この記事では、社会保険の加入手続きを忘れていた方に向けて、遡って加入する場合の保険料や手続きの進め方についてご説明します。
社会保険に遡って加入する場合に、最大2年間まで遡って加入できます。
会社(≒事業所)が年金事務所の立入検査を経て社会保険に強制加入をした場合は、最大で2年分の社会保険料を一括請求されたり、刑事罰に処されたりすることがあります。
このように、社会保険に遡って加入する際に、手続きを進める前に知っておいた方がいいことをお伝えしたうえで、具体的にどのように手続きを進めればいいのかご案内します。
また、雇用保険に遡って加入する際の手続きについては以下の記事でご説明しています。忘れていた方はこちらも併せてご参考ください。
【前提知識】社会保険に遡って加入する前に押さえておきたいポイント
社会保険に遡って加入する場合、会社が社会保険に加入していないケースと、従業員が社会保険に加入していないケースをわけて考える必要があります。
以下、社会保険の加入が遅れてしまった場合に、手続きをする前に最低限知っておいた方がいいポイントをご説明します。
社会保険に遡って加入する義務があるのはどんな企業・従業員か
そもそも社会保険への加入義務を満たしてなければ、手続きをする必要はありません。
社会保険への加入義務があるのはどんな会社・従業員なのかご説明します。
社会保険への加入義務がある会社
- 全ての法人
- 5人以上雇用している個人事業主
社会保険に初めて加入する場合、まずは会社(≒事業所)が社会保険の適用を受けるための手続きをする必要があります。事業所とは、事業を行う場所や建物のことです。1つの法人内に複数の支店や店舗がある場合は、それぞれ届出をする必要があります。
社会保険への加入義務がある従業員
雇用形態ごとの社会保険への加入義務は次のとおりです。
雇用形態 | 社会保険への加入義務 |
1.正社員、法人代表者、役員 | 加入義務あり |
2.パート・アルバイト (所定労働時間または所定労働日数が正社員の3/4以上) | 加入義務あり |
3.パート・アルバイト (所定労働時間または所定労働日数が正社員の3/4未満) | 法人内の被保険者101人以上(令和6年10月以降は51人以上) かつ 以下3点に該当すれば加入義務あり ・週の所定労働時間が20時間以上あること ・賃金の月額が8.8万円以上であること ・学生でないこと |
社会保険に遡って加入する期間は最大で2年
社会保険に加入する場合、遡る期間は最大で2年間までです。
社会保険未加入で懲役刑や罰金刑に処される恐れも
事業所に社会保険への加入義務があるにもかかわらず、届出をしなかった場合は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金(健康保険法208条)に処される恐れがあります。
刑事罰の対象になりやすいのは、悪質性が高いケースです。手続きを忘れていた場合も、早めに対応すれば刑事罰に問われない可能性があります。
会社が社会保険に遡って加入する際の保険料はどうなる?
社会保険に加入しないと、立入検査をされて強制的に社会保険に加入させられることがあります。この場合、最大2年まで遡って社会保険料を一括で請求されます。
ただし、立入検査をされる以前に事業所が社会保険の適用を受ける手続きをすれば、社会保険料を遡って請求される心配はありません。
立入検査前後のどちらで加入するかによって、金銭的負担はかなり異なります。
以下、社会保険への加入手続きが遅れると社会保険料はどうなるのかご説明します。
立入検査をされてから遡及加入をすると、最大2年分の保険料を一括請求される
加入義務がある事業所が社会保険に加入をしない場合、年金事務所から加入要請をされたり、警告文章が届いたりします。
それでも加入手続きをしない場合は、立入検査をされたのちに社会保険に強制加入させられます。最大で過去2年分の社会保険料を一括払いで請求されます。
前月分の社会保険料しか給与から天引きできない
過去の社会保険料を一括請求された場合、まずは会社の資金で社会保険料を支払うことになります。
従業員の給与から天引きできるのは前月の社会保険料のみなので、一括請求された社会保険料を勝手に差し引くことはできません。
立入検査以前に社会保険に加入をすれば、過去の社会保険料は請求されない
社会保険料を遡って請求されるのは、立入検査を経て社会保険に強制加入された場合です。
立入検査をされる前に事業所が社会保険に加入した場合は、新規加入と同様の扱いになるので、過去の保険料については請求されません。
なかなか手続きを進められない場合は、社労士に外注するのもいいかもしれません。
社会保険料が払えない場合は分納や支払い猶予の相談をしましょう
社会保険料を一括請求されてどうしても支払いができない場合は、年金事務所や労働局に分納や支払い猶予の相談をしましょう。分納や支払い猶予は必ず認められるわけではないので、断られた場合は他の方法でお金を工面しなければいけません。
社会保険遡って加入する際の手続き・必要書類
社会保険に加入する際の手続きについて、必要書類や提出先をご案内します。
- 会社が社会保険に加入していない場合の手続き
- 従業員を社会保険に加入させていない場合の手続き
会社が社会保険に加入していない場合の手続き
