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外国人雇用時の社会保険手続きと必要書類一覧|不法就労助長罪に要注意

この記事では、外国人労働者を雇用した際に発生する社会保険手続きの進め方をご説明します。

社会保険への加入条件は日本の労働者と同じです。手続きの進め方についても、添付書類や別の手続きが増える程度なのでさほど難しいことはありません。

ただし、在留資格がないまま雇用をしてしまうと、不法就労助長罪(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらを併科)に問われる恐れがあるので、この点は特に注意が必要です。

雇用契約を結んだ後でなければ行えない在留資格変更許可の申請は、100%承認されるわけではありません。このため、承認されなかった場合の取り扱いを雇用契約書に明記することが重要です。

社会保険への加入手続きをするのは、在留資格変更許可の申請が承認されてからです。

以下、外国人労働者を雇用した際の社会保険手続きと、外国人労働者を雇用した場合に手続き上注意するべきポイントを具体的にご説明します。

外国人労働者を社会保険に加入させる前の手続き|不法就労助長や社会保険への2重加入にご注意を!

外国人労働者を雇用する際に注意しなければいけない点は次のとおりです。

  1. 在留資格(就労ビザ)がない外国人を雇用すると、不法就労助長罪に問われる
  2. 雇用契約をしないと就労ビザの申請ができない(承認まで1ヶ月以上かかることも)
  3. 就労ビザの申請は100%承認されるわけではない
  4. 就労ビザの承認がされない場合は、雇用契約が効力を発しない旨を雇用契約書に明示しないと、採用を取り消すのが大変になる恐れがある
  5. 4の場合でも雇用し続けると不法就労助長罪に問われる恐れがある

以下、社会保険への加入手続きを行う前に、必ず対応するべき手続きや、認識しておくべき点をご説明します。

在留資格(就労ビザ)がなければ雇用できない

在留資格を得てから社会保険への加入手続きを進めましょう

外国人労働者を雇用して働いてもらうには、業務内容と一致する在留資格(就労ビザ)が必要です。

就労ビザを既に取得している場合は、『外国人労働者を雇用した際の社会保険手続き+α、必要書類もご案内』より社会保険への加入手続きなどを進めてください。

就労ビザを得ていない場合の対応の流れをご説明します。

在留カードの提示を求め、在留資格を確認しましょう

在留資格を確認するために、在留カードを提示してもらいましょう。

外国人労働者を雇用するには、業務内容に一致する在留資格が必要です。

必要に応じて在留資格の変更をしましょう。

状況別の対応は以下のとおりです。

状況対応
留学生を採用する場合

業務内容が転職前後で変わる場合

在留資格の変更が必要

在留資格変更許可申請をしましょう

業務内容が転職前後で変わらない場合在留資格の変更は不要

在留資格変更許可申請は不要

雇用契約書に、就労ビザが不許可だった場合の取り扱いを記載しましょう

就労ビザを申請して、不許可だった場合は雇用契約の効力が生じない旨を雇用契約に明示しましょう。

上記の対応が必要な理由は次の3点です。

  1. 雇用契約をしてからでないと、就労ビザの申請はできない
  2. 就労ビザの申請は100%許可されるわけではないので、不許可だった場合は就労ビザを持たない人を雇用することになる
  3. 雇用契約書で事前に明示しない限り、「就労ビザの申請が許可されなかったので雇用しません」というと雇用主側が不利になる
例文
第X条 就労ビザ取得に基づく雇用契約の効力発生条件

[従業員名](以下「従業員」という)が日本における就労を目的として申請する就労ビザが、日本政府により正式に承認されたことを[雇用者名](以下「雇用者」という)が書面にて確認した場合のみ、本雇用契約は効力を発するものとする。

