この記事では、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入手続きをする義務があるのはどんな人なのか、どんな流れで手続きを進めるのか、具体的にご説明します。社会保険に加入する義務がある方の立場別に、各種届出を提出する際の、必要書類、入手方法、記入例、期限、提出先など、手続きを完了するために必要な情報をすべてお伝えします。
当記事でご説明する流れどおりに手続きを進めていただければ、段取りよく作業を進められます。不明点がある場合の相談先や外注先も最後にご紹介しています。社会保険の手続きは今回だけではないので、手続きが面倒だと感じた場合は自力で頑張らずに社労士に外注してしまうのもいいかもしれません。
最初の項目で社会保険への加入義務があるのはどんな人なのかをお伝えしますので、ご自身が該当する場合は、ぜひ当記事を参考に手続きを進めてみてください。
【立場別】社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入要件|加入義務があるのはこんな人!
対象者 | 加入手続きの種類 |
全ての法人 | 新規適用届 |
5人以上雇用している個人事業主 | |
上記以外で社会保険への加入を希望する事業主 | 任意適用申請の手続き
|
被雇用者 (代表者、役員、正社員、パート) | ・被保険者資格取得届 ・健康保険被扶養者(異動)届(被保険者に被扶養者がいる場合のみ) |
どんな人が社会保険への加入手続きをしなければいけないのかご説明します。立場によって届出の種類が違います。それぞれの届出の概要を簡単にご説明します。
法人の社会保険加入要件
すべての法人は社会保険に加入しなければいけません(強制適用事業所)。社会保険に加入できるようにするためには、新規適用届を提出して、適用事業所になる必要があります。
新規適用届とは、事業所が社会保険の適用を受けるための届出のことです。初回のみ手続きが必要です。
個人事業主の社会保険加入要件
従業員を常時5人以上雇用していて、かつ以下の業種に当てはまる個人事業主は社会保険への加入義務があります。
- 製造業
- 鉱業
- 電気ガス業
- 運送業
- 貨物積卸し業
- 物品販売業
- 金融保険業
- 保管賃貸業
- 媒体斡旋業
- 集金案内広告業
- 清掃業
- 土木建築業
- 教育研究調査業
- 医療事業
- 通信報道業
- 社会福祉事業
加入要件を満たさない事業主も、社会保険に任意で加入できる
社会保険の加入要件を満たさない事業所(任意適用事業所)も、任意で社会保険の適用を受けられます。任意適用申請書を提出する必要があります。初回のみ手続きが必要です。
従業員(正社員)の社会保険加入要件
社会保険の適用事務所で働いている正社員、代表者、役員、使用期間中の人は社会保険の被保険者になる義務があります。
70歳になるまでは、厚生年金保険への加入義務があります。
従業員(パート)の社会保険加入要件
通常の労働者の1週間の所定労働時間または、1月の所定労働日数が4分の3未満である方のうち、以下のすべてに該当する場合は社会保険への加入義務があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金の月額が8万円以上
- 学生でない
捕捉|加入義務があるのに社会保険未加入だとどうなる?
加入義務があるにもかかわらず社会保険に加入しないと、加入要請や警告文章が届きます。
これらを無視すると立入検査をされたのちに、過去2年分の社会保険料を徴収されます(延滞金が発生)。さらに、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される恐れもあります。
とはいえ、加入要請や警告文章が届いた段階で対応をすれば、これまでの社会保険料を遡って請求されずにすみます。遅くとも警告文章が届いた段階で社会保険への加入をするべきでしょう。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きを進める流れ|以下の段取りで進めるとスムーズです
社会保険の加入手続きを進める際の段取りをご紹介します。
- 事業主(事業所)や従業員が社会保険に加入する義務があるか確認する
- 自力で手続きをするか外注をするか決める
- ご自身がどの届出を提出すればいいのか把握する
- 郵送、窓口持参、電子申請のどれで提出するかを決める
- (郵送、窓口持参の場合)届出を入手。必要事項を記入し、添付書類を用意する
- (電子申請の場合)届書作成プログラムを使い申請をする
- 新規適用届→被保険者資格取得届の順番で提出する
事業主(事業所)や従業員が社会保険に加入する義務があるか確認する
上述【立場別】社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入要件|加入義務があるのはこんな人!をご参考に、社会保険に加入する義務があるのかどうかを確認してください。
ご自身がどの届出を提出すればいいのか把握する
【立場別】社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入要件|加入義務があるのはこんな人!にて、立場別に対応するべき手続きを併せてご紹介しています。
自力で手続きをするか外注をするか決める
手続きを自力でやるのか外注するのかを決めましょう。
社会保険は加入して終わりではなく、従業員が育休を取ったり、退職したりする際など、給与や保険料に影響する出来事があるたびに各種手続きをしなければなりません。
手続きの種類の多さについては、以下の記事の目次をご覧いただくとイメージが湧きやすいかと思います。
さらに、それぞれの手続きには期限があることが多いので、手続きするのを忘れたまま期限をすぎていた、ということも起こりえます。
