会社を設立したら、5日以内に社会保険の手続きをしなければいけません。人を雇用している、またはする場合は労働保険の手続きも必要です。
この記事では、社会保険や労働保険に加入する義務があるのはどんな人なのか、をお伝えした上で、提出しなければいけない書類の入手方法や記入例、提出先をご紹介します。
スムーズにスタートを切るためにも、早めに手続きを終わらせてしまいましょう。
会社設立時(法人化)に社会保険・労働保険に加入する義務はある?
社会保険(厚生年金保険・労働保険)と労働保険(労災保険・雇用保険)に加入する義務があるのはどんな人なのかをご説明します。
加入義務があった場合は、具体的な手続きを進めていきましょう。
種類 | 加入義務 | |
社会保険 | 健康保険 | ① すべての法人 ② 5人以上従業員がいる個人事業主 |
厚生年金保険 | ||
労働保険 | 雇用保険 | 1人でも雇用する場合は加入必須 1週間の労働時間が20時間以上でかつ31日以上継続して雇用する見込みがある従業員が対象 |
労災保険 | 全従業員 |
法人と5人以上従業員がいる個人事業主は社会保険の加入義務がある
①すべての法人と、②5人以上従業員がいる個人事業主は社会保険に加入する義務があります。加入対象者は次のとおりです。
- 正社員、法人の代表者、役員
- 以下の5つを全て満たす方
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 勤務期間が1年以上見込まれること
- 月額賃金が8.8万円以上
- 学生以外
- 従業員501人以上の企業に勤務
- パートタイマー・アルバイト等であって、週30時間未満であっても、同じ会社の正社員の1週間の所定労働の4分の3以上働いている方
参考:社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入手続はお済みですか?|厚生労働省
なお、学校法人の場合は私立学校職員共済制度に加入することになります。
人を雇用する場合は労働保険に加入する義務がある
1人でも雇用する場合は労働保険(労災保険・雇用保険)に加入しなければいけません。
加入対象の従業員は次のとおりです。
- 労災保険:全従業員
- 雇用保険:1週間の労働時間が20時間以上でかつ31日以上継続して雇用する見込みがある方
捕捉:経営者は労災保険に入れない。怪我のリスクがある人はどうすればいいのか?
労災保険は従業員を守るための制度なので、本来経営者は労災に入れません。労災にあって後遺症が残れば、今の生産性や収入を維持できなくなるかもしれません。
労災保険に入っていれば、労災で働けなくなった場合に一生涯の給付を得られます。
特別加入制度を利用すれば、経営者であっても労災に加入できます。
仕事で怪我をする可能性がある方は、以下の記事もあわせてご参考ください。
社会保険・労働保険に加入しないとどうなる?
社会保険や労働保険に加入しない場合、加入要請が届きます。これを無視すると、最終的に立入検査をされたうえで保険料の納付を求められます。
以下、社会保険や労働保険に加入しないとどうなるのかご説明します。
加入要請をされる
社会保険に加入しないと、年金事務所から電話や郵送で加入要請が届きます。この段階で加入をすれば、加入後の保険料を支払うだけで大丈夫です。
警告文章が届く
加入要請に応じない場合、立入検査の警告文章が届きます。
立入検査をされる
警告文章を無視すると、立入検査をされ、強制的に社会保険に加入させられます。
立入検査をされてしまうと、過去2年分の保険料の納付を求められます。遅くても、加入要請や警告文章が届いた段階で加入するようにしましょう。
刑事罰を受ける可能性がある
以下のいずれかに当てはまった場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される恐れがあります。
一 第四十八条(第百六十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 第四十九条第二項(第五十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、通知をしないとき。
三 第百六十一条第二項又は第百六十九条第七項の規定に違反して、督促状に指定する期限までに保険料を納付しないとき。
四 第百六十九条第二項の規定に違反して、保険料を納付せず、又は第百七十一条第一項の規定に違反して、帳簿を備え付けず、若しくは同項若しくは同条第二項の規定に違反して、報告せず、若しくは虚偽の報告をしたとき。
