
賃上げをすることが決まった。うちも使えそうな助成金や補助金はないだろうか?
この記事では、数ある助成金や補助金の中から、賃上げをする企業が使えるものをピックアップしてご紹介します。
助成金の支給要件やスケジュールのような詳細は最低限に、何をするといくら受給できるのかを重点的にご説明します。
良し悪しを判断する基準にするため、A~Cでおすすめ度をつけています。賃上げをする趣旨にあっていて、支給要件を満たせる企業が多そうな助成金ほど高い評価にしています。C評価の助成金は用途が限られているだけなので、用途があっている企業にはおすすめです。
賃上げをする際は助成金を受給できる可能性があるので、支給要件を満たせそうなものがあるかどうかぜひご確認ください。
- 1 賃上げ関連の助成金・補助金を獲得する際の前提知識
- 2 業務改善助成金|設備投資や人材育成にかかった費用の9/10程度(最大600万円)が支給される
- 3 キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)|有期雇用労働者の賃上げをする企業におすすめ
- 4 働き方改革推進支援助成金|残業削減や有給取得促進のような、労働環境促進を図る企業をサポートする助成金
- 5 特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)|就職困難な人を成長分野の業務に従事させた場合に助成
- 6 人材開発等支援助成金(人への投資促進コース)|訓練費用の45%~75%を助成
- 7 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)|出向後の賃金を5%以上上昇させると助成
- 8 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)|45歳以上の労働者を前職より5%以上高い賃金で雇用すると100万円を助成
- 9 事業再構築補助金(最低賃金枠)|最低賃金引上げで人件費支払いが厳しくなった企業を補助
- 10 ものづくり補助金|試作品やサービス開発などをするための設備投資を支援する趣旨の補助金
- 11 賃上げで助成金を申請する前に社労士に相談すべき7つの理由
- 12 まとめ
賃上げ関連の助成金・補助金を獲得する際の前提知識
助成金の具体的な話をする前に、前提知識として把握しておくと理解が楽になる事項をご説明します。既に知っている内容であれば読み飛ばしていただいても問題ありません。
頻出用語解説|あらかじめ理解しておくと調べ物がスムーズです
助成金について調べていると、普段は使わない単語が出てくることがあります。正確な意味を知っておくとスムーズに説明を読みやすくなります。
助成率・補助率
助成金や補助金の金額を計算する際に用いる割合。助成・補助の対象になる経費(設備投資や訓練などに使ったお金)に助成率・補助率をかけることで、助成金や補助金を計算できる。
例)設備投資100万円、助成率60%の場合の助成金額は60万円
事業場
人が集まって継続的に仕事をする場所のこと。工場、店舗、支店など。助成金の申請をする際は、法人単位ではなく、事業所単位で申請することも多いので、誤解しないように注意。本社と支店が5つある法人の場合、事業所の数は5個あることになる。それぞれの事業所ごとに助成金を申請できる。
事業場内最低賃金
事業場の中で最も低い時給のことです。
中小事業主
いくつかの助成金は中小事業主を支給の対象にしています。中小事業主とは、以下の1または2のいずれかを満たす事業主のことです。
業種 | 1.資本または出資額 | 2.常時使用する労働者 |
小売業(飲食店含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
継続的な売上・利益率をUPのポイントは、企業の目的と支給要件が似ている助成金を選ぶこと
助成金をもらうために支給要件を満たす取り組みをする考えではなく、従業員の賃上げなど企業としてやるべきことがあって、その目的に対して使える助成金がないか探す手順で進めた方がいいかもしれません。
というのも、助成金は支給要件にある取り組みをした際にかかる費用の一部を助成するものです。取り組みにかかった経費以上に儲かる訳ではないので、単に資金が必要な場合は別の資金調達方法も検討した方がいいかもしれません。
一方、従業員のスキルアップや、売上拡大のための設備投資などを予定している企業の場合は、元々必要だったことをやるだけで支給要件を満たせることがあります。このような場合は助成金を活用して投資を進めていくと経費の負担を軽減できるので、満足感を得やすくなります。