社会保険の手続きはいくら時間を使っても売上に直結しないので、社労士に外注して別の業務に着手するのもいいかもしれません。外注を検討される方は後述社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きで困ったときの相談先4つや以下の記事をご参考ください。
自力で手続きをされる方は引き続き当記事をご参考ください。
郵送、窓口持参、電子申請のどれで提出するかを決める
書類の提出方法を先に決めましょう。紙を提出する場合(郵送、窓口持参)と電子申請で提出する場合、手続き方法が異なるためです。
(郵送、窓口持参の場合)届出を入手。必要事項を記入し、添付書類を用意する
郵送、窓口持参で提出する場合は、後述法人・個人事業主がはじめて社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する際の手続き|入手先・必要書類・記入例以下を参考に手続きを進めましょう。
(電子申請の場合)届書作成プログラムを使い申請をする
電子申請(届書作成プログラム)を参考に電子申請用のツールをダウンロードしましょう。操作方法のマニュアルなど、電子申請に必要な各種資料をダウンロードしつつ、手続きを進めましょう。電子申請相談チャットも活用し、不明点を解消しましょう。
対応するべき手続きの内容は紙で提出する場合と同じなので、必要に応じて後述法人・個人事業主がはじめて社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する際の手続き|入手先・必要書類・記入例以下をご参考ください。
新規適用届→被保険者資格取得届の順番で提出する
社会保険の被保険者になる前に、社会保険の適用を受けている事業所になっている必要があります。新規適用届を出してから被保険者資格取得届を提出する準備を始めましょう。
法人・個人事業主がはじめて社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する際の手続き|入手先・必要書類・記入例
事業所が社会保険の適用を受けるための手続きには次の2つがあります。
- 【必須】法人・従業員を5人以上雇用する個人事業主が初めて社会保険の適用を受けるための手続き
- 【任意】上記以外の事業主が任意で社会保険の適用を受けるための手続き
法人・従業員を5人以上雇用する個人事業主が初めて社会保険の適用を受けるための手続き
社会保険の加入義務がある事業主の方は、以下の手続きをして社会保険の適用を受けましょう。この手続きを進めることで、事業主や従業員を社会保険の被保険者にする手続きを進められます。
手続き名 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 |
入手方法・入手先 | 新規適用届|日本年金機構 |
記入例 | 記入例|日本年金機構 |
添付書類・必要書類 | 法人登記簿謄本 法人番号指定通知書のコピー 個人事業主のみ:事業主の世帯全員の住民票 個人事業主のみ:代表者の公租公課の領収書1年分 |
提出先 | 会社がある地域を所轄する年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 会社設立から5日以内 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
上記以外の事業主が任意で社会保険の適用を受けるための手続き
社会保険の加入義務はないものの、社会保険の加入を希望する事業主の方は、以下の手続きをすることで社会保険への加入ができるようになります。
手続き名 | 健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書・同意書 |
入手方法・入手先 | 任意適用申請書|日本年金機構 |
記入例 | 記入例|日本年金機構 |
添付書類・必要書類 | (1)任意適用申請書 (2)任意適用同意書(従業員の2分の1以上の同意を得たことを証する書類) (3)事業主世帯全員の住民票(コピー不可) (4)公租公課の領収書(原則 1 年分)(コピー可) |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | – |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
従業員を社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる手続き|入手先・必要書類・記入例
従業員を社会保険の被保険者にする場合、1と2の手続きをしましょう。
- 従業員を社会保険の被保険者にするための手続き
- 被保険者に被扶養者がいる時の手続き
- 【補足】従業員を1人でも雇用する場合は労働保険(雇用保険・労災保険)への加入も必要
人を雇用する場合は従業員を労働保険の被保険者にしなければならないので、こちらも補足します。
従業員を社会保険の被保険者にするための手続き
手続き名 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 |
入手方法・入手先 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届|日本年金機構 |
記入例 | 記入例|日本年金機構 |
添付書類・必要書類 | 原則不要 60 歳以上の方が、退職後 1 日の間もなく再雇用された場合①と②両方又は③ ① 就業規則、退職辞令の写し(退職日の確認ができるものに限る) ② 雇用契約書の写し(継続して再雇用されたことが分かるものに限る) ③ 「退職日」及び「再雇用された日」に関する事業主の証明書 |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 資格取得日から5日以内 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
