社会保険の加入条件を満たす場合、強制加入となりパートやアルバイトの方でも加入する必要性が出てきます。
特に会社の経営者や人事労務担当者であれば知っておきたい内容で、加入義務があるにもかかわらず従業員の社会保険が未加入だった場合、最悪のケースで罰金等の罰則を受ける可能性も出てきます。
社会保険が強制加入になる【事業所】の条件
社会保険の加入条件ですが、まず先に【事業所】ごとに加入義務の有無が決まり、その後各従業員で加入条件が違います。まずは、社会保険に加入しなくてはならない事業所についてご説明します。
先にお伝えすると、法人事業所の場合は従業員1名以上で強制加入となりますので、1人社長や役員しかいないような会社でも無い限り社会保険に加入しなければならないことになります。
加入義務がある事業所
- 従業員が1名以上の法人事業所
- 従業員が常時5名以上の個人事業所(法定16業種)
社会保険に強制加入となる事業所は『強制適用事業所』と呼ばれ、社会保険への加入が義務付けられます。
任意加入となる事業所
- 従業員が5名未満の個人事業所
- 法定16業種以外の個人事業所
上記の強制適用事業所に該当しない事業所でも社会保険に任意加入することができ、任意適用事業所と呼ばれます。
社会保険の加入条件がある【対象者】
上記の内容を元にした社会保険に加入すべき事業所の中でも、加入条件を満たしている従業員のみが社会保険に加入します。
簡単にまとめると、一般的に正社員と言われているフルタイムの従業員は基本的に加入条件を満たしていると言えます。一方、パートやアルバイトなどは加入条件があり、収入や労働時間などによって加入すべきか否かに分かれます。
年齢の条件
- 健康保険:75歳未満
- 厚生年金保険:70歳未満
まず、社会保険の加入には年齢の条件がありますが、こちらは70歳以上の高齢者になるためほとんどの従業員が加入条件を満たしています。
従業員500人以下の事業所の加入条件
- 週および月の所定労働時間が一般社員の4分の3以上
次に事業所の規模によって条件が変わりますが、1事業所の従業員が500人以下の場合は上記の労働時間以上働いている方は、パートやアルバイトの方でも加入条件を満たしています。
例えば、一般社員の労働時間が週40時間/月160時間だった場合、週30時間/月120時間以上働いていれば加入条件となります。
それなりに大きな工場などでも無い限り、1事業所で500名を超える従業員が雇用されていることも少ないですので、多くの会社でこちらの条件が当てはまるでしょう。
従業員501人以上の事業所の加入条件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が1年以上の見込み
- 月の賃金が8.8万円(年106万円)以上
- 学生ではない
従業員501名以上の事業所では、上記全ての条件を満たす場合に社会保険の加入条件を満たしたこととなります。
パートやアルバイトでも加入条件を満たしていれば加入する
上記の加入条件を満たせば、雇用形態は関係なく社会保険への加入の必要性が生じます。すでにお伝えしていますが、パートやアルバイトの方でも会社の社会保険に加入することは十分にあり得るのです。
もし、パートやアルバイトを理由に社会保険が未加入になっているのであれば(正社員なども同様)、会社に社会保険が未加入になっていることを報告・相談してみてください。後述しますが、労働者にとって社会保険に加入するメリットは多くあります。
一方、会社の使用者側の方は未加入による会社に対するリスクも出てきますので、少しでも早く社会保険加入の手続きを準備していってください。
社会保険に加入するメリットと未加入時のリスク
社会保険の加入条件を満たしていても、「まぁいいか」と、そのままにしている方はいませんか?社会保険の加入は労働者にとってメリットがありますし、会社にとって未加入を放置しておくリスクがあります。
こちらでは、社会保険に加入するメリットと未加入のリスクをご説明します。
社会保険に加入する【労働者】にとってのメリットとデメリット
労働者にとって社会に加入するメリットは大きいです。もし未加入であれば、加入に向けてまずは会社と相談されてください。
メリット
▼補償が手厚くなる
ここでの社会保険とは健康保険と厚生年金保険のことですが、加入することで補償が手厚くなります。特に厚生年金保険は受け取れる年金も国民年金より多くなります。
▼会社が保険料を折半してくれる
会社で社会保険に加入しなくても国民健康保険や国民年金に加入するケースがあり、その場合の保険料は全額自費ですが、会社で社会保険に加入すれば会社が保険料を折半してくれます。
結果的に支払う保険料は少なく済んで、補償は大きく受けられるようになります。
デメリット
▼手取りが減る