初めて社会保険に加入する際は、以下の届出をして事業所を社会保険に加入させる必要があります。
手続き名 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 |
入手方法・入手先 | 新規適用届|日本年金機構 |
記入例 | 記入例|日本年金機構 |
添付書類・必要書類 | 法人登記簿謄本 法人番号指定通知書のコピー 個人事業主のみ:事業主の世帯全員の住民票 個人事業主のみ:代表者の公租公課の領収書1年分 |
提出先 | 会社がある地域を所轄する年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 会社設立から5日以内 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
従業員を社会保険に加入させていない場合の手続き
従業員を社会保険の被保険者にするためには、次の手続きが必要です。
手続き名 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 |
入手方法・入手先 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届|日本年金機構 |
記入例 | 記入例|日本年金機構 |
添付書類・必要書類 | 原則不要だが、加入義務が発生したときからの勤務実態の分かる書類が必要なこともある(年金事務所に確認推奨) 60 歳以上の方が、退職後 1 日の間もなく再雇用された場合①と②両方又は③ ① 就業規則、退職辞令の写し(退職日の確認ができるものに限る) ② 雇用契約書の写し(継続して再雇用されたことが分かるものに限る) ③ 「退職日」及び「再雇用された日」に関する事業主の証明書 |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 資格取得日から5日以内 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
社会保険に加入する際の手続きについては、以下の記事でより詳しくご説明しています。
社会保険の手続きを社労士に任せる3つのメリット
社会保険に遡って加入する場合、通常の手続きとは勝手が異なる場合もあります。不安があれば社労士に任せてしまうのもいいかもしれません。
以下、社労士に外注するメリットを3点ご説明します。
- 社会保険への加入が遅れた場合も適切な対応ができる
- 手続き忘れによる金銭的損失が起きにくいような体制を構築できる
- 意図しない法令違反のリスクを防げる
社会保険への加入が遅れた場合も適切な対応ができる
社会保険への加入を長期間忘れていると、手続きが複雑になることが考えられます。
例えば、社会保険料を遡って支払うことで、国民年金と厚生年金を2重で支払ってしまうことも考えられます。この場合は還付手続きをしないと払いすぎた分は戻ってきません。
このように、社会保険の加入忘れがきっかけで他の手続きが必要になることも考えられるので、手続きの進め方を完璧に把握できていないような場合は社労士に任せることも検討された方がいいでしょう。
手続き忘れによる金銭的損失が起きにくいような体制を構築できる
社会保険への加入手続きを忘れると、最悪の場合2年分の保険料を一括で請求されることも起こり得ます。
加入忘れにすぐに気づいて手続きをすればこのようなリスクはありませんが、手続きを忘れないに越したことはありません。
社労士に手続きを任せることで、手続きが遅れたことによる金銭的損失を回避しやすくなります。
意図しない法令違反のリスクを防げる
起業当初はメインの業務に人材や時間を集中して頑張ってきた方がほとんどかと思いますが、事業の規模が大きくなってくると、意図しない法令違反をしてしまうこともあるでしょう。
社労士に相談をすると、雇用に関する法令違反をしにくいような体制を構築できます。人を雇用しているけど、雇用関連の法律についてはカバーしきれていないな、と感じる経営者の方は社労士に相談するメリットが大きいでしょう。
以下の社労士事務所であれば、社会保険手続きなどの業務を1年間無料で相談・外注できます。無料期間の間であれば相談し放題なので、これを機に手続き忘れや意図せぬ法令違反をしないような体制を構築するのもいいかもしれません。
詳細が気になった方は以下をご確認ください。
まとめ
- 社会保険への遡及加入は、会社が加入していないケースと従業員が加入していないケースに分けて対応が必要
- 立入検査前に自発的に加入すると過去の社会保険料の請求はなく、立入検査後の加入で遡及請求されるリスクあり
- 遡及加入は最大で2年。悪質な場合は最大2年分の社会保険料が一括請求されたり、刑事罰の対象になったりするリスクも
- 社会保険への加入手続きは通常と同じだが、従業員を遡って加入させる場合は、加入義務が発生したとき以降の勤務実態がわかる書類を添付しなければいけないことがある
少数精鋭で頑張ってきた経営者の方ほど、社会保険手続きのような、法律上やらなければいけない手続きには手が回らなかったり、忘れたりしてしまうこともあるでしょう。
社労士に手続きを任せることで、手続き忘れによる法令違反や金銭負担のリスクを少なくできます。