この記事では、労災保険の加入義務をご説明したうえで、加入義務があるのに未加入のままでいるとどんなリスクがあるのか、立場別にご説明します。
労災保険に加入していない場合のリスクは次のとおりです。
立場 | リスク |
会社 | ・未払い保険料を徴収される(過去最大2年間まで遡って請求される) ・未払い保険料の10%の追徴金を課せられる ・給付金の40%または100%徴収 ・6月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
法人・個人事業主、役員 (働く主体としての) | 特別加入制度を使わないと、事業主・役員は労災保険の補償を受けられない |
被雇用者 (正社員、パート、派遣など) | リスクなし。労災保険への加入義務があるのは企業 労災にあったときに自分で申請をすれば、労災に加入している企業と同じように給付金の対象になる |
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前提:労災保険の加入義務がある会社とは
労災保険のへ加入義務がなければ、未加入でも罰則や保険料徴収の対象にはなりません。
ご自身の会社に労災保険への加入義務があるとわかった場合は、以下でご説明する未加入のリスクについてもご確認ください。
- 人を1人以上雇用している会社は労災保険への加入義務がある
- 人を雇用しても労災保険への加入義務がない会社とは
人を1人以上雇用している会社は労災保険への加入義務がある
雇用形態にかかわらず、1人以上雇用している法人・個人事業主は労災保険への加入義務があります。
1 週間の所定労働時間が 20 時間以上、かつ 31 日以上の雇用見込みがあれば、雇用保険にも加入しなければなりません。
人を雇用しても労災保険への加入義務がない会社とは
以下の事業所は人を雇っていても労災保険への加入義務がありません。
- 暫定任意適用事業
- 適用除外事業
暫定任意適用事業
農林水産の事業の場合は、労災保険への加入が任意になります(暫定任意適用事業)。労働者の過半数の意思によって、労災保険の適用を受けるかどうかを決められます。
暫定任意適用事業にあたるのは、具体的に次の3つです。
1.労働者数5人未満の個人経営の農業であって、特定の危険又は有害な作業を主として行う事業以外のもの
2.労働者を常時は使用することなく、かつ、年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の林業
3.労働者数5人未満の個人経営の畜産、養蚕又は水産(総トン数5トン未満の漁船による事業等)の事業
引用元: 労働保険関係の成立と対象者|厚生労働省
適用除外事業
国の直営事業と官公署の事業は労災保険の適用を受けません(労働者災害補償保険法3条2項)。公務員は、公務員災害補償法の適用になるためです。
労災保険加入していない(未加入)会社のリスク
以下、労災保険に加入しないことによって会社が被るリスクをご説明します。
- 未払い保険料を徴収される(過去最大2年間まで遡って請求される)
- 未払い保険料の10%の追徴金を課せられる
- 給付金の40%または100%徴収
- 6月以下の懲役または30万円以下の罰金
未払い保険料を徴収される(過去最大2年間まで遡って請求される)
労災保険の加入義務があるのに手続きをしていなかった場合、最大2年間遡って保険料を徴収されます。
未払い保険料の10%の追徴金を課せられる
未払い保険料の総額に10%をかけた金額が追徴金として課せられます。
給付金の40%または100%徴収
労災被害者に支給する給付金を企業が支払わなければいけなくなることがあります。
給付金の40%を徴収されるケース(重大な過失)
労災保険への加入義務が生じてから1年以上経過、かつ行政機関からの指導を受けていない状態で業務労災・通勤労災が発生した場合は、給付金額の40%を徴収されます。
給付金の100%を徴収されるケース(故意)
行政機関から労災保険に加入するように指導を受けたのに、手続きをせずに業務労災・通勤労災が発生した場合は、給付金額の100%を徴収されます。
6月以下の懲役または30万円以下の罰金
行政機関から労災保険に加入するよう指導を受けても手続きをしなかった場合は、6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される恐れがあります(労働者災害補償保険法51条)。
労災保険 加入していない(未加入) 法人・個人事業主のリスク
企業として労災保険に加入していた場合でも、特別加入制度を利用しないと、事業主や役員は労災保険の保障を受けられません。
労災保険は被雇用者を通勤労災・業務労災から守るための制度なので、事業主や役員は原則労災保険の対象にならないためです。
通勤労災・業務労災での疾病や怪我には健康保険は使えません。労災保険に加入しないまま労災に遭ってしまうと、民間の保険に加入していなければ、保障を全く受けられません。
当サイトにも「労災にあったが認定を受けられず、給付金を得られなかった、なんとかならないか」という内容の相談が、度々事業主や役員の方から寄せられます。
「従業員と同じような条件で働いていたので労災保険の対象になるのでは?」と思うかもしれませんが、事業主の方の場合は特別加入制度を利用していなければ、労災保険の給付を諦めざるを得ません。
なかなか自分も労災に遭うだろうと考えることはないかもしれませんが、被害に巻き込まれてから慌てても手遅れです。
事業主や役員など、雇用主側の方は特別加入制度を利用して労災保険に加入しましょう。
労災保険加入していない場合の従業員(正社員・パートなど)へのリスク
お勤め先の企業が労災保険に加入していなくても、従業員へのリスクはありません。なぜリスクがないのかについて、以下3点をご説明します。
- 労災保険未加入でも、従業員に不利益やペナルティはない
- 労災保険未加入で労災被害に遭った場合、手続きをすれば給付金を受け取れる
- 自社が労災保険に加入しているか調べる方法
会社が労災保険未加入でも、従業員に不利益はない
大前提として、企業が労災保険に入っていなかったとしても、従業員への実害はありません。
労災保険への加入義務が課されるのは企業なので、従業員には何の責任も発生しません。
労災保険未加入で労災被害に遭った場合、手続きをすれば給付金を受け取れる
お勤め先の企業が労災保険に加入していなかった場合、労災被害にあった労働者自らが申請手続きをする必要があります。労災にあった際は、労働基準監督署に相談をしましょう。
企業が労災保険に加入していなかったとしても、労災保険に加入している企業の労働者と同じように、労災保険の保障を受けられます。給付金の支給を受けるためには、労基署の調査を経て、発生した事故が通勤災害・業務災害にあたると認定される必要があります。
自社が労災保険に加入しているか調べる方法
企業がある地域を管轄する労働局または労基署に問い合わせをすると、自社が労災保険に加入しているかどうかがわかります。
問い合わせ先は以下よりお探しください。
労働局に相談をすることで、お勤め先の企業に労災保険への加入を促すこともできます。とはいえ、企業が労災保険に加入していなくても労働者に実害はないので、雇用主との関係性を鑑みて対応の仕方をご検討いただくのがよさそうです。
まとめ|労災保険への加入義務がある場合は、加入手続きを済ませましょう
労災未加入によるリスクは…
- 企業(事業主・役員など):未払い保険料徴収、未払い保険料10%の追徴金、給付金の40%または100%徴収、刑事罰
- 労働者としての事業主・役員:特別加入制度を利用しないと労災保険の保障を受けられない
- 従業員:リスクなし
加入義務がある企業が未加入のままだと、最終的にこれまでの保険料を徴収される上、保険料以上の金額を支払わなければいけなくなります。
以下の記事で労災保険への加入方法をご案内しているので、まだ対応されていない方はあわせてご参考ください。