会社で社会保険に加入すると保険料が給与から引かれることになるので、手取りが下がるようになります。特に若い方は先の補償よりも目の前の手取りの方が大事に思えますが、長い目で見れば得していることもあります。
▼扶養から外れる場合がある
家族構成や配偶者などの収入にもよりますが、会社での社会保険の加入条件を満たすような収入がある場合には、家族からの扶養から外れてしまう場合もあります。
その場合、家庭規模で判断すれば社会保険料による支出が増えることが考えられますので、扶養から外れないように、労働時間や出勤日数などの調整をする必要があります。
【会社】にとっての社会保険に未加入時のリスク
一方、加入条件を満たす従業員を未加入にしたままにすると、会社にとってのリスクがあります。従業員の未加入が発覚した場合には、迅速に社労士などの専門家に相談しながら手続きをすすめていくようにしましょう。
未加入に対する罰則
「健康保険法第208条」では、加入すべき社会保険料に未加入の場合の罰則が設けられており、罰則は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
直ちに罰則を受ける可能性は低いのですが、指導や検査を経て改善がされないようであれば最終的に罰則を受けることもあるでしょう。
過去分の保険料を支払うリスクがある
社会保険の未加入が発覚した場合、過去2年分さかのぼって社会保険料を支払う必要性が出てきます。従業員が現在も在籍していたり所在が分かるようであれば従業員と折半で支払いますが、所在不明の場合には全額会社負担にもなり得ます。
社会的信用を失う
たまに『社会保険完備』というような会社のアピールをしている会社がありますが、そもそも加入の必要性がある場合の社会保険の未加入は会社にとっての法令違反になります。法令を守らない会社は、経営以前の問題で社会的信用も損ないます。
会社が行う社会保険の加入方法
社会保険の加入条件を満たす従業員がいる場合、会社が社会保険加入の手続きを行います。こちらでは、社会保険加入に必要は書類と方法についてご説明します。
健康保険への加入方法
健康保険は、全国健康保険協会以外にも企業や団体などで設立されている各健康保険組合があります。加入する健康保険によって手続きが違いますので、健康保険協会や保険組合に従ってください。
厚生年金保険への加入手方法
厚生年金保険への加入は、事業所を管轄する年金事務所に必要書類を提出します。
加入に必要な書類
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 被保険者資格取得届
- 被扶養者(異動)届※被保険者に扶養家族がいる場合
- 保険料口座振替納付(変更)申出書
厚生年金保険への加入は上記の書類が必要になります。また、必要に応じて以下の書類も準備しましょう。
対象 | 必要書類 |
法人 | 登記簿謄本 |
国/地方公共団体/法人 | 法人番号指定通知等の写し |
強制適用事業所の個人事業所 | 事業主世帯全員の住民票(原本) 事業所の賃貸契約書の写しなど |
任意適用事業所 | 任意適用申請書 従業員の任意適用同意書 事業主世帯全員の住民票 公租公課の領収証(1年分) |
社会保険の加入手続きは社労士に依頼できる
ここまでご説明したように、会社にとって社会保険の未加入はリスクですが、手続きは面倒になってきます。手続きの正確性を上げ手間を省くためには任せられる部分は社労士に任せてしまうことをおすすめします。
社会保険への手続き以外にも就業規則等の作成、助成金の申請代行、経営コンサルティングなども行ってくれる社労士がいますので、ぜひ一度相談してみてください。
経営者の方であれば、このような雑務に思考と時間を使うのではなく、会社の成長やサービス向上に時間と労力を使うべきですね。
社労士に相談・依頼できることは、おおまかに以下の3種類です。 手続きの外注:給与計算、労働・社会保険、勤怠管理、助成金 など 社内のルールに関する相談:従業員とのトラブルを未然に防ぐ仕組みづくり全般を相談可能 人事労務[…]
まとめ
社会保険は
- 【法人】従業員が1名以上
- 【個人事業所】従業員が常時5名以上
の場合には強制適用事業所となり加入義務が出てきます。
また、従業員単位では、
500名以下の事業所 | 501名以上の事業所 |
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の方が対象者となり、たとえアルバイトやパートの方でも加入条件を満たしていれば、加入しなくてはなりません。
労働者からしてみれば社会保険に加入するメリットも多いので、加入条件を満たしているにもかかわらず未加入であれば、まずは会社に直接相談してみてください。
会社からすれば、社会保険の加入条件を満たしている従業員の未加入はリスクしかありません。迅速に対応し加入手続きをすすめていきましょう。