就労ビザの申請が承認されない場合、本契約はいかなる効力も発しないものとし、従業員および雇用者双方に本契約に基づくいかなる義務も生じないものとする。

社会保険への2重加入にご注意を|社会保障協定についてご認識を

外国人労働者を雇用する際は、社会保障協定の内容を理解し、雇用予定の労働者の国との間でどのような取り決めになっているのかを確認しましょう。

社会保障協定は、海外で働く日本人や、海外から日本で働く人々が、二国間で二重の社会保険料を支払う必要がないようにするための制度です。

2022年6月1日時点で、日本は23カ国と社会保障協定を締結しており、そのうち22カ国との協定が発効しています。協定内容は国によって異なるので、よく確認する必要があります。

社会保障協定適用証明書の提出が必要な場合は、具体的な提出先や手続きの方法について確認しましょう。

協定国別の注意点については、以下のページでご確認ください。

社会保障協定|日本年金機構

不明点がある場合は、年金事務所や社労士に確認をしながら手続きを進めましょう。

外国人労働者の社会保険加入条件は日本人労働者と同じ

社会保険への加入条件は日本人と同じなので、既に頭に入っている方は読み飛ばしていただければ幸いです。

社会保険への加入条件について確認したい方に向けて、以下3点をご説明します。

  1. 社会保険への加入対象になる外国人労働者
  2. 社会保険への加入対象にならない外国人労働者
  3. 社会保険への加入義務がある事業所

社会保険への加入対象になる外国人労働者

社会保険の被保険者になるのは、以下に該当する方です。

雇用形態社会保険への加入義務
1.正社員、法人代表者、役員加入義務あり
2.パート・アルバイト

(所定労働時間または所定労働日数が正社員の3/4以上)

加入義務あり
3.パート・アルバイト

(所定労働時間または所定労働日数が正社員の3/4未満)

法人内の被保険者101人以上(令和6年10月以降は51人以上)

かつ

以下3点に該当すれば加入義務あり

・週の所定労働時間が20時間以上あること

・賃金の月額が8.8万円以上であること

・学生でないこと

なお、外国人を雇用する際は、雇用保険への加入手続きもしなければいけないことがあります。

社会保険とは加入対象になる条件が異なるので、忘れずに対応しましょう。加入条件や手続きのしかたは以下の記事でご説明しています。

外国人労働者の雇用保険手続きガイド|日本人雇用時と異なる点を解説

社会保険への加入対象にならない外国人労働者

外国人労働者が出身国の社会保障制度に加入している場合は、日本の社会保障制度への加入が免除されます。相手国から適用証明書の交付を受けましょう。

年金事務所に社会保険に加入していない理由を問われた際に、適用証明書を提出する必要があります。

社会保険への加入義務がある事業所

次に、会社(≒事業所)が社会保険に加入する必要があるかどうかをご説明します。

事業所とは、事業を行う場所や建物のことです。事業所ごとに社会保険に加入する必要があります。例えば、飲食業を営んでいて店舗が4つある場合は、店舗(事業所)ごとに社会保険への加入義務があるか判断します。

社会保険への加入義務がある事業所は次のとおりです。

  • 全ての法人事業所
  • 従業員を常時5人以上雇用している個人事業所

社会保険への加入義務については以下の記事で詳しくご説明しています。詳細を知りたい方は併せてご参考ください。

社会保険(健康保険・厚生年金)加入手続きをサクッと終わらせる方法

【状況別】外国人労働者を雇用した際の社会保険手続き+α、必要書類もご案内

外国人労働者を雇用すると発生しうる手続きについてご説明します。在留資格に関する手続きなど、日本人を雇用する場合には発生しない手続きについてもご案内しているので、備忘録としてお役立てください。

