外国人労働者を雇用した際に、どのような雇用保険手続きが必要なのかご説明します。
雇用保険の加入条件は日本人と同じですが、日本人労働者を雇用するときとは違う手続きが必要になることもあります。
例えば、外国人労働者が入社・退社した際は外国人雇用状況届出書を提出しなければなりません。手続きを忘れると、30万円以下の罰金に処されることがあります。
このように、日本人を雇用する場合とは異なる点を詳しくご説明するので、外国人を雇用する(雇用している)方はぜひご参考ください。
雇用保険への加入義務がある外国人労働者
雇用保険への加入義務がある労働者と、ない労働者の条件をそれぞれご説明します。
外国人労働者の雇用保険への加入条件は日本人と同じ
以下の両方に当てはまる労働条件で雇用する場合は、雇用保険への加入手続きをする必要があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
雇用保険の加入対象外になる外国人労働者
以下のいずれかに該当する方を雇用する場合、雇用保険の加入手続きをする必要はありません。
- 昼間の学校に通う留学生
- ワーキングホリデー中の外国人労働者
昼間の学校に通う留学生
昼間の高校や大学に通う留学生は雇用保険の加入対象にはなりません。
ただし、以下いずれかに該当する場合は、雇用保険に加入させる必要があります。
- 卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一事業所に勤務する予定の方(卒業見込証明書が必要)
- 休学中の方
- 事業主の承認を受け雇用関係を存続したまま大学院等に在学する方
- 一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する者であって、当該事業において、同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められる方
ワーキングホリデー中の外国人労働者
ワーキングホリデーで日本に来て働いている外国人労働者は雇用保険の加入対象外です。ただし、加入要件を満たしていれば、ワーキングホリデー中の方も社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する必要があります。
また、外国人を雇用する際は社会保険にも加入させる必要があります。雇用保険とは加入条件が異なるので忘れずに対応しましょう。加入条件や手続きの内容については次の記事でご説明しています。
外国人労働者を雇用保険に加入させる際は、在留資格を必ず確認しましょう
採用後の業務内容に合致する在留資格を持たない外国人を働かせると、不法就労助長罪に問われる恐れがあります。在留資格の確認方法や、適切な在留資格がなかった場合の対応など、雇用契約をする際に必ず押さえておくべきポイントをご説明します。
- 外国人を雇用する際は、業務内容に合致した在留資格が必要
- 在留資格変更許可申請をする場合は、雇用契約書の内容に注意
- 在留資格変更許可申請と雇用保険への加入手続きは同時に進めてOK
外国人を雇用する際は、業務内容に合致した在留資格が必要
外国人は、在留資格の範囲内で活動が許されています。
採用後の職種に合致する在留資格を持っているか、必ず確認しましょう。在留カードを見れば在留資格がわかります。
在留資格の種類は…
- 在留資格の範囲内で就労が認められている在留資格:外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習、特定活動
- 就労が認められていない在留資格:文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在
- 就労に制限がない在留資格:永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
就労が認められない在留資格や採用後の業務と異なる在留資格を持っていた場合は、在留資格変更許可申請をする必要があります。
在留資格変更許可申請をする場合は、雇用契約書の内容に注意
在留資格変更許可が認められなかった場合は、雇用契約の効力が生じない旨の一文を雇用契約書に明示しましょう。
雇用契約を結んでからでなければ在留資格変更許可申請はできません。しかし、在留資格変更が100%認められるわけではありません。
適切な在留資格を持たない外国人を雇用すると、不法就労助長罪(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらを併科)に問われる恐れがあります。
在留資格変更が認められない場合は雇用契約の効果が生じない旨を雇用契約書に記入しないと、仕事を辞めてもらうよう説得するのが難しくなる可能性があります。
社労士であれば、雇用契約書の内容を確認したり、雇用保険や社会保険の手続きを代理したりできます。外国人を雇用するにあたって不安がある方は、手続きを進める前に相談や確認をすると安心です。
在留資格変更許可申請と雇用保険への加入手続きは同時に進めてOK
在留資格変更許可申請が承認されるまでは1月以上かかることもあります。承認を待つまでの間に雇用保険の加入手続き(雇用保険被保険者資格取得届)を進めても問題ありません。
この場合、雇用保険被保険者資格取得届の備考欄に、在留資格変更許可申請中である旨を記入しましょう。
【状況別】外国人労働者の雇用保険手続き|付随する手続きや添付書類もご案内
外国人労働者の雇用保険手続きが発生するのはどんなときなのか、状況別にご説明します。日本人労働者のときと提出書類が異なることがあります。
- 外国人労働者を雇用したときの手続き
- 在留期間を更新するときの手続き
- 外国人が退職するときの手続き
外国人労働者を雇用したときの手続き
外国人労働者を雇用した際は次の手続きが必要です。
- 在留資格変更許可申請
- 外国人雇用状況届出書(雇用保険への加入義務がない場合)
- 雇用保険被保険者資格取得届(雇用保険への加入義務がある場合)
在留資格変更許可申請
在留カードを確認し、在留資格と採用後の職種が異なる場合は、在留資格変更許可申請が必要です。
手続き名 | 在留資格変更許可申請 |