助成金の申請が大変だと思ったら、社労士に丸投げすると楽です。

いざ申請を進めようと思うと、就業規則への追記や訓練内容の選定など、やることが多くてなかなか着手できない
助成金の申請作業は慣れていないと大変に感じるかもしれません。
申請をしないことにはもらえる助成金ももらえないので、手続きがなかなか進まない場合は社労士に任せてしまうのも1つです。
社労士に相談するメリットは賃上げで助成金を申請する前に社労士に相談すべき7つの理由にて詳しく後述します。
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- 助成金申請の社労士費用を一括見積もり(申請を丸投げしたい方向け)
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助成金申請の社労士費用を一括見積もり(申請を丸投げしたい方向け)
社労士事務所ごとに助成金の取り扱いについて次のような違いがあります。
- 助成金を積極的に取り扱った経験があるか
- どの助成金をおすすめするのか
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業務改善助成金|設備投資や人材育成にかかった費用の9/10程度(最大600万円)が支給される
売上UPにつながる設備投資をしつつ、賃上げをした際に利用できる助成金です。
おすすめ度:A|設備投資をすれば売上・利益率が上がる可能性が高い場合におすすめ
以下2点を行った企業に、最大で600万円が助成されます。
- 生産性向上のための設備投資をする(機械設備、コンサルティング、人材育成・教育訓練)
- 事業場内最低賃金を引き上げる
(助成の対象は、これから実施する賃上げや設備投資)
単に賃上げをするだけではなく、良くも悪くも生産性を上げるための設備や人材育成にコストをかけたうえで賃上げをする必要があります。
「この設備があれば売り上げが上がるだろうな」という具体的なイメージが湧いている企業であれば利用しやすいでしょう。
助成の対象になる経費の使い道
助成の対象になるお金の使い道は次のとおりです。
引用元:業務改善助成金|厚生労働省
業務改善助成金を受給するためのポイントは、自社にとって欲しい設備や人材育成が、助成の対象になるかどうか見極めることです。
上記の表以外の設備投資が受給の対象になるか判断するには、最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業 |厚生労働省の生産性向上のヒント集を参考にするといいでしょう。社労士に相談をするとより安心感があります。
助成金額の計算方法
設備投資にかかった費用に助成率をかけた金額と助成上限額のうち、低い方
助成率
事業場内最低賃金 (引き上げ前) | 助成率 生産性要件を満たせば()内の率を適用 |
900円未満 | 9/10 |
900円以上950円未満 | 4/5(9/10) |
950円以上 | 3/4(4/5) |
助成上限額
引用元:業務改善助成金|厚生労働省
対象企業
以下の3点に該当する企業が助成の対象です。
- 中小企業・小規模事業者であること
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
各都道府県の最低賃金と、事業場の最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象です。事業場ごとに最低賃金が異なる場合や、事業場が複数の都道府県にある場合は、各都道府県と当該事業場の最低賃金をそれぞれ確認する必要があります。
解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金 (業務改善助成金) 申請マニュアル 厚生労働省労にある不交付事由に該当すると助成金を受け取れません。不交付事由には例えば以下のようなものがあります。
- 所定労働時間の短縮
- 所定労働日の減少
- 同じ助成対象に対して他の助成金や補助金を受けとっている
- 一定期間内に労働関連法令に違反した ほか
詳細ページ
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)|有期雇用労働者の賃上げをする企業におすすめ
