就業規則_見直し

就業規則の見直しは重要!見直しのタイミングやポイントを徹底解説

「会社の憲法」と呼ばれる就業規則は、労務管理において必要不可欠なものです。しかし一度作成したものを何年も放置し、「うちはきちんと就業規則を作成したから大丈夫!」と安心していないでしょうか。

形骸化された就業規則では会社の実情を反映せず、本来の意味をなさなくなってしまうため、適切なタイミングで見直しをすることが大切です。

今回は就業規則の見直しの重要性をお伝えするとともに、見直しするタイミングや手続の流れ、押さえておくべきポイントを中心に解説します。

 

就業規則の見直しはなぜ必要?

就業規則を見直すべき大きな理由は近年増加する労使トラブルを防ぐためです。

総合労働相談件数は100万件のうち労働紛争が26万件以上

厚生労働省によれば、平成30年度の総合労働相談件数は111万7,983件と、11年連続で100万件を超えています。

総合労働相談件数、助言・指導の申出件数、あっせん申請の件数いずれも前年度より増加。
総合労働相談件数は111万7,983件で、11年連続で100万件を超え、高止まり[P.3 1-(1)]・総合労働相談件数               111万7,983件(前年度比1.2% 増)
→うち民事上の個別労働紛争※4相談件数   26万6,535件(   同  5.3% 増)
・助言・指導申出件数                   9,835件(   同  7.1% 増)
・あっせん申請件数                     5,201件(   同  3.6% 増)

2 民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全てで、「いじめ・嫌がらせ」が過去最高
・民事上の個別労働紛争の相談件数では、82,797件(同14.9%増)で過去最高。[P.4 1-(3)]・助言・指導の申出では、2,599件(同15.6%増)で過去最高。[P.7 2-(3)]・あっせんの申請では、1,808件(同18.2%増)で過去最高。[P.10 3-(3)]

相談者の種類としては83.3%が労働者となっており、圧倒的に労働者側からの相談が多いことがわかります。

近年はスマートフォンひとつあればいつでも法律の一般的な知識や相談先の情報を得られますし、労働者の権利意識も高まっていると考えられます。

労働相談の内訳|解雇や労働条件が18.5%

相談の内容としてとくに多いのは次のものです。

  • いじめ・嫌がらせ(25.6%)
  • 自己都合退職(12.8%)
  • 解雇(10.1%)
  • 労働条件の引下げ(8.4%)
  • 退職勧奨(6.5%)

参照:厚生労働省|平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況

労働相談の内訳

労使トラブルが発生する原因のひとつには、労働者と使用者の間における認識の相違があります。労使の認識のずれを埋めるのは法令や就業規則、労働契約、労使協定などです。

曖昧な就業規則が労働トラブルの基に

これらの明確な根拠があれば労使は共通の認識を抱くことができ、認識の相違による労使トラブルを防ぐことができます。

しかし就業規則や労働契約の内容があいまいな場合には労使が都合よく解釈してしまい、双方に不満が生まれます。たとえば労働者が退職する場面において、使用者としては自己都合退職のつもりだけれど労働者側は解雇されたと思っているケースが多々あります。

このとき自己都合退職や解雇について事細かく書かれた就業規則が周知されていれば、このような認識のずれは生まれにくいでしょう。今ある就業規則の見直しによって、近い将来起こり得る労使トラブルを防ぐのです。

就業規則の見直しが必要になる10のタイミングのうち特に重要な6項目

就業規則は定期的に見直しをすることが大切ですが、厚生労働省が周知している変更のタイミングとしては、下記の10項目があげれています。

  1. 法改正があった
  2. 就業規則に記載されている労働条件と実際の就業の状態にギャップ(ズレ)がある
  3. 非正社員の増加で、正社員用の就業規則がそのままの状態では使えない
  4. 労使問題(紛争)が生じたときに、就業規則がその解決に対応できる内容となっていなかったため混乱を生じ、その反省を踏まえ、今後のトラブル防止又は予防のために改定する
  5. 会社の成長や労働環境の変化により、従業員側から又は会社の起案により労働条件の変更の要望が生じた
  6. 合併や吸収、会社分割、営業譲渡など経営状況に大きな変化があった
  7. 労働組合が結成され団体交渉などが行われ、又は労使協議制により従業員の労働条件に変更があった
  8. 企業防衛及びリスク管理のために、新たに規定を追加する必要性が出てきた
  9. 助成金を受給するために就業規則への規定の追加や見直しが必要になった
  10. 労働基準監督署から是正勧告や指導を受けた参考:中小企業のための就業規則講座 – 厚生労働省