入手方法・入手先 | 申請書・必要書類・部数より、該当する活動資格をクリックすると申請書をダウンロードできるページに遷移します。 |
添付書類・必要書類 | 活動資格による |
提出先 | 管轄の地方出入国在留管理官署 |
提出方法 | 窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 在留資格の変更が生じたときから在留期間満了日以前 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
外国人雇用状況届出書(雇用保険への加入義務がない場合)
雇用予定の方に雇用保険への加入義務がない場合は、外国人雇用状況届出書を提出します。
なお、在留資格が外交、公用、特別永住者である場合は届出不要です。
手続き名 | 外国人雇用状況届出書 |
入手方法・入手先 | 外国人雇用状況届出書 |
添付書類・必要書類 | なし |
提出先 | 管轄の公共職業安定所 |
提出方法 | 窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 入社時:翌月10日まで 離職時:翌日から起算して10日以内 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
雇用保険被保険者資格取得届(雇用保険への加入義務がある場合)
雇用する方が雇用保険への加入条件を満たす場合は、雇用保険被保険者資格取得届を提出しましょう。
17~22欄を記入することで、外国人雇用状況届出書の届出をしたことになります。特別永住者、在留資格が外交・公用の方の場合は記入不要です。
在留資格変更の手続きをしている最中の場合は、備考欄にその旨を記載しましょう。
在留カードかパスポートを確認しながら内容を記入してください。
手続き名 | 雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号) |
入手方法・入手先 | ハローワーク インターネットサービスより印刷 |
提出先 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
添付書類 | 原則不要 期限を過ぎた場合は、雇用したことを証明する以下のいずれかの書類 ・賃金台帳 ・労働者名簿 ・出勤簿 など |
提出期限 | 被保険者にする従業員を雇用した月の翌月10日まで |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
在留期間を更新するときの手続き
在留期間を過ぎても雇用をし続ける場合は、在留期間更新許可申請書を提出しましょう。
手続き名 | 在留期間更新許可申請書 |
入手方法・入手先 | 申請書・必要書類・部数より該当する活動資格をクリックすると、申請書をダウンロードできるページに遷移します。 |
添付書類・必要書類 | 活動資格による |
提出先 | 管轄の地方出入国在留管理官署 |
提出方法 | 窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 在留期間満了日以前 在留期間満了の3ヶ月前から申請可能 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
外国人が退職するときの手続き
雇用保険に加入していたかどうかで手続きが異なります。
- 外国人雇用状況届出書(雇用保険への加入義務がない場合)
- 雇用保険被保険者資格喪失届(雇用保険に加入していた場合)
外国人雇用状況届出書(雇用保険への加入義務がない場合)
手続き名 | 外国人雇用状況届出書 |
入手方法・入手先 | 外国人雇用状況届出書 |
添付書類・必要書類 | なし |
提出先 | 管轄の公共職業安定所 |
提出方法 | 窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 入社時:翌月10日まで 離職時:翌日から起算して10日以内 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
雇用保険被保険者資格喪失届(雇用保険に加入していた場合)
雇用保険の被保険者であった場合はこちらを提出します。
表面の住所(被保険者の住所又は居所)や、裏面の14~19欄を記入して提出することで、外国人雇用状況届出書の提出をしたことになります。
手続き名 | 雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号) |
入手方法・入手先 | 雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号) |
添付書類・必要書類 | 【離職票を交付希望の場合に必要】 ・離職証明書 (3枚複写 ) ・支給の内訳と交通費が分かる賃金台帳又は給与明細書 (記載した期間すべて) ・出勤簿又はタイムカード (記載した期間すべて) ・離職理由の確認できる書類のコピー |
提出先 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 退職日の翌々日から10日以内 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
まとめ
外国人を雇用する方に向けて、雇用保険に加入させる前後で知っておくといいポイントをご説明しました。
要点は次のとおりです。
- 所定労働時間が週20時間以上、雇用見込みが31日以上ある場合に雇用保険への加入義務がある
- 昼間の学校に通う留学生やワーキングホリデー中の外国人は原則として雇用保険の加入対象外だが、特定条件下では加入が必要
- 採用時には在留資格を確認することが重要で、在留資格が採用後の職種と異なる場合は在留資格変更許可申請が必要
- 雇用契約書には在留資格変更許可が得られなかった場合の条項を明示することが大切
日本人を雇用する場合と提出書類が異なることがあるので、不安がある場合は事前に社労士に相談すると安心です。社労士は、雇用契約書の確認や、雇用保険に関する手続きの代理ができます。