五 第百九十八条第一項の規定による文書その他の物件の提出若しくは提示をせず、又は同項の規定による当該職員(第二百四条の五第二項において読み替えて適用される第百九十八条第一項に規定する機構の職員及び第二百四条の八第二項において読み替えて適用される第百九十八条第一項に規定する協会の職員を含む。次条において同じ。)の質問に対して、答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは第百九十八条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
引用元:健康保険法208条
会社設立時(法人化) に社会保険に加入する際の必要書類|入手方法・記入例・提出先
日本年金機構の健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧より、会社を設立後、社会保険に加入するために必要な書類をお伝えします。必要書類、記入例、提出先、提出方法、提出期限についてもご説明します。
【必須】健康保険・厚生年金保険新規適用届
健康保険・厚生年金保険に初めて加入する際に必要な届出です。
入手方法・入手先 | 新規適用届|日本年金機構 |
記入例 | 記入例|日本年金機構 |
必要書類 | 法人登記簿謄本 法人番号指定通知書のコピー 個人事業主のみ:事業主の世帯全員の住民票 個人事業主のみ:代表者の公租公課の領収書1年分 |
提出先 | 会社がある地域を所轄する年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 会社設立から5日以内 |
【必須】健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
従業員を採用した際に、従業員を健康保険・厚生年金保険に加入させる際に必要な手続きです。
入手方法・入手先 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届|日本年金機構 |
記入例 | 記入例|日本年金機構 |
必要書類 | 原則不要
60 歳以上の方が、退職後 1 日の間もなく再雇用された場合①と②両方又は③ ① 就業規則、退職辞令の写し(退職日の確認ができるものに限る) ② 雇用契約書の写し(継続して再雇用されたことが分かるものに限る) ③ 「退職日」及び「再雇用された日」に関する事業主の証明書 |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 資格取得日から5日以内 |
【任意】健康保険被扶養者(異動)届
被保険者の家族を被扶養者にする際に必要な手続きです。
入手方法・入手先 | 健康保険被扶養者(異動)届|日本年金機構 |
記入例 | 被扶養者になる場合の記入例|日本年金機構 |
必要書類 | 健康保険被扶養者(異動)届 |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 事実発生から5日以内 |
【任意】健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書・同意書
社会保険任意適用の事業所(5人未満の個人事業所またはサービス業の一部・農業・漁業等の個人事業所)の方が社会保険に加入する際の手続きです。
入手方法・入手先 | 任意適用申請書|日本年金機構 |
記入例 | 記入例|日本年金機構 |
必要書類 | (1)任意適用申請書 (2)任意適用同意書(従業員の2分の1以上の同意を得たことを証する書類) (3)事業主世帯全員の住民票(コピー不可) (4)公租公課の領収書(原則 1 年分)(コピー可) |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | – |
【任意】健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付申出書
社会保険料を口座振替にしたいときに提出する書類です。申込書は2部(金融機関用、年金事務所用)あります。
入手方法・入手先 | 健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付申出書 |
記入例 | 記入例(3ページ目) |
必要書類 | なし |
提出先 | 2部とも金融機関に提出 辺戻された申込書の1枚目を年金事務所または事務センターに提出 |
提出方法 | 窓口持参、郵送 |
提出期限 | – |
会社設立時(法人化) に労働保険に加入する際の必要書類|入手方法・提出先
人を雇用した場合は、労働保険の手続きもしましょう。
自社が一元適用事業なのか、二元適用事業なのかによって、書類の提出先が変わります。
ご自身の事業がどちらに当てはまるかについては、以下をご参考ください。
説明 | 具体例 | |
一元適用事業 | 労災保険・雇用保険の申請と納付を一元的に扱う事業 | 二元適用事業(下)以外 |