少なくとも次のケースでは見直しが必須だと思っておきましょう。

法改正が行われたとき

もっともわかりやすいタイミングは法改正があったときです。働き方に対する社会の価値観や実際の働き方、労務管理の方法などは時代ごとに異なり、それにあわせて労働基準法や育児介護休業法などの法律も改正されます。

法改正を反映させなければ法的要件を見たなさない規則になってしまい、会社は法違反を犯すリスクを抱えている状態になります。確実に見直すべきタイミングといえるでしょう。

社内の制度・仕組みに変更があったとき

社内における小さなルール変更であっても、就業規則に書かれていない、就業規則の内容との相違があるなどすればトラブルの元です。たとえば、遅刻する社員やたばこ休憩が多い社員に対して一定のルールを設けるときも、あいまいなルールにせずに就業規則に定めるとよいでしょう。

賃金控除のルールや遅刻する際の届出の方法(メールやLINEの可否など)などを定めておけば、不要な争いが避けられます。遅刻をせず、たばこ休憩もとらないほかの労働者からの不満も減るでしょう。

新型コロナウイルス感染拡大防止の目的もあり、近年はテレワークの導入を検討する会社も増えています。その際にもスムーズな運用やトラブル防止のために就業規則へ盛り込むことが大切です。

就業規則と実態にかい離がみられたとき

労働条件や職場の労務管理に関して就業規則とのギャップがみられる場合は、本来の就業規則としての機能を果たしておらず、トラブルのリスクも高まっています。

就業規則の見直しによってギャップを埋め、誰がどう見ても同じ解釈になるよう精査が必要です。就業規則はただ作成すればよいのではなく、実態にそったものであることが重要です。

従業員にとって不利益になる項目があった時

不利益になる変更の具体的な例としては、

  1. 定年制がない規則に新たに定年制を設ける
  2. 休職期間を短く する
  3. 賃金の一部をカットする
  4. 退職金の支給額や支給率を低減させる
  5. 労働時間を延長する

というような変更です。

前述のとおり、労働契約法では労働者及び使用者の合意なく、労働条件を変更することはできないとされており(同法第8条)、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは、原則としてできないことになっています(同法第9条)。

代表的な判例としては、

  • 「秋北バス改正就業規則効力停止請求事件:最高裁大法廷判決昭和43.12.25」
  • 「タケダシステム事件:最高裁第二小法廷判決昭和58.11.25」
  • 「第四銀行事件:最高裁第二小法廷判決平成9.2.28」など

非正規労働者や外国人などを雇い入れるとき

パートやアルバイト、嘱託社員などの非正規労働者は、働き方が正社員と異なるため正社員用のものをそのまま使えないケースが少なくありません。非正規労働者を雇い入れるときには正社員の就業規則とは別に詳細なものを作成する必要があります。

外国人も日本人の労働者と同じように就業規則が適用されます。ただし、外国人は入国管理法の規定により在留資格でおこなえる活動内容や在留期間が決まっているなど、日本人労働者の就業規則がなじまない部分が多くあります。

文化の違いもあり採用から労働契約の解除まであらゆるトラブルが想定されますし、外国人も理解できる言語への翻訳も必要となります。就業規則の作成・見直しにあたっては専門的な知識が必要となるため、外国人雇用に詳しい専門家へ相談するのが賢明でしょう。

労使トラブルが起きた反省を活かしたいとき

就業規則の内容があいまいだったために労使トラブルが起きるというケースは多くみられます。すでに労使トラブルが起きてしまった場合には、トラブルを収束させると同時に二度と同じトラブルが起こらないようにしなくてはなりません