外国人労働者が協定相手国の社会保険に加入していた場合の手続き

外国人労働者が協定相手国出身で、協定相手国の社会保障制度に加入している場合は日本の社会保障制度への加入が免除されることがあります。

協定を結んでいる国から日本で働く場合の手続きより、協定相手国の実施期間を確認し、適用証明書の交付申請をしましょう。

外国人労働者を雇用したときの手続き

外国人を雇用する際は以下の手続きが必要です。

  1. 在留資格変更許可申請
  2. 外国人雇用状況届出書
  3. 外国人労働者を社会保険に加入させる手続き

在留資格変更許可申請

採用後の職種に該当する就労ビザを外国人労働者が持っていなかった場合は、以下の申請をしましょう。

手続き名在留資格変更許可申請
入手方法・入手先申請書・必要書類・部数より、該当する活動資格をクリックすると申請書をダウンロードできるページに遷移します。
添付書類・必要書類活動資格による
提出先管轄の地方出入国在留管理官署
提出方法窓口持参、電子申請
提出期限在留資格の変更が生じたときから在留期間満了日以前
詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明

外国人雇用状況届出書(雇用保険への加入義務がない場合のみ)

雇用保険への加入義務がない外国人が入社・退社するときに必ず提出しなければならない届出です。

届出をしなかったり、内容が虚偽だったりした場合は30万円以下の罰金に処される恐れがあるので、必ず忘れずに対応しましょう。

※労働者を雇用保険に加入させるための届出である、雇用保険被保険者資格取得届を提出する場合、外国人雇用状況届出書の提出は不要です。

手続き名外国人雇用状況届出書
入手方法・入手先外国人雇用状況届出書
記入例
添付書類・必要書類 なし
提出先管轄の公共職業安定所
提出方法窓口持参、電子申請
提出期限入社時:翌月10日まで

離職時:翌日から起算して10日以内

詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明

外国人労働者を社会保険に加入させる手続き

  1. ローマ字氏名届
  2. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
ローマ字氏名届

外国人労働者のマイナンバーと基礎年金番号を紐付けるために、ローマ字氏名届を提出する必要があります。被保険者資格取得届と同時に提出しましょう。

手続き名ローマ字氏名届
入手方法・入手先ローマ字氏名届
記入例記入例1,2,3
添付書類・必要書類 不要
提出先事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法郵送、窓口持参
提出期限健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届と同時に提出
詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

労働者を社会保険の被保険者にするための手続きです。

手続き名健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
入手方法・入手先健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届|日本年金機構
記入例記入例|日本年金機構
添付書類・必要書類外国人を雇用する場合はローマ字氏名届と一緒に提出

マイナンバーがない場合は以下の方法で本人確認が必要

【短期在留している外国人の本人確認】
旅券の身分事項のページの写し
(ア)~(ウ)いずれかの写し
(ア)旅券の資格外活動許可証印のページ
(イ)資格外活動許可書
(ウ)就労資格証明書

【日本国外に居住している方の本人確認】
運転免許証、旅券、現地における公的機関の発行した資格証明書(写真付き)等の写し

提出先事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法郵送、窓口持参、電子申請
提出期限資格取得日から5日以内
詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明

外国人労働者の家族を被扶養者にする手続き

外国人労働者の家族を扶養に入れるためには、以下2点を満たす必要があります。

  1. 家族が日本国内に住所(住民票)を持っている
  2. 家族が被保険者の収入に主に依存して生計を立てている

ただし、日本国籍を持たず、「特定活動(医療目的)」「特定活動(長期観光)」のビザで滞在している場合は扶養に入れません。

海外に住んでいる家族を特例で扶養に入れる場合は、国内居住要件の追加を確認する必要があります。

手続き名健康保険被扶養者(異動)届
入手方法・入手先健康保険被扶養者(異動)届|日本年金機構
記入例被扶養者になる場合の記入例|日本年金機構

被扶養者でなくなる場合の記入例|日本年金機構

添付書類・必要書類健康保険被扶養者(異動)届
提出先事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法郵送、窓口持参、電子申請
提出期限事実発生から5日以内
詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明