二元適用事業 | 労災保険・雇用保険の申請と納付を別々に扱う事業 | ①都道府県及び市区町村が行う事業 ②①に準ずるものの事業 ③港湾労働法の適用される港湾の運送事業 ④農林・水産の事業 ⑤建設の事業 |
書類を提出する流れと提出先の違い
一元適用事業の場合
順序 | 提出書類 | 提出先 |
1 | 保険関係成立届 | 労働基準監督署 |
2(1と同時も可) | 概算保険料申告書 | 以下のいずれか ・日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可) |
3 | 雇用保険適用事務所設置届 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
4 | 雇用保険被保険者資格取得届 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
二元適用事業の場合
順序 | 提出書類 | 提出先 |
1 | 保険関係成立届 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
2(1と同時も可) | 概算保険料申告書 | 以下のいずれか ・日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可) |
3(1と同時も可) | 雇用保険適用事務所設置届 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
4(1と同時も可) | 雇用保険被保険者資格取得届 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
【必須】保険関係成立届
一元適用事業の場合(保険関係成立届)
入手方法・入手先 | 労働基準監督署もしくはハローワークの窓口でもらうか郵送してもらう |
記入例 | 記入例|厚生労働省 |
必要書類 | 1.事業所が実在することを証明するための書類 (法人は法人登記簿謄本のコピー、個人事業主は代表者の住民票) 2.労働保険概算保険料申告書 |
提出先 | 所轄の労働基準監督署 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 保険関係が成立した日から10日以内 |
二元適用事業の場合(保険関係成立届)
入手方法・入手先 | 労働基準監督署もしくはハローワークの窓口でもらうか郵送してもらう |
記入例 | 記入例|厚生労働省 |
必要書類 | 1.事業所が実在することを証明するための書類 (法人は法人登記簿謄本のコピー、個人事業主は代表者の住民票) 2.労働保険概算保険料申告書 |
提出先 | 所轄の労働基準監督署 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 保険関係が成立した日から10日以内 |
【必須】概算保険料申告書
一元適用事業の場合(概算保険料申告書)
入手方法・入手先 | 労働基準監督署もしくはハローワークの窓口でもらうか郵送してもらう |
記入例 | 記入例|厚生労働省 |
必要書類 | – |
提出先 | 以下のいずれか ・日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可) |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 被保険者を雇用した翌日から50日以内 |
二元適用事業の場合(概算保険料申告書)
入手方法・入手先 | 労働基準監督署もしくはハローワークの窓口でもらうか郵送してもらう |
記入例 | 記入例|厚生労働省 |
必要書類 | – |
提出先 | ・所轄の都道府県労働局 ・日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可) |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 被保険者を雇用した翌日から50日以内 |
【必須】雇用保険適用事務所設置届
初めて人を雇ったときに、事業所が雇用保険の適用を受けるための手続きです。
入手方法・入手先 | 雇用保険適用事務所設置届|内閣府 |
記入例 | 記入例|厚生労働省 |
必要書類 | 1.雇用保険被保険者資格取得届 2.労働保険関係成立届の事業主控え(労働基準監督署が受理したもの) 3.労働者の雇用・賃金の支払状況等を証明できる書類 (労働者名簿、賃金台帳、出勤簿又はタイムカード、雇用契約書 のいずれか) 4.事業の実態がわかる書類 (登記事項証明書、事業許可証、工事契約書、不動産契約書、源泉徴収簿、他の社会保険の適用関係書類) |