今回の反省を活かし、就業規則に詳細な規定を追加しておくべきです。

就業規則見直しの具体的な手順と流れ

就業規則の見直しにあたりどのような手続が必要となるのかを解説します。

見直し案の作成

自社の状況と見直すべきポイントについて洗い出し、見直し案を作成します。就業規則を作成・変更する主体は使用者ですが、見直したものが実情にそっているかどうかは労働者側の意見を聴いてみないとみえてこない面があります。

そのため変更が完了したものではなく、まずは見直し案を作成してから次のステップ(労働者からの意見聴取)に進んだほうが、労使の不要な衝突を避けられるでしょう。

就業規則変更届の例

就業規則変更届の例

 

労働組合または過半数代表者からの意見聴取

就業規則は作成するときだけでなく変更する際にも労働者代表等から意見聴取をおこなう必要があります(労働基準法第90条)。労働者代表等の意味は次のとおりです。

  1. 過半数で組織する労働組合がある場合・・・労働組合
  2. 過半数で組織する労働組合がない場合・・・雇用する労働者の中から選出された過半数代表

ここでいう意見聴取は、できる限り意見を尊重するいう趣旨であり、同意までは要求されません。仮に反対意見であっても、変更の効力に影響を与えるものではないのです。

ただし就業規則の見直しが労働者の働きやすい環境を整え、労使トラブルを防ぐ目的があることからすると、反対意見を無視して変更してもよいのかどうかは慎重に検討するべきでしょう。

(作成の手続)
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
○2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
引用元:労働基準法第90条

不利益変更には合意が必要

使用者は労働者と合意することなく就業規則の不利益変更ができません(労働契約法第9条)。ここでいう合意は、変更時の意見聴取とは異なり、同意を得るという意味です。

合意せず一方的に不利益な変更をしても元の条件等が適用されることになりますし、そのような強引な姿勢が労働者の不満を高めることは容易に想像できます。

(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
引用元:労働契約法第9条

所轄労働基準監督署への届出

労働者代表等の意見書を添えて所轄の労働基準監督署へ届出をおこないます。変更の場合は就業規則の全文を提出する必要はなく、変更した条項について示せば問題ありません。新旧の対照表を提出するなどの方法が考えられるでしょう。

参考:東京労働局|労働基準監督署の管轄地域と所在地一覧

事業場への周知

就業規則は事業所の見やすい場所へ周知しなくてはなりません(労働基準法第106条1項)。就業規則の作成時に周知しているはずですが、もしもしっかり周知されていなかった場合はこの機会に周知方法も見直しましょう。

周知にあたっては次のような方法があります。

  • 作業場の見やすい場所へ掲示または備え付ける
  • 書面を労働者全員に交付する
  • 労働者がいつでもパソコンの画面で確認できるようにする

中小企業などでは稀に、社長室の中にある鍵がかかった棚に就業規則をしまっておき、労働者に見せたがらない経営者もいます。これではいつでも労働者が就業規則を確認できる状態とは言いがたく、労働者の不満が増える元なので、上記のような方法で適切に周知しましょう。

(法令等の周知義務)
第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三第一項、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第九項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び同条第五項(第四十一条の二第三項において準用する場合を含む。)並びに第四十一条の二第一項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。

○2 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
引用元:労働基準法第106条

近年の動向から見る就業規則の見直しポイント6つ

就業規則の見直しの対象となる項目には、労働条件や服務規律、労働者の区分などさまざまなものがあります。会社の状況にあわせて見直しをおこないましょう。ここでは近年の動向からとくに問題になりやすいケースに絞り、見直しのポイントをお伝えします。

働き方改革にともなう法改正の反映

働き方改革にともない、労働基準法や関連法令の改正がおこなわれています。近年まれにみる大改正であり、大企業・中小企業問わず対象となります。多くの会社では今まさに就業規則を見直す時期だといえるでしょう。

多数の改正がおこなわれましたが、主な項目を以下に挙げます。

  • 年5日の有給休暇の取得義務化
  • 労働時間の上限規制
  • 労働時間の把握義務化
  • 同一労働同一賃金への対応
  • 高度プロフェッショナル制度の新設
  • フレックスタイム制の精算期間延長