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップと雇用安定を目的とする助成金です。キャリアアップのための取り組みの内容に応じて複数のコースが用意されています。賃上げをすることを前提に考えると、賃金規定等改定コースが最も趣旨にあっているかもしれません。
賃金規定等改定コースの対象になるのは非正規雇用労働者なので、非正規雇用労働者の賃上げをする企業にはおすすめです。
おすすめ度:A|賃金を5%引き上げると1人あたり6万5,000円が支給される
非正規雇用労働者がキャリアアップするための取り組みをしつつ、賃金を3%以上上げると助成の対象になります。
長い目で見ると賃上げをした分の賃金以上の金額の助成金が支給される訳ではないので、非正規雇用労働者の賃上げを実施することが決まっている企業にはおすすめです。
賃上げによる人件費増加分に対して、どの程度の助成がされるのか概算をしてみましょう。例えば、月収20万円の人の賃金を5%あげた場合は、1人あたり6万5,000円が支給されます。20万円の5%は1万円なので、賃上げ分の金額6ヶ月分が支給される計算になります。人件費率を高くしないためには、助成金だけを当てにするのではなく、対象労働者の生産性を上げるようなキャリアアップ計画を考えることが必須です。
賃上げをした労働者1人あたりの助成金額(1事業場あたり100人が上限)
賃金引き上げ率 | ||
企業規模 | 3%以上5%未満 | 5%以上 |
中小企業 | 5万円 | 6万5,000円 |
大企業 | 3万3,000円 | 4万3,000円 |
受給要件
- キャリアアップ計画の作成・提出
- 賃金規定等の適用
- 賃金アップ
キャリアアップ計画の作成・提出
賃金規定を改定する前日までに、キャリアアップ計画を最寄りの労働局に提出しましょう。キャリアアップ計画は以下のページでダウンロードできます。
申請様式のダウンロード(キャリアアップ助成金)(令和4年4月1日から令和4年12月1日の取組に係る様式)
賃金規定等の適用
就業規則や賃金規定に、有期雇用労働者の基本給について定めている必要があります。
賃金アップ
賃金規定等で有期雇用労働者の賃金を3%以上増額改定して、6ヶ月分の賃金を支給する必要があります。
詳細ページ
「キャリアアップ助成金」を活用して – 従業員の賃金アップを図りませんか?
働き方改革推進支援助成金|残業削減や有給取得促進のような、労働環境促進を図る企業をサポートする助成金
時間外労働の削減や有給取得の促進のような環境整備をする企業向けの助成金です。8つの取り組みと3つの成果目標の中から好きなものを選んで実施できるので、労働環境の改善を測っている段階の企業であれば、助成金を得られる見込みが高いかもしれません。
おすすめ度:B|賃上げで助成金が最大480万円加算される
3%以上の賃上げをすると助成金額が加算されるものの、残業の削減や有給休暇取得の促進のような、慎重にルールを決めないと売上や利益率を損いかねない課題に着手しなければなりません。
働き方をよりクリーンにしなければならない段階の企業にはおすすめです。
支給対象になる取り組み
以下のいずれか一つを実施する必要があります。
・労務管理担当者に対する研修
・労働者に対する研修、周知・啓発
・外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
・就業規則・労使協定等の作成・変更
・人材確保に向けた取組
・労務管理用ソフトウェアの導入・更新
・労務管理用機器の導入・更新
・デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
・労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
成果目標の設定
以下の1つを選んで十指する必要があります。実施する必要があります。
・全ての対象事業場において、令和5年度又は令和6年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと
・全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること。
・全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること
上記の成果目標に加えて、対象労働者の賃金額を3%以上引上げると、助成金が加算されます。
助成金額
成果目標1の上限額
現行の36協定で定められている時間外労働時間を次のとおり引き下げると助成を得られます。
現在の時間外労働時間(36協定で設定しているもの) | ||