提出先 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 加入対象の従業員を雇用してから10日以内 |
【必須】雇用保険被保険者資格取得届
雇用した人を雇用保険に加入させる際に必要な手続きです。
入手方法・入手先 | ハローワーク インターネットサービスより印刷 |
記入例 | 記入例|厚生労働省 |
必要書類 | 原則不要 |
提出先 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
提出方法 | 原則不要 期限を過ぎた場合は、雇用したことを証明する以下のいずれかの書類 ・賃金台帳 ・労働者名簿 ・出勤簿 など |
提出期限 | 被保険者にする従業員を雇用した月の翌月10日まで |
社会保険・労働保険手続きが面倒な方へ
上記でご説明したとおり、会社を設立したり、人を雇用したりすると社会保険や労働保険に関する手続きが必要です。人が退社するときや、年に1度保険料の計算をしなおすときなど、今後も度々社会保険や労働保険の手続きをしなければなりません。
従業員の数が増えてきたり、本業が忙しかったりする経営者の方であれば、保険の手続きをする時間がなかなか確保しにくいはずです。
そんな方は、社労士に社会保険・労働保険手続きを外注することもご検討ください。
面倒な手続きは社労士に外注しましょう
社労士が対応する場合、手続き忘れやミスの心配はありません。人を雇用するよりも安く対応できるので、バックオフィスのために人を採用するよりも先に検討された方が、出費が少なくて済みます。
また、給与計算のような、社会保険に付随する業務も任せられます。基礎知識を勉強したり、法令改正の内容を常に把握したりしないと計算ミスが起こります。しかも、いくら頑張ったところで売り上げや利益には直結しません。
であれば、人を雇用するよりも安くて専門知識を持っている社労士に外注してしまった方が、売上に直結する業務に時間やお金や人を集中できるのでいいのではないでしょうか。
社会保険・労働保険・給与計算を1年無料で依頼できる社労士事務所
社労士に外注するのは初めてなので、仕事の進め方や費用など不明点が多い
という方は社労士法人TSC(CACグループ)の無料トライアルを試してみてはいかがでしょうか。
社会保険・労働保険の手続きに加えて、希望する場合は以下の業務も1年無料で依頼できます。
【1年間無料サポート対象業務】
- 顧問契約
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- 給与計算事務
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バックオフィス業務を丸投げし本業集中できる快適さをぜひご体験ください。
CACグループは1965年創業で55000件以上の顧客契約数があります。60年以上企業をサポートしてきた実績と経験があるので、安心して仕事を依頼できます。
詳細が気になった方は、以下をご確認ください。
社労士の一括見積もりには当サイトをご活用ください
社会保険手続きを外注する社労士を選びたい方は、当サイトをご利用ください。
依頼をするまでは完全無料で社労士の一括見積もりができます。
以下のフォームより必要事項を記入し、お申し込みください。
会社設立時(法人化) の社会保険についてよくある疑問
会社を設立する際によくある疑問をご紹介します。
会社設立後、社会保険に入るには?
社会保険に入るには、会社設立後5日以内に以下の手続きをする必要があります。
- 会社が社会保険の適用を受けるための手続き(新規適用届)
- 被保険者になるための手続き(被保険者資格取得届、被扶養者(異動)届)
会社設立後、どこで社会保険に加入するのか?
会社がある地域を管轄する年金事務所(近くの年金事務所を探す)に、郵送、窓口持参、電子申請のいずれかの方法で提出をします。
会社設立後、社会保険はいつから加入するべき?
会社を設立してから5日以内に申請をしましょう。
会社設立から5日過ぎた場合の社会保険手続きはどうすればいい?
会社設立から5日を過ぎていても申請に対応してもらえます。5日を過ぎた段階であれば行政処分や刑事罰などはありません。社会保険に加入しないままでいると、加入要請や警告、立入検査をされるので、早めに申請をしましょう。
会社設立、社会保険はいつから支払い?
社会保険の支払いは、翌月の末日からです。4月に社会保険に加入したとしたら、最初の支払いは5月末日になります。
まとめ
会社を設立する際や、人を初めて雇用した際にやらなければいけない社会保険・労働保険の手続きをご紹介しました。これらの手続きには期限があるので、なるべく早めに対応しましょう。
本業が忙しくてなかなか時間を取れない、という方は、社労士への外注もお考えください。