在留期間を更新するときの手続き

在留期間を超えても雇用し続けるためには、在留期間を更新する必要があります。

手続き名在留期間更新許可申請書
入手方法・入手先申請書・必要書類・部数より該当する活動資格をクリックすると、申請書をダウンロードできるページに遷移します。
添付書類・必要書類 活動資格による
提出先管轄の地方出入国在留管理官署
提出方法窓口持参、電子申請
提出期限在留期間満了日以前

在留期間満了の3ヶ月前から申請可能

詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明

外国人が退職するときの手続き

  1. 外国人雇用状況届出書
  2. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
  3. 脱退一時金請求書

外国人雇用状況届出書(雇用保険に入っていない場合のみ)

雇用保険の被保険者ではない外国人労働者が退職するときは、外国人雇用状況届出書を提出する必要があります。

※労働者を雇用保険から外す届出である、雇用保険被保険者資格喪失届を提出する場合、外国人雇用状況届出書の提出は不要です。

手続き名外国人雇用状況届出書
入手方法・入手先外国人雇用状況届出書
記入例
添付書類・必要書類 なし
提出先管轄の公共職業安定所
提出方法窓口持参、電子申請
提出期限入社時:翌月10日まで

離職時:翌日から起算して10日以内

詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届

退職などにより、社会保険の被保険者でなくなったときに必要な手続きです。

手続き名健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
入手方法・入手先健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
記入例健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
添付書類・必要書類1. 組合管掌健康保険の被保険者

特になし

2. 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険

・健康保険被保険者証(本人分及び被扶養者分)

・(交付されていれば)高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証

提出先事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法郵送、窓口持参、電子申請
提出期限事実発生から5日以内
詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明

脱退一時金請求書

外国人労働者が国民年金、厚生年金保険の被保険者資格を喪失して帰国した場合、出国後2年以内であれば脱退一時金を請求できます。支払った厚生年金保険料の一部を脱退一時金として受け取れることがあります。

支給要件は…

  • 日本国籍を有していない
  • 厚生年金保険または国民年金の被保険者でない
  • 保険料納付済期間等の月数の合計が6月以上ある
手続き名脱退一時金請求書
入手方法・入手先脱退一時金請求書
記入例
添付書類・必要書類・パスポートの写し:氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格の確認できるページ

・日本に住所がないことがわかる書類:住民票の除票の写しやパスポートの出国日が確認できるページの写し等

・受取先金融機関名、支店名、支店の所在地、口座番号、請求者本人の口座名義であることを確認できる書類

・基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号がわかる書類

・手続きを代理する場合は委任状

提出先日本年金機構本部または各共済組合
提出方法郵送、電子申請
提出期限労働者が日本の住所をなくして出国してから2年以内
詳細

※手続きをする際に必ずご確認ください

手続きの詳細説明

まとめ

外国人労働者を雇用する際に注意すべき点は次のとおりです。

  • 在留資格(就労ビザ)がない外国人を雇用すると、不法就労助長罪に問われる可能性がある
  • 雇用契約書には、就労ビザが不許可だった場合の取り扱いに関する条項を含めるべき
  • 在留資格(就労ビザ)がない場合は雇用できず、在留資格があっても、業務内容に一致している必要がある
  • 在留資格の変更許可申請が必要なケース(例:留学生の採用や業務内容の変更がある場合)もある
  • 社会保障協定の内容を理解し、適用証明書の提出などを含む適切な手続きを行うことで、社会保険への2重加入を防ぐ必要がある
  • 上記を対応した上で、社会保険の被保険者にするための手続きをする
  • 社会保険への加入条件は同じだが、添付書類が一部異なることがある

社会保険への加入条件や手続きの仕方については、日本人を雇用する場合と大きな違いはありませんが、在留資格に関する手続きを忘れると不法就労助長の罪に問われる恐れがあるので、社会保険加入以前の手続きにも気を配る必要があります。

「届出が多くて忘れそう」「細かい疑問がたくさんある」という方は、社労士に手続きを任せることもご検討ください。

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