変更後の時間外労働時間 | 月80時間超 | 月60時間超 |
月60時間以下 | 200万円 | 150万円 |
月60時間を超え、月80時間以下 | 100万円 | ー |
成果目標2・3の上限額:25万円
賃上げ実施による加算金額
労働者数が30人を超える中小企業事業主の場合
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
3%以上引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人当たり5万円 |
(上限150万円) | ||||
5%以上引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円 |
(上限240万円) |
労働者数が30人以下の中小企業事業主の場合
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
3%以上引き上げ | 30万円 | 60万円 | 100万円 | 1人当たり10万円 |
(上限300万円) | ||||
5%以上引き上げ | 48万円 | 96万円 | 160万円 | 1人当たり16万円 |
(上限480万円) |
支給要件
以下3つに該当する中小企業事業主が助成の対象です。
・労働者災害補償保険の適用事業主であること。
・交付申請時点で、「成果目標」1から3の設定に向けた条件を満たしていること。
・全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。
詳細ページ
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース) |厚生労働省
特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)|就職困難な人を成長分野の業務に従事させた場合に助成
就職が困難な人を未経験者として採用して、成長分野等の職種に従事させると助成を得られます。具体的には、以下の取り組みをする必要があります。
- 未経験の職種への就職を希望する就職が困難な方を雇用する
- 成長分野等の業務(詳細後述)に関する職種で採用する
- 助成金を活用した訓練を受けさせて、訓練内容と同種の職種に従事させる
- 3年以内に雇用時の賃金と比較して5%以上賃上げをする
おすすめ度:C|賃上げ実施で助成金額が通常の1.5倍に
既に雇用している労働者の賃上げをすることが主な目的であれば、この助成金は適していません。
おすすめ度がCである理由は次のとおりです。
- 令和4年12月2日以降に採用した労働者が拡充の対象である(既に雇用している労働者への賃上げのサポートに使うには不向き)
- 未経験者を育てられる環境と余裕がある企業でなければ手を出しにくい(採用と教育、人件費を回収できるレベルに未経験者を育てるには時間がかかる)
中小企業よりも、未経験者を育てる仕組みが中堅〜大企業の方が利用しやすい印象です。例えば、従業員を43.5人以上雇用している事業主には障がい者を1人以上雇用することが義務付けられるので、助成金を使う必然性が高くなります。
助成金額は中小事業主の場合で90万円~360万円
採用する人 | 助成額 ()内は大企業 | 支払方法 |
母子家庭の母 60歳以上の方 生活保護受給者等 ウクライナ避難民 など | 90万円(75万円) 短時間:60万円(45万円) | 45万円(37.5万円)×2期 短時間:30万円(22.5万円)×2期 |
就職氷河期世代 | 90万円(75万円) | 45万円(37.5万円)×2期 |
身体・知的障害者 発達障害者 難治性疾患患者 | 180万円(75万円) 短時間:120万円(45万円) | 45万円×4期(37.5万円×2期) 短時間:30万円×4期(22.5万円×2期) |
重度障害者 45歳以上の障害者 精神障害者 | 360万円(150万円) 短時間:120万円(45万円) | 60万円×6期(50万円×3期) 短時間:30万円×4期(22.5万円×2期) |
短時間:1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
支給要件
①~④のすべてに該当する事業主です。
① 対象労働者種別に対応する特定求職者雇用開発助成金の他のコースの支給要件をすべて満たすこと。
② 対象労働者を、次のいずれかの成長分野の業務に従事させる事業主であること。
