分で設定できるものの、手続きが煩雑になるなどの労力がかかります。
こだわりがなければ既存の特別加入団体に加入した方が、本業以外の手続きが発生しないので楽かつ手軽です。
特別加入団体をつくって申請する
特別加入申請書を、所轄の労働基準監督署長を経由し、所轄の都道府県労働局長に提出します。
特別加入申請書には、加入希望者の業種や業務内容、給付日額などを記入します。
特別加入団体を作る際は以下の要件を満たす必要があります。
① 一人親方等の相当数を構成員とする単一団体であること。
② その団体が法人であるかどうかは問いませんが、構成員の範囲、構成員である地位の得喪の手続きなどが明確であること。その他団体の組織、運営方法などが整備されていること。
③ その団体の定款などに規定された事業内容からみて労働保険事務の処理が可能であること。
④ その団体の事務体制、 財務内容などからみて労働保険事務を確実に処理する能力があると認められること。
⑤ その団体の地区が、団体の主たる事務所の所在地を中心として、別表に定める区域に相 当する区域を超えないものであること。
既存の特別加入団体を通じて加入する
既存の特別加入団体に加入する流れは次のとおりです。
- 特別加入団体を選ぶ
- 特別加入団体に問い合わせる
- 特別加入団体から説明を受け、問題なければ費用を支払う
- 特別加入団体の担当者が労働局に加入申請
一人親方が特別加入団体を選ぶ際に比較するポイント
特別加入団体を比較する際に、何に注目して選べばいいのかをご説明します。
どの特別加入団体も保険料・補償金額は同じ
大前提として、どの特別加入団体を選んでも保険料・補償金額は同じです。
これは、特別加入団体を通じて国の保険である労災保険に加入するためです。
保険料・補償金額以外のポイントで団体を比較することになります。
厚生労働省や労働局の承認を受けている
特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行うこととなっています。
運営歴の長さ
団体の信頼性を確かめるポイントの一つです。
入会費
入会するときに発生する費用です。相場は0円~2万円程度です。
年会費・月会費
年会費または月会費の相場は、1年あたり3600円~3万円程度です。この費用は特別加入団体に対して支払う金額なので、高くても安くても労災保険の補償内容に関係はありません。労災発生時のサポートなど、労災保険に付随するサービスを提供している団体ほど会費が高くなることがあります。会費を何に使っているのか、お金を払ってでも団体のサポートを利用したいか、というポイントをご確認ください。
各種手数料
手数料の有無や名目、金額は団体によって異なります。
入会費や年会費以外に費用がかかる場合は、何に費用がかかるのかを事前に確認しましょう。
よくある手数料は例えば…
- 更新手続きの費用
- 退会時の費用
- 労災発生時のサポート費用
- 組合員証再発行時の費用
支払い方法
団体によって支払い方法が異なるので、ご自身にとってご都合の良い方法で支払いができるか確認しましょう。
主な支払い方法は次の3つです。
- 銀行振込
- コンビニ支払い
- クレジットカード
分割払いの有無
法律上3回までは分割払いが可能です。分割払いを希望する方は、分割払いの可否を確認しましょう。
ただ、分割払いはおすすめしません。保険料の納付を忘れていると、無保険状態で労災被害に遭い補償を得られないリスクがあるためです。一括払いであらかじめ保険料を納めていれば、無保険状態で労災にあって給付を得られないようなことはありません。
独自の補償の内容
労災保険の補償とは別に、団体特有の補償や特約を提供していることがあります。
労災発生時のサポートの有無
いざ労災が発生したときに、どのようなサポートをしてくれるのかを確認しましょう。いざ労災が発生したときに、電話をすればこの後どうするべきか案内をしてくれたり、労災発生後の対応をする上でわからないことがあれば気軽に相談できたりする方が安心です。
まとめ
雇用される方々と同様に業務に従事される方は業務災害や通勤災害に遭う可能性があるにも関わらず、労働時間を無保険状態で過ごすことになります。建設事業の場合は労災保険に入っていないとそもそも仕事を受注できないこともあるので、他の業種の方よりも特別加入制度で労災保険に加入する必要性が高いでしょう。
労災保険を選ぶメリットは、民間の保険と比べると補償内容の割に保険料が割安である点です。傷病を治すための費用が全額支給されたり、重度の後遺障害に対して一生涯の年金が支給されたりと安心感があります。
特別加入をする際は、特別加入団体を作って加入する方法と、既存の団体を経由して加入する方法があります。手続きの手間を考えると、既存の団体に加入する方が手軽です。
既存の団体を比較する場合、保険料や補償内容はどこも同じです。金銭面については、入会費・年会費・手数料を比較しましょう。労働局の承認を受けていて、運営歴の長い組織を選ぶと安心感があります。