会社の経営者や、人事・労務担当者で「助成金を受給したい」と考えている人は、多いのではないでしょうか。
助成金をもらいたいけれども、自分で申請するのと社会保険労務士に依頼するのとでは、どちらの方が良いのかな?と悩む人もいるでしょう。
私は会社の人事・労務担当者ですが、過去に自分で助成金申請をしたことがあります。
結果的に受給には成功したのですが、その時にこう思いました。
「お金がかかっても、社会保険労務士に依頼する方が絶対に良い。もう2度と自分で申請はしたくない!!」
この理由については、記事内で紹介したいと思います。
それでは早速「助成金の申請を社労士に依頼するべき理由」をはじめ「費用」や社労士の「選び方」について、詳しく解説していきたいと思います。
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申請すべき助成金の種類とは
助成金とは「一定の要件・条件を満たした」会社に支給されるもので、国や自治体などから支払われる「返還不要」なお金のことです。
一口に助成金と言っても、たくさん種類があるので、自分の会社に合った助成金を探すことが大切です。
下記に、助成金の種類をいくつかご紹介します。
スキルアップ・教育
非正規雇用の人材を正規雇用に変えるなど、従業員の状況を「今よりもっと良いものに変えたい」とか「従業員に教育の機会を与えて、スキルアップを目指したい」などと考える会社向けの助成金です。
(例)
- キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度。 - キャリア形成促進助成金
雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識及び技能を修得させるための職業訓練等を受講させる事業主等に対して助成する制度。
【参照】
採用関係
新たに人を雇ったりした際にもらえる助成金で、採用後の教育などに使用し、人材をより良く育てることに使える助成金です。
(例)
- 65歳超雇用推進助成金
高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現するため、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成するもの。 - 再雇用者評価処遇コース
妊娠、出産、育児、介護または配偶者の転勤等(配偶者の転居を伴う転職を含む)を理由とした退職者について適切に評価され、配置・処遇される再雇用制度を導入し、希望する者を再雇用した事業主に支給する制度。
【参照】
環境改善
社内の環境改善を行い「新たな道を切り開きたい」とか「従業員に、より安心して働ける環境を提供したい」などと考える場合に、有意義に使える助成金です。
(例)
- 育児休業取得促進措置
- 職場風土改革コース
不況時
様々な事件や出来事により、世の中が不景気に傾くことがあります。そうすると不況になり、会社経営にも影響がでることがありますが、そのような時に利用できる助成金です。
(例)
- 雇用調整助成金
会社の創立・起業
新たに会社を創立し、起業する際にもお金は必要になりますが、そのような時に利用できる助成金です。
(例)
- 創業補助金
実際に私がやってみた!助成金申請から受給までの流れ
この記事を見て下さる方の中には、会社の経営者又は人事・労務担当者で「助成金申請を、社労士に依頼しようか?それともお金がかかるから自分でしようかな?」と悩まれている方もいるでしょう。
冒頭でもお話した通り、私は人事・労務担当者でして、実際に助成金を自分だけで申請したことがありました。
まず、助成金申請から受給までの流れは下記の通りです。
1、実施計画書を作成
2、実施計画書の提出
3、計画を実際に実行する
4、助成金の支給申請
5、審査
6、無事に受給成功!