・デジタル化関係業務 ・グリーン化、カーボンニュートラル化関係業務
③ 対象労働者に対して、雇用管理改善または職業能力開発に関する取り組みを行うこと。
④ 2と3についての報告書を提出すること。
対象労働者種別に対応する特定求職者雇用開発助成金の他のコースの支給要件をすべて満たすこと。
特定求職者雇用開発助成金には、採用する労働者の状況に応じて以下4つのコースがあります。該当するコースの支給要件を満たす必要があります。
コース | 採用する労働者 |
特定就職困難者コース | 障害者、60歳以上の者、母子家庭の母等 等 |
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | 発達障害者、難治性疾患患者 |
就職氷河期世代安定雇用実現コース | 就職氷河期世代の者 |
生活保護受給者等雇用開発コース | 生活保護受給者、生活困窮者 |
対象労働者を、次のいずれかの成長分野の業務に従事させる事業主であること。
以下の職種に該当するように人を雇用する必要があります。
対象労働者に対して、雇用管理改善または職業能力開発に関する取り組みを行うこと。
以下の職業能力開発を、最後の支給対象期の末日までの行う必要があります。
・1コースの実訓練時間数等が50時間以上※の訓練
※ eラーニング・通信制による訓練の場合は、標準学習時間が50時間以上または標準学習期間が3月以上
・ 1以外(50時間未満)の次の訓練
・人材育成支援コース(有期実習型訓練)
・人への投資促進コース (高度デジタル人材等訓練)
・事業展開等リスキリング支援コース
・特定訓練コース(労働生産性向上訓練、熟練技能育成・承継訓練)
・特別育成訓練コース(中長期的キャリア形成訓練、有期実習型訓練)
2と3についての報告書を提出すること。
支給申請書ダウンロードより報告書をダウンロード・記入して提出しましょう。
賃金引き上げで助成金が追加されるための要件
賃上げ計画の期間内(最大3年)に、雇用をした時と比較して月収を5%以上引き上げると助成を得られます。基本給を5%以上上げる必要があるので、残業代や手当による賃金増加は対象外です。
詳細ページ
人材開発等支援助成金(人への投資促進コース)|訓練費用の45%~75%を助成
労働者のスキルアップのために訓練を受けさせると、かかった費用の45%~75%程度にあたる金額が助成されます。
人材開発等支援助成金には複数のコースがあるので、従業員の訓練を予定している方は他のコースもご確認いただくと自社にあったものが見つかるかもしれません。ここでは、助成率が令和4年4月より引き上げられた、人への投資促進コースをご紹介します。
おすすめ度:C|訓練の費用が高額な場合は有力な選択肢に
賃上げが支給要件ではないため、賃上げをすることが主な目的であると、どの企業にもおすすめできるわけではないのでおすすめ度はCです。ただ、一定以上の賃上げをすると助成率が15%加算されるので、従業員への訓練も賃上げも想定している企業にはおすすめです。
おすすめ度がCでもご紹介する理由は次の3点です。
- 助成金額が引き上げられたので、今申請をするならお得感がある
- 労働者の生産性が上がれば賃上げした分以上の売上を継続的に期待できる
- 訓練の金額が高くなる場合は賃上げに対する助成金よりも助成金額が高くなることもあり得る
【コース別助成率】どの程度助成率が引き上げられたのか?
訓練の内容別に複数のコースがあります。令和4年4月より、次のとおり助成率が引き上げられています。()内は賃金要件等を満たした場合に追加される助成率。
高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練 :高度情報通信技術資格や大学入学などをすると助成
変更前 | 変更後 |
45% | 75% |
情報技術分野認定実習併用職業訓練:IT分野の未経験者を即戦力にするための訓練を受けると助成
変更前 | 変更後 |
45% | 60%(+15%) |
定額制訓練:サブスク型研修を受けた場合に助成
変更前 | 変更後 | |
中小企業 | 45% | 60%(+15%) |
大企業 | 30% | 45%(+15%) |
自発的職業能力開発訓練:労働者が自発的に受講した訓練の費用を助成
変更前 | 変更後 |
30% | 45%(+15%) |
上限額の引き上げ
変更前 | 変更後 | |
人への投資促進コース | 1,500万円 | 2,500万円 |
自発的職業能力開発訓練 | 200万円 | 300万円 |
賃上げをすれば、15%程度助成金が追加される
