労働基準監督署が調査に来る理由はいくつかあります。
調査の結果悪質性の高い法令違反があった場合は、行政処分を受けたり、送検されたりすることもあります。
調査に応じないと最悪の場合罰金刑になるので、基本的に素直に対応する姿勢で臨みましょう。
では、どのように対応をすればいいのでしょうか?
この記事では、以下目次の内容をご説明します。労基に調査をされている方やされた方が、出来るだけ傷口を広げないようにするためにできることをお伝えしますので、ぜひ最後までご参考ください。
労働基準監督署の調査を受けるとどうなる?(法令違反をしていた場合)
労働者からの通報を受けたのち、法令違反があると労基署が判断した場合は、職場環境や各種帳簿・書面を確認されることがあります。
労基署の調査を受けた結果、法令違反が発覚した場合は以下のような処分を受けることがあります。
- 是正勧告や指導を受ける
- 行政処分や罰則を受けることも
- 従業員との紛争
指導や是正勧告を受ける
調査の結果、指導票や是正報告書が発行されることがあります。
- 指導票:法令違反ではないが、改善したほうがいい点が記入された書面
- 是正報告書:法令違反がある際に発行。違反内容、指示、対応の期日が書かれた書面
指導票や是正報告書を受け取ったら、指摘された点を改善したのちに報告書を提出する必要があります。
判例では、勧告を受けた企業が自主的に対応することを期待するもの(札幌地判H2.11.6)、という建前にはなっていますが、報告書を提出しなかった場合は、再監督や行政処分を受ける恐れがあるので、早めに対応しましょう。
行政処分や罰則を受けることも
悪質性が高かったり、調査や報告書提出に応じなかったりした場合は、行政処分や罰金刑を受ける恐れがあります。
【行政処分の内容の例】
- 報告命令
- 出頭命令
- 作業の停止命令
- 建築物等の使用停止命令
- 講習の指示
- 企業名の公表
調査・書類提出を妨害・拒否した場合は30万円以下の罰金に処される恐れがあります。
労働基準監督官は、司法警察権限を持っているので、強制捜査や送検をすることもできます。
調査を拒否してもいいことはないので、基本的には素直に対応して傷口を広げないようにするのが無難です。
従業員との紛争
労基署への対応とは別に、従業員との紛争に対応しなければいけない場合もあります。
労基署の調査で法令違反が明らかになった場合、従業員からすれば証拠が1つ増えることになるので、交渉をする上で有利な材料になります。
従業員から例えば残業代の請求をされた場合、できれば話し合い(示談)で解決するのが無難です。交渉を進める前に、調査をして従業員の主張の内容を確認しましょう。
正確な残業時間が何時間なのかによって未払い残業代の金額が異なるので、従業員の主張をそのまま受け入れるのではなく、調査をしてから回答するのが無難です。
残業代未払いが事実である場合は、基本的に交渉をしない選択肢は実質ありません。訴訟を起こされて従業員の主張が認められた場合、遅延損害金に加えて請求額と同等の付加金の請求が認められる場合があります。
なぜうちに?労働基準監督署が突然調査に来た4つの理由
労基署が調査に来る理由は主に次の4つです。
- 申告監督|関係者に通報されて
- 定期監督|定期的な見回りで
- 災害監督|労災発生をきっかけに
- 再監督|調査後になんらかの問題がある場合に
申告監督|関係者に通報されて
従業員や退職者の申告をきっかけに始まる調査です。申告内容の真偽を確かめるために行われます。
調査をする際は、申告があったことを企業に伝える場合と、伝えない場合があります。
定期監督|定期的な見回りで
毎月行われる調査です。労基署が管轄の企業に対して行います。
通報や労災がなくても行われる調査なので、法令違反をしていなければ特に心配することはありません。
労働基準法や労働安全衛生法に関連する項目が調査されます。
災害監督|労災発生をきっかけに
労災が起きて従業員が傷害を負ったり、死亡したりした際に行われます。
法令違反の有無や労災の原因を調べたり、企業に再発防止の取り組みをさせたりするために行われます。
再監督|調査後になんらかの問題がある場合に
以下の点に当てはまる場合に、再度調査が行われる場合があります。
- 是正勧告で指摘した点が改善されたか確かめるため
- 是正報告書が期限までに提出されなかったため
労働基準監督署調査の流れ
調査の流れはおおむね次のとおりです。
- 予告(ない場合も)
- 調査
- 是正勧告・指導
- 是正報告書の提出
予告(ない場合も)
調査前に予告がある場合と、ない場合があります。
予告がある場合
労基署が帳簿や書類の準備を希望する場合や、担当者の不在を避けたい場合は予告をしたのちに調査がされます。
予告がない場合
労基署が隠蔽や偽装を防ぎたいような場合は、予告なく突然調査に来ます。
調査
労働基準監督署から監督官が2名調査に派遣されます。
調査はおおむね次の流れで進みます。
- 帳簿・書類の確認
- 事業主、責任者への聞き込み
- 企業への立ち入りと労働者への聞き込み
- 改善指導
是正勧告・指導
是正勧告書や指導票が交付されます。どちらかが交付される場合とどちらも交付される場合があります。