なお、中小企業には一部猶予期間が設けられていた項目もありますが、その多くは中小企業でもすでに猶予期間がすぎて実施が必須となっています。まだ大丈夫と思っていた場合には早急に就業規則を見直す必要があるでしょう。

ハラスメントの禁止規定

近年の労働問題で代表的なものはパワハラやセクハラ、マタハラなどのハラスメントです。ハラスメントが起きれば優秀な労働者の離職につながる、会社としての社会的な信頼を失うなど大変リスクが大きい問題です。

また2020年6月(中小企業は2022年4月~)には通称『パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)』が施行され、使用者には雇用管理上の措置義務が課せられます。

パワハラ防止法

セクハラについては均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)の第11条で雇用管理上の措置が義務づけられています。

就業規則の見直しにあたってはハラスメントの定義や禁止行為の具体例、相談対応などについて盛り込みます。違反した場合の懲戒規定と連動させることでハラスメントの防止が図れるでしょう。

個人情報の取り扱いに関する規定

SNSなどの浸透により不用意に個人情報や会社の業務上の情報がさらされるケースが増えています。リモートワークを認めたことにより、ノートパソコンをカフェなどで開き、情報漏洩につながるようなケースも少なくありません。

個人情報が漏洩する場所や方法が時代によって変わってくるため、就業規則も改めて見直す必要があるでしょう。

たとえば、秘密保持契約書の提出や会社から支給された端末の私的利用の禁止、守られなかった場合の制裁規定などを見直します。また退職者による情報漏洩も問題となっていますので、在職中および退職後の注意事項も盛り込むことが大切です。

副業の規定

近年は多様な働き方が推奨され、副業を解禁する会社が増えています。しかし、「何でもOK」とするのはリスクもあるため就業規則で定めておくとよいでしょう。たとえば副業できる業種や雇用形態、会社の利益に反する副業の具体例、違反時における制裁規定の追記などを検討します。

メンタルヘルスによる休職規定

メンタルヘルスによる休職者が多いのも近年の特徴です。休職の規定を設けている会社は多いでしょうが、従来の就業規則はメンタルヘルス以外の休職を想定しており、メンタルヘルスによる休職には対応できないケースがしばしばみられます。

メンタルヘルスの場合はケガのように見た目で判断できない点が多くあるため、医師による診断書のほかに労働者の同意を得たうえで医師や家族への確認を必要とするなどの項目を盛り込むことが考えられます。休職中および復職時の病状報告義務や再発した場合の対応などを追記することも大切です。

高年齢者の雇用に関する規定

少子高齢化による労働人口の減少を受けて、就労意欲の高い高年齢者の継続雇用・再雇用、あるいは新規雇用が求められています。たとえば正社員が定年したあとに嘱託社員として再雇用する場合には、嘱託社員用の就業規則を新たに作成する必要があります。

正社員のときと同じ業務内容なのに賃金だけを大幅に下げるなど不合理に待遇を変更することはできないため、慎重に見直しましょう。

就業規則の見直しで困ったときの相談先

就業規則の見直しには法令や判例等の深い知識が必要となりますし、そもそも何から手をつけてよいのかわからないという方も多いでしょう。

原則専門家に相談するのがおすすめ

インターネットや書籍で調べるのもひとつの方法ですが、就業規則は自社の状況を反映させる必要があるため、一般論を示した資料のみを参考にすると漏れが生じる恐れがあります。

労務管理において大変重要な規則となるため外部の専門家へ相談されるのがよいでしょう。

専門家は社労士や弁護士

相談できる専門家には社労士や弁護士がいます。まずは無料で相談したいといった場合には、初回相談は無料という事務所を探すのも方法です。地域の商工会議所などで相談を受け付けているケースもありますし、就業規則についての質問は労働局や総合労働相談コーナーなどでも回答してくれます。

まとめ

就業規則は法改正や社内ルールの変更があったときなどに見直しが必要です。会社の状況を反映した就業規則であれば労使トラブルを防ぎ、いざというときに会社を守ることができます。

労働者がいきいきと働ける環境づくりにもつながるため、離職率の抑制や優秀な人材の確保にも効果が期待できるでしょう。