賃金要件または資格等手当要件を満たした上で別途申請をすると、15%程度助成金が追加されます。
賃金要件
対象労働者の月給(基本給・手当)を訓練終了日の翌日から1年以内に5%以上引き上げること
資格等手当要件
訓練終了日の翌日から1年以内に資格等手当を支払い、賃金を3%以上増加させること。
資格等手当について、就業規則、労働協約、労働契約等に規定したうえで支払いをする必要があります。
支給要件
コースごとに支給要件が定められています。どんな訓練をどんな労働者に受けさせればいいのかが詳細に定められています。コースが多いため全てご紹介すると説明が長くなり過ぎるので、この助成金にご興味がある方は以下のページより支給要件をご確認ください。
詳細:人材開発支援助成金人への投資促進コースのご案内(詳細版)
詳細ページ
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)|出向後の賃金を5%以上上昇させると助成
労働者に新たなスキルを習得させる目的で、企業に籍を置いたまま出向をさせるともらえる助成金です。企業に復帰した時の賃金を出向前より5%上げると助成を得られます。
おすすめ度:C|普段から出向が多い企業であれば利用しやすい
従業員のスキルアップを主な目的に出向をさせなければいけないので、賃上げによる人件費負担を和らげる目的であれば、多少使いにくい印象です。
助成金額
助成率 | 中小企業:2/3 中小企業以外:1/2 |
助成額 | 以下2点の低い方に助成率をかけた金額が助成されます。 1.出向労働者の出向中の賃金のうち出向元が負担する額 2.出向労働者の出向前の賃金の1/2の額 ※最長1年まで |
上限額 | 1人1日あたり8,490円 1事業所1年度あたり1,000万円まで |
主な支給要件
- 労働者のスキルアップを目的として実施すること
- 出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことを前提であること
- 労働者の出向復帰後6か月間の各月の賃金を出向前賃金と比較していずれも5%以上上昇させること
なお、企業グループ内の出向は助成の対象になりません。
割と細かく支給要件が設定されているので、ご興味がある方は以下より詳細をご確認ください。
詳細ページ
産業雇用安定助成金ガイドブックスキルアップ支援コース|厚生労働省
中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)|45歳以上の労働者を前職より5%以上高い賃金で雇用すると100万円を助成
中途採用を強化した企業に対して支払われる助成金です。賃上げとの関連性がある中途採用拡大コースをご紹介します。
おすすめ度:C|基本的にはこれから中途採用する労働者が対象になるため、既存労働者の賃上げには向かない
賃上げへの助成に使う目的であれば、あまりおすすめではありません。理由は次の2点です。
- 中途採用計画の期間中に採用した労働者が対象になるので、既存の労働者への賃上げには使えない
- 助成対象の労働者は45歳以上の労働者である
前職よりも高い給与で採用をしている企業であれば相性がいいかもしれません。
助成金額
45歳以上の中途採用率を拡大するにあたって、以下3を満たすと100万円が助成されます。
・中途採用率を20ポイント以上上昇させた
・うち45歳以上の労働者で10ポイント(45歳以上中途採用率拡大目標値)以上上昇させた
・当該45歳以上の労働者全員の賃金を前職と比べて5%以上上昇させた
支給要件
中途採用の対象になる労働者について、細かく要件が決められています。長くなってしまうので説明は割愛します。ご興味がある方は以下より支給要件をご確認ください。
詳細ページ
事業再構築補助金(最低賃金枠)|最低賃金引上げで人件費支払いが厳しくなった企業を補助
新しい分野に事業を展開したり、事業を再編したりする際に使える補助金です。目的別に複数の枠があります。今回は賃上げと最も関連性が高い最低賃金枠をご紹介します。この枠は、最低賃金の引上げによって、労働者に払う賃金の確保が難しくなった企業をサポートする目的の枠です。
他にも、以下の枠でも賃上げをすると補助率が高くなります。該当する業種への進出を検討している方は詳しく調べてみるといいかもしれません。
- 成長枠:市場規模が10%以上拡大する業種・業態への転換を支援
- グリーン成長枠:クリーンエネルギーのような14の重点分野に取り組む企業が対象
おすすめ度:A|最低賃金で人を雇用している企業には有力な選択肢