被保険者に被扶養者がいる時の手続き
被保険者にする従業員に扶養者がいる場合のみ、以下の手続きも必要です。
手続き名 | 健康保険被扶養者(異動)届 |
入手方法・入手先 | 健康保険被扶養者(異動)届|日本年金機構 |
記入例 | 被扶養者になる場合の記入例|日本年金機構 |
添付書類・必要書類 | 健康保険被扶養者(異動)届 |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出方法 | 郵送、窓口持参、電子申請 |
提出期限 | 事実発生から5日以内 |
詳細 ※手続きをする際に必ずご確認ください | 手続きの詳細説明 |
【補足】従業員を1人でも雇用する場合は労働保険(雇用保険・労災保険)への加入も必要
従業員を1人以上雇用する場合は、労働保険にも加入をしなければなりません。労働保険についても、事業所が適用を受けるための手続きをしたうえで、従業員を被保険者にする手続きをする必要があります。
労働保険の適用を受けるための手続きをする場合、業種によって書類の提出先が異なるので、間違えないように手続きを進める必要があります。詳細は以下の記事でご案内しています。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きで困ったときの相談先4つ
加入手続きが済めば終わりではありません。事業を継続しているとあらゆるタイミングで社会保険の手続きが発生します。社会保険手続きには期限があるものも多いので、忘れずに対応しなければなりません。
社会保険について相談できる先を知っておくだけで、不明点があったときにすぐ解決できます。
以下、社会保険の相談先4つをご紹介します。
- 社会保険労務士法人TSC|社会保険手続きを1年無料で外注できる
- 社会保険労務士相談ドットコム|社会保険手続きの外注先を一括見積もりできる
- 年金事務所|厚生年金保険の相談ができる
- 全国社会保険労務士会連合会|社労士に無料で相談ができる
なお、以下の記事では社会保険の相談先に加えて労働保険の相談先もご紹介しています。人を雇用する場合は労働保険の手続きも必要なので、こちらもご確認いただくとよいかと思います。
社会保険労務士法人TSC|社会保険手続きを1年無料で外注できる
と思った方は、最初から社会保険手続きを外注してしまうといいかもしれません。社会保険手続きにいくら時間をかけても売上が増えるわけではないので、忙しい経営者の方ほど賢く外注を活用されています。
社会保険労務士法人TSCには、社会保険手続きに加えて労務相談などを1年間無料で依頼し放題なので、人を雇用する前後に必要な手続きを抜け漏れなく処理できるような体制を構築できます。
【1年間無料サポート対象業務詳細】
- 顧問契約
- 労務相談
- 勤怠管理システム
- 給与計算事務
- 労働保険事務
- 社会保険事務
- 助成金アドバイス
- WEB明細システム
1年間無料で提供できる理由の1つは、経営の基盤が安定しているからです。
CACグループは1965年創業で55000件以上の顧客契約数があります。60年以上企業をサポートしてきた実績と経験があるので、業界や従業員規模を問わず安心して仕事を依頼できます。
詳細が気になった方は、以下をご確認ください。
社会保険労務士相談ドットコム|社会保険手続きの外注先を一括見積もりできる
当サイトの一括見積もり機能を使えば、依頼をするまでは完全無料で社労士に一括見積もりができます。ご依頼内容や従業員人数、細かいご要望などをご記入いただければ、一度問い合わせをするだけで複数の社労士から、自社の事情を把握したうえで提案が届きます。ご相談内容を具体的にご記入いただくほど具体的な提案を受けられますが、ざっくりと記入をしてweb面談や電話などで詳細を擦り合わせることもできます。
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日本年金機構|加入手続きに関する不明点を質問できる
加入手続きは自分で進めるので、不明点を都度質問できる相談先が知りたい
という方は、日本年金機構に相談をしましょう。当サイトでご紹介している社会保険加入手続きの情報は、日本年金機構の情報をもとにしています。
手続きの不明点を聞く先としては間違いないでしょう。
相談窓口は複数ありますが、以下の表に記入しているねんきん加入者ダイヤル(社会保険の加入に関する相談ができる)と電子申請相談チャットが最も目的と合致しているかと思います。
雇用者としてのご相談 (法人・個人事業主・人事労務担当者) | ○ |
被雇用者としてのご相談 | ○ |
電話 | ・ねんきん加入者ダイヤル(おすすめ) |
メール・フォーム | 電子申請相談チャット |
各都道府県の社労士会|社労士に無料で相談ができる
ちょっと相談をしてみたいだけ、なおかつどうしても社労士に相談をしたい場合は、各都道府県の社労士会を確認されてはいかがでしょうか。社労士会によっては、一定時間無料で社労士に相談できる相談窓口を設置していることもあります。
雇用者としてのご相談 (法人・個人事業主・人事労務担当者) | ○ |
被雇用者としてのご相談 | ○ |
電話 | 社労士会リスト |
メール・フォーム | – |
まとめ
社会保険の加入義務があるのがどんな人なのかをお伝えしたうえで、手続き進める段取りをご紹介しました。手続きを進める際の不明点を質問できる相談先や外注先をご紹介しましたので、随時ご参考いただき手続きを進めていただければ幸いです。