受領日、受領者職、受領者氏名を記入し捺印をして書類を受け取ります。
是正報告書・指導票の提出
改善が終わったら、以下の内容を記入した是正報告書・指導票を提出します。
- 指摘された内容
- 改善した内容
- 完了日
- 会社名
- 住所
- 代表者氏名
- 押印
報告書・指導票の提出が終われば調査完了です。
労働基準監督署が突然調査に来た際の対応方法
調査の種類別に、調査への対応方法をご説明します。
申告監督への対応方法|申告者が誰か分かれば、本人に謝罪と交渉を
申告監督の場合は、申告した本人との話し合いをして解決できれば無難です。
ただ、誰が申告をしたのか最後までわからないこともあります。
申告者が在職中の場合、監督官が申告者の氏名を伝えると、申告者が不利益な扱いを受ける恐れがあるためです。
申告者が退職者である場合や、企業側が監督官に申告者に謝罪と交渉(未払い残業代の支払いなど)をしたいと伝えた場合などは、監督官が仲立ちしてくれることもあります。
いずれのケースも申告者に不利益がなく、申告者に交渉の意思があるかどうかが鍵になります。
申告者が誰かわからない場合は、監督官の指導や是正勧告で指摘されたポイントを改善するのが基本的な対応になります。
定期監督への対応方法|具体的な問題がなくても行われる。素直な対応を
定期監督は労働者の通報や労災のような、具体的な問題がなくてもされるものなので、法令違反がなければ基本的に素直に対応するだけで十分です。
定期監督は地方労働行政運営方針に基づいて行われます。これは、どのような企業を調査するのか方針を決めるもので、毎年方針がかわります。
予告なしに調査が行われることもありますが、書類の準備などが必要なため、日程を調整して後日調査することもあります。社内で対応しても構いませんが、不安であれば社労士に立ち会いを依頼することもできます。
災害監督への対応方法|労災の原因・内容・状況が詳細にわかるよう調査し資料を集めましょう
労災発生後の対応の流れはおおむね次のとおりです。
- 被災者の救出・病院への搬送
- 自己状況の把握:被災者の氏名、労災があった場所・日時・状況、周りにいたもの、被災者が負った傷害の内容
- 労災保険給付手続き
- 病院への通院
- 労基署の調査への対応
- 再発防止策を講じる
それぞれを細かく説明すると結構な文量になってしまうので、ここでは労基署への対応の仕方だけをご説明します。
労基署の調査の結果で労災が認められるかどうかが判断されるので、出来るだけ丁寧に対応しましょう。
以下のような点を確認し、法令違反がなかったかどうかを調べます。
- 労働条件
- 労働時間
- 労働者の人数
- 安全管理体制
以下のような書類を求められることもあるので、指示に従い用意しましょう。
- 就業規則
- 雇用契約書
- タイムカード
- 賃金台帳
他の調査と同じように、法令違反やそれに近しい点がある場合は指導票や是正勧告書が発行されるので、期日までに対応しましょう。
再監督への対応方法|指導票や是正勧告書を提出しましょう
指導票や是正勧告書を期日までに提出しましょう。
提出しない場合は、行政指導を受けたり送検されたりする恐れがあります。
労働基準監督署の調査への対応に困ったら社労士にご相談を
労基署の調査への対応で不安がある場合は、社労士に相談をするのも1つです。
社労士に相談をすると、調査への対応で分からないことを相談したり、立ち合ったりしてもらえます。さらに、今後労基に調査されても問題ないよう、法令違反のないクリーンな労働環境を構築できます。
以下、労基署の調査に関して社労士に相談する際のポイントをご説明します。
- 社労士に相談するべき3つの理由
- 労基署調査の対応を社労士に依頼した際の費用相場
- 【1年間無料】調査への対応と再発防止の対策を
- 自社に合う社労士を探す場合は一括見積もりが便利です
社労士に相談するべき3つの理由
社労士に相談するべき理由は次の3つです。
- 調査への準備を適切に行える
- 調査への対応を適切に行える
- 法令違反をしないような職場環境を作れる
調査への準備を適切に行える
労基に調査されることがわかっている場合は、調査前に社労士に相談することもできます。
調査前に社労士に相談をすると、企業の現状を把握した上で指摘されそうな点を洗い出したり、書類準備のアドバイスを受けたりできます。
調査への立ち会いを依頼できるのもこのタイミングです。
調査への対応を適切に行える
是正勧告書や指導票を発行されたら、指示の内容どおりに職場環境を改善しなければなりません。是正勧告書には期日があり、これを過ぎると再監督や送検されることもあり得るので、できる限りすぐに対応をするべきです。
社内で対応しても構いませんが、適切に対応しできているかどうか不安だったり、期日までに対応を終えられるか心配だったりする場合は、社労士に対応を依頼すると安心です。
法令違反をしないような職場を作れる
労基に調査に入られるのは気分がいいことではありませんし、できれば2度と同じ思いをしたくないと感じた方もいるかもしれません。
普段は通常業務のことに集中していて、労務管理のことを考える機会が少なかった方も、これを機に法令違反をしないような職場を作れればいいと思いませんか?