賃上げをするかどうかは任意ではありますが、最低賃金が引き上げられた場合、最低賃金で雇用していた人の賃金を必ず引き上げなければなりません。最低賃金以下の支払いしかしなかった場合は、最低賃金法40条違反で50万円以下の罰金に処される恐れがあるためです。
最低賃金が引き上げられた時の賃上げは強制力があるので、補助金を使う必然性が高くなるでしょう。
補助金額
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
5人以下 | 500万円 | 【中小企業】3/4 【中堅企業】2/3 |
6~20人 | 1,000万円 | |
21人以上 | 1,500万円 |
支給要件
1.2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019~2021年と比較しての同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
2.2022年10月から2023年8月までの間で、3か月以上最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること
詳細ページ
事業再構築補助金令和4年度第二次補正予算の概要|経済産業省
ものづくり補助金|試作品やサービス開発などをするための設備投資を支援する趣旨の補助金
新製品や新サービスを開発するための設備投資に使う経費を補助するための補助金です。適切な設備を選べれば売上UPにつながるので、賃上げをした分の人件費以上の金額を継続的に生み出せる見込みがあります。
おすすめ度:B|新製品・新サービスをリリースするための設備投資を考えている企業におすすめ
設備投資が必要なので、人件費負担が大きくて苦しんでいる企業には設備投資が支給要件ではない事業再構築補助金(最低賃金枠)の方が手を出しやすいかもしれません。新規のサービスや製品を作って売上UPを目指す企業にはおすすめです。
補助金額
省力化枠に申請をした場合は、以下の金額の補助金が支給されることがあります。枠によって補助金額が異なるので、ご興味を持った方は別途調べてみてください。
従業員数 | 補助金額 ()内は大幅賃上げに取り組んだ場合に支給 |
5人以下 | 100万円~750万円 (上限から最大250万円) |
6~20人 | 100万円~1,500万円 (上限から最大500万円) |
21~50人 | 100万円~3,000万円 (上限から最大1,000万円) |
51~99人 | 100万円~5,000万円 (上限から最大1,500万円) |
100人以上 | 100万円~8,000万円 (上限から最大2,000万円) |
補助率
補助金額 | ||
企業規模 | 1,500万円まで | 1,500万円超 |
中小企業 | 1/2 | 1/3 |
小規模企業者 小規模事業者 再生事業者 | 2/3 | 1/3 |
支給要件
以下3点を満たす3~5年の事業計画書を作成し、実行する必要があります。
- 付加価値額 年平均成長率+3%以上増加
- 給与支給総額 年平均成長率+1.5%以上増加
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
詳細ページ
公募要領について|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト
賃上げで助成金を申請する前に社労士に相談すべき7つの理由

賃上げをする際に使えそうな助成金だけでもこんなにあるのか。最も高額な助成を得るために、自社の場合はどの助成金に申請をすればいいのだろうか?
いざ助成金の申請をしようと思うと、調べても解決できない疑問が生まれたり、手続きがなかなか進まなかったりすることがあるかもしれません。
以下、助成金の申請について社労士に相談したり、任せたりするメリットを7つご紹介します。
- リスクが少ない賃上げのしかたを相談できる
- 自社が受給できそうな助成金がわかる
- 助成金の支給要件を本当に満たしているか確かめられる
- 申請手続きを進められる
- 申し込み期間に間に合う助成金の申請を進められる(目当ての助成金の申し込み期間が終了していることもある)
- 段取りのミスなどで締め切りに遅れるリスクを減らせる
- 成果報酬であることが多く、費用倒れしにくい
リスクが少ない賃上げのしかたを相談できる
どの労働者の賃金を、どんな基準に基づいて、いくらアップさせるかを現段階でイメージされていますでしょうか?
