キャリアアップ助成金正社員化コースとは、就業規則に基づいて、有期雇用や無期雇用の労働者を、正規雇用の労働者に転換した場合際に助成金が支給される制度です。
この記事では、助成金の支給を受けるための条件や手順などについてご説明します。
キャリアアップ助成金正社員化コースとは?
ここでは、キャリアアップ助成金正社員化コースの目的と給付額についてご説明します。
キャリアアップ助成金正社員化コースの目的
キャリアアップ助成金正社員化コースは、非正規雇用労働者を減らす目的の制度です。非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換する企業に対して返済不要な助成金が支給されるため、労働者にとって雇用の安定に、企業にとっては人材確保と利益率向上に繋がります。
キャリアアップ助成金正社員化コースの給付額
対象となる転換のパターンは次の3種類です。
- 有期雇用から正規雇用への転換
- 有期雇用から無期雇用への転換
- 無期雇用から正規雇用への転換
労働者1人あたりの給付額は…
給付額 | 給付額*1 | ||
有期から正規 | 中小企業 | 57万円 | 72万円 |
大企業 | 42万7,500円 | 54万円 | |
有期から無期 | 中小企業 | 28万5,000円 | 36万円 |
大企業 | 21万3,750円 | 27万円 | |
無期から正規 | 中小企業 | 28万5,000円 | 36万円 |
大企業 | 21万3,750円 | 27万円 |
*1 生産性要件を満たしている場合の給付額
生産性要件を満たすには、申請直近の決済と3年前の決済を比較し、生産性が6%向上している必要があります。
生産性の計算式は次の通りです。
(生業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷雇用保険被保険者数 |
なお、1年の支給申請上限は、1事業所あたり15人までです。
キャリアアップ助成金正社員化コースの対象労働者
以下の全てに当てはまる労働者が正社員化コースの対象となります。
- 以下のいずれかに当てはまる労働者であること
- 支給対象事業主に通算で6ヶ月以上雇用されている有期契約労働者
- 支給対象事業主に6ヶ月以上雇用されている無期雇用労働者
- 派遣先の事業所での業務に6ヶ月以上継続して従事している派遣労働者
- 支給対象事業主による有期実習型訓練を修了した有期契約労働者
- 正社員として雇用することを前提に雇用された有期契約労働者等ではないこと
- 以下の両方またはどちらかに該当する労働者ではないこと
- 有期雇用から正規雇用に転換される場合、正規雇用になる日の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所や、関連会社で正社員として雇用されていた者、または取締役、監査役などの役員であった者
- 無期雇用に転換または雇用される場合、転換日または雇用日の前日から3年以内に、当該事業主の事業所や関連会社で正規雇用または無期雇用として雇用されていた者、または取締役、監査役などの役員であった者
- 事業主や取締役の3親等以内の親族ではないこと
- 短時間正社員に転換される場合は、転換後に所定労働時間及び所定労働日数を超えた勤務をしない労働者であること
- 『障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律施行規則』における就労継続支援A型の事業所の事業者以外であること。
- 支給申請日に離職していないこと
- 支給申請日に、正規雇用から有期契約または無期契約、無期契約から有期契約への転換が予定されていない労働者であること
- 定年制がある場合、定年するまでの期間が転換または直接雇用日から1年以上ある労働者であること
- 支給対象事業主や関係性の深い事業主の事業所ですでに定年した労働者ではないこと
キャリアアップ助成金正社員化コースの対象事業主
以下の全てに該当する事業主が給付対象となります。
- 有期雇用労働者を正規雇用または無期雇用に転換する制度について、就業規則等に定めている事業主
- 就業規則に基づいて、有期雇用労働者を正規雇用もしくは無期雇用に転換した事業主、または無期雇用労働者を正規雇用に転換した事業主
- 2で正規転換した労働者を6ヶ月以上雇用し、賃金を支払ったこと
- 多様な正規雇用への転換をする場合は、転換日に当該労働者以外に正規雇用労働者を雇用していた事業主
- 支給申請日に当該制度を継続して運用している事業主
- 転換後6ヶ月の賃金を、転換前6ヶ月の賃金より5%以上増額させている事業主
- 転換後の給与を転換前の給与と比べて低下させていない事業主
- 転換日前日から起算して、6ヶ月から1年を経過する間に、雇用保険被保険者に対して会社都合による解雇をしていない事業主
- 転換日前日から起算して、6ヶ月から1年を経過する間に、雇用保険法第23条第1項における特定受給資格者となる離職理由のうち、離職区分1Aまたは3Aにあたる離職理由による離職者として、同法第13条に規定する受給資格の決定がされた数を、当該事業所における当該転換を行った日における雇用保険被保険者の数で割った割合が6%を超えている事業主以外
- 対象労働者の同意に基づいて雇用転換制度を運用している事業主
- 転換日以降、対象労働者を雇用保険に加入させている事業主
- (社会保険の適用要件を満たす事業所の場合)転換日以降、対象労働者を社会保険に加入させている事業主
(社会保険の適用要件を満たさない事業所の場合)正規転換した労働者を社会保険の要件を満たす労働条件で雇用している事業主
- 母子家庭の母または父子家庭の父の転換に関する支給額の適用を受ける場合は、転換日に母子家庭の母または父子家庭の父の有期雇用労働者を転換した事業主であること
- 若者雇用促進法の認定事業主で、35歳未満の者の転換に関する支給額の適用を受ける場合は、転換日より前に若者雇用促進法第15条の認定を受けていて、転換日において35歳未満の有期労働者を転換したこと。また、支給申請日も若者雇用促進法の認定事業主であること。
- 勤務地限定正社員制度または職務限定正社員制度に係る加算を受ける場合は、キャリ アアップ計画書に記載された期間中に、勤務地限定正社員制度または職務限定正社員制 度を規定し、有期契約労働者等を当該雇用区分に転換した事業主。
- (生産性要件を満たした場合の支給額の適用を受ける場合)生産性要件を満たした事業 主であること。
参考:「キャリアアップ助成金パンフレット」
キャリアアップ助成金正社員化コースを受給するまでの流れ
助成金の申請をしてから支給を受けるまでの流れは次の通りです。
- キャリアアップ計画の作成と提出
- 就業規則等の改定
- 就業規則等に基づく正社員等への転換
- 転換後6ヶ月の賃金支払い
キャリアアップ計画の作成と提出
キャリアアップを効果的に進めるために、対象労働者や目標、目標達成のための取り組みを記入します。キャリアアップ管理者を決定し、3年以上5年以内の計画を立てます。
就業規則等の改定
正規雇用転換の規定がない場合は、正規雇用への転換制度について、就業規則や労働協約に規定した上で、労働基準監督署に届け出をする必要があります。
就業規則等に基づく正社員等への転換
就業規則に則り、正社員への転換を行います。雇用契約書や労働条件通知書を交付し、転換後の労働条件について当該労働者に説明をしましょう。なお、転換後の賃金は転換前よりも5%以上増額されている必要があります。
転換後6ヶ月の賃金支払い
転換後、6ヶ月間賃金を支払い続ける必要があります。6ヶ月目の賃金を支払った翌日から2ヶ月以内に、支給の申請をしましょう。
まとめ
例えば中小企業で有期雇用から正規雇用への転換がなされれば、対象労働者1人あたり57万円が給付されます。優秀な有期雇用の労働者の定着を図る際は、ぜひ活用したい制度です。
なお、助成金の申請手続きは複雑であるため、社内で対応する人材を確保できない場合は、社労士への相談をご検討ください。