とはいえ、法令違反をしないような職場を作ろうにも、どこから手をつければいいのか判断がつかないのが普通です。労基に指摘をされるなど、実際に問題が起きてから出ないと、問題に気づくのは困難です。
社労士は、将来起きうるリスクを想定して、問題が起きないようなルールを作る仕事です。今の会社の労務管理のうち、問題になりそうな点を洗い出し、法令違反をしないような体制にできます。
是正報告書の対応に加えて、法令違反をしないようなルール作りに関しても相談されるのもいいかもしれません。
労基署調査の対応を社労士に依頼した際の費用相場
労基署の調査への対応を社労士に依頼した場合の費用相場は次のとおりです。
労基署の調査への準備、立ち会い | 20,000~70,000円 |
指導票・是正報告書作成サポート | 10,000~40,000円 |
上記に加えて、法令違反をしないための職場の環境を構築するにあたって、別の業務を社労士に依頼することもできます。
例えば、就業規則の修正や追記は30,000円程度が相場です。
どのような点を改善するかによって、調査立ち会い以外に社労士に依頼するべき業務が異なります。
調査の立ち会いと再発防止策を講じたいと伝えれば、ヒアリングをしたのち具体的な見積もりをもらえるでしょう。
労基署調査に付随する社労士業務の費用相場については、以下の記事をご確認ください。
社労士の顧問料相場は月額2万円~17万円程度です。金額に開きがある理由は、対応する業務の幅や量が異なるからです。相談だけの顧問契約であればもっと安く済みますし、人事労務のコンサルを含む場合はもっと高くなることもあります。[…]
【1年間無料】調査への対応と再発防止の対策を
労基署が指摘するポイントや会社の現状はそれぞれ違うので、社労士費用が高額になる場合もあるかもしれません。
労基署への対応はしなければいけないけど、社労士費用が心配
という方は、社労士法人TSC(CACグループ)の1年間無料キャンペーンを試してみてはいかがでしょうか。
【1年間無料サポート対象業務】
- 労基署調査への準備や対応の相談
- 顧問契約
- 労務相談
- 勤怠管理システム
- 給与計算事務
- 労働保険事務
- 社会保険事務
- 助成金アドバイス
- WEB明細システム
顧問先限定で労基署調査への対応を無料でサポートしています。職場環境を改善する際に、上記の業務は1年無料で依頼できるので、時間をかけて確実に職場環境を良くしていけます。
CACグループは1965年創業で55000件以上の顧客契約数があります。60年以上企業をサポートしてきた実績と経験があります。法令違反をしない組織をつくるのであれば、これ以上安心して相談できる先は少ないでしょう。
ただ、1年間無料の業務と無料ではない業務がある、という点だけはご注意ください。
調査への対応や相談は無料ですが、再発防止のためにやることの内容によっては、有料になる部分もあるかもしれません。詳細は以下のページをご確認ください。
自社に合う社労士を探す場合は一括見積もりが便利です
改善しなければいけない内容によって、社労士に依頼したい業務が異なります。
自社にとっての適切な社労士費用を知ろうと思うとネットで調べるだけでは限界があります。
そんな場合は、一括見積もりをご利用ください。依頼したい業務の内容と従業員の人数を伝えることで、複数の社労士から見積もりが届きます。社労士費用に加えて社労士の対応も比較できます。
職場の環境をどのように改善していくのか、最もイメージが湧いた相手に依頼すると安心感があるでしょう。
以下より無料で一括見積もりができるので、ぜひご利用ください。
まとめ
労基署が調査に来る理由は複数あります。いずれの理由の場合も、法令違反をしているポイントを確認したり、改善を促したりするのが調査の目的です。拒否や妨害をするとさらに状況が悪くなるので、相手の指示をよく聞き、指摘されたポイントに対応する方向性でお考えください。
調査の準備や対応、今後の改善のことで不安やわからないことがある場合は、社労士への相談をお考えください。