賃上げをする際は例えば次のようなリスクがあります。
- 曖昧なルールに基づいて昇給をしてしまうと現場に不公平感が生まれてやる気をなくす従業員が現れるかもしれない
- 一度決めたルールや賃金は後から変更しにくい(不利益変更にあたり、従業員の合意がないと変更できない恐れがある)
- 昇給のルールを構築すること自体が大変
- 助成金の支給要件を満たす賃上げにはならず、人件費負担だけが増えてしまった
助成金の申請をする際は、賃上げ以外にもルールを決めなければいけないことがあります。社労士に相談しながらルールを決めることで、法令遵守をしつつ利益を損なわないような落とし所を探れます。
自社が受給できそうな助成金がわかる
社労士に相談をして、自社の状況や意向を伝えることで、どの助成金が自社に一番あっているのかがわかります。上記でお伝えしたとおり、助成金にはいくつもの種類やコースがあるので、今いいなと思っている助成金よりも、もしかしたらより高額な助成を目指せる助成金があるかもしれません。
助成の対象になる労働者が同じ場合、1種類の助成金しか受給できないことがあるので、自社にとって一番いい助成金を選びたいところです。
助成金の支給要件を本当に満たしているか確かめられる
本当に助成金の支給要件を満たせているのか心配になることもあるかもしれません。
厚生労働省のページを見れば詳しい支給要件が書いてあるものの、例えば自社が目をつけている設備投資や訓練が、支給対象になるかどうか、確証を持ちにくいことがあります。
社労士に相談をすることで、自社が考えているお金の使い道や取り組みが支給要件を満たすかどうかを確認できます。
申請手続きを進められる

助成金の話はよく会議で話題にはなるが、実際に助成金の申請を進めるとなると腰が重くなってしまいなかなか誰がいつまでにやるのか決まらない。
自社にぴったりな助成金を見極めたうえで支給要件を満たそうとすると、厚生労働省の説明だけではわからないことがあったり、就業規則への追記に迷ったり、手続きを進めるのが面倒だったりと数々の困難に襲われた方もいらっしゃるかもしれません。
助成金を得るには通常業務をこなしながら申請をしなければいけないので、助成金がもらえるとわかっていても、いざ申請をするとなるとなかなか着手できないのも頷けます。
申請作業がなかなか進まない場合は、社労士に手続きを任せてしまうのもありかもしれません。
申し込み期間に間に合う助成金の申請を進められる(目当ての助成金の申し込み期間が終了していることもある)
それぞれの助成金には申請期限があるので、この助成金がいいなと思っても今年の期限には間に合わないこともあり得ます。社労士に相談をすることで、今から作業をはじめても間に合いそうな助成金の提案を受けたり、あるいは来年まで待った方が良さそう、といったアドバイスを受けたりできます。
段取りのミスなどで締め切りに遅れるリスクを減らせる
助成金の申請をする際は、対象労働者に訓練を受けさせたり、就業規則に追記をしたりとやらなければいけないことが多くあります。
申請をする際の作業の全体像を把握したうえで段取りをしないと、締め切りまでに申請ができないこともあります。締め切りを過ぎると、訓練などに経費は使ったが助成金はもらえない、といったことになります。助成金の金額は数十万円~数百万円程度なので、期限切れが原因で助成金がもらえなくなってしまえば大きな機会損失です。
社労士であれば段取りを組んで手続きを進められるので、締め切りを遅れることによる機会損失のリスクを低くできます。
成果報酬であることが多く、費用倒れしにくい
受給できた金額の20%前後の成功報酬であることが多いので、初期費用を心配せずに済みます。ただ、企業に出向いたり、就業規則への追記までをお願いしたりすると別料金になることがあるので、助成金に付随して発生する作業の取り扱いについても契約前に確認しておくと安心です。
注意:補助金の申請代理に対応していない社労士も多い
助成金は社労士の独占業務なので、対応している社労士は多いですが、補助金については社労士の独占業務ではないので、社労士が対応していないことも多いです。社労士に相談をする際は、助成金の相談がメインになるでしょう。
まとめ
賃上げをすることがほぼ決まっている企業が受け取れるかもしれない助成金をご紹介しました。
賃上げに加えて何らかの取り組みをすることが助成金の支給要件になっていることが多いです。賃上げ以外の支給要件と企業の方向性が噛み合っている補助金や助成金を選ぶことが重要です。
助成金や補助金は経費の一部を負担する趣旨のお金なので、継続的に利益率を高めるためには適切な設備や訓練の選定は必須です。
企業の取り組みや主目的を社労士に相談することで、自社にぴったりの助成金を教えてもらえるかもしれません。当サイトが人件費負担を軽減するきっかけになれれば幸いです。