こう書くと、なんだか簡単そうと思うかもしれません。しかし、申請書類を用意するだけでも大変でしたし、受給条件を整える為に社内環境を整備したりするなど、作業量も膨大でした。
それに伴い、本来の業務をする時間も大幅に奪われ、大変でした。朝イチで役所に行き、整理券を取り1時間以上並び、順番が来たらそこで書類のチェックを依頼し、確認してもらうだけで1時間以上かかることもありました。
その時に不備が見つかったら、再度自社に戻って不備を訂正する必要があり、また改めて役所に出直し、気付いたら外が真っ暗になっていたなんてこともありました。
ふと携帯電話を見たら、会社から急ぎの問合せに関する着信が10件以上あったのを見た時には、泣きたくなりました。
こういった経験から「悪いことは言わないから、助成金申請はプロである社労士にお願いした方が良い」と断言します。
助成金の申請代行を社労士に頼む4つのメリット
前項では、助成金申請はプロである社労士にお願いした方が良いと言いましたが、そのメリットについて下記にまとめました。
本来の業務に専念できる
実際に自分で助成金申請をした時には、数日間本来の業務を行うことができませんでした。その後も、ちょくちょく助成金申請に時間を費やすことがあり、本来の業務は業務時間外に行うことになり、心身共に疲れました。
自分に払われる残業代や、業務が滞ったことによる影響など、トータル的なコストを考えると、社労士に依頼し費用を払った方が安く済んだのではないかと感じました。
不支給の可能性が低くなる
助成金申請には受給要件があり、最終的に審査もあります。その時に1つでも要件が満たされていなかったり、審査時に不備が見つかると、不支給になります。
膨大な労力や時間もかけたのに、最終的に不支給になってしまったのでは、それまでの努力が水の泡です。
そうならない為にも、プロである社労士に依頼する方が良いと言えます。
就業規則などの規程の整備も頼める
助成金を申請する際に、受給要件を満たす為に「社内環境の整備」が必要になることがあります。
実際に私の会社の場合もそうでした。
社内の規程を変え、就業規則も大幅に変える必要に迫られましたので、助成金申請業務と同時に、就業規則改訂業務も行うことになりました。
就業規則の改訂は、自分の判断で勝手に進めることはできませんし、変更内容を労働基準監督署に届ける必要もあります。
その為、社内で打ち合わせをしたり、労働基準局に行ったり、非常に慌ただしい日々でした。しかし、助成金申請を社労士に依頼すれば、こういった就業規則などの整備も併せて行ってもらうことが可能です。
他の助成金も提案してもらえる可能性がある
助成金には沢山の種類があり、自社に合ったものがあっても、見過ごしているケースは多くあります。
助成金を活用すれば、会社の未来の可能性の幅が広がりますし、返還不要なお金でもあるので、もらえるものは是非とも受給しておきたいものです。
社労士はプロなので、こういった「もらえるハズの助成金」や「受給すると、会社環境がより良くなる助成金」について、把握しています。助成金申請を社労士に依頼すると、こういった他の助成金の存在を教えてもらえる可能性もあります。
実際に私は、自分で助成金申請を行った苦い思い出から、その後は社労士に頼むようにしたのですが、他の助成金についても提案していただくことができました。
助成金の申請に力になってくれる社会保険労務士の選び方
助成金申請をするのであれば、社労士に依頼した方が良いということが分かりました。その為には、社労士を探し、なおかつ自社に合った人を探す必要があります。
ここでは、自社に合った社労士の選び方をご紹介いたします。
自社から近い場所に事務所がある
実際に助成金申請を依頼する際に、打ち合わせをすることも多くなりますし、揃える書類も多く出てきます。そのような時に、自社から近い場所に事務所がある社労士さんに依頼すれば、打ち合わせもしやすいですし、書類のこともすぐに対応してもらえます。
また助成金申請の際に、会社の代理人として社労士さんに役所に行ってもらうことも多くなります。
行先の役所の場所は、社労士さんの事務所近くのものではなく、自社の近くのものになります。
そういった意味でも、自社から近い場所に社労士の事務所がある方が、色々とスムーズなので良いと言えます。
レスポンスが早い
社労士を選ぶ際に、レスポンスが早いか否かは重要です。少なくても24時間以内に返信があるか否かで、チェックしましょう。
もしレスポンスが遅い場合には「他の業務が忙しすぎて、手がまわらない」か「気が回らない」かのどちらかの可能性が高いです。
前者の理由であれば、助成金申請業務をきちんと行ってもらえるかについて、疑問が出てきます。後者の理由であれば、今後やり取りをするにあたり、毎回ストレスを抱えることになりそうです。
その為、どちらにしてもレスポンスが早い社労士を選ぶべきだと言えるでしょう。
電話対応が丁寧
社労士を選ぶ際に、電話対応が丁寧か否かを見ることも大切です。電話対応の際に上から目線であれば、今後打ち合わせをしていく際に、こちらの意見をきちんとくみ取ってもらえない可能性もあります。
また電話対応が丁寧でなければ、助成金申請の際に、きちんと会社の要望をヒアリングしてもらえない可能性もあります。こういったことから「電話対応の丁寧さ」もチェックポイントになります。
時にはアドバイスや提案をしてくれる
何でも会社の言いなりで仕事をするだけの社労士は、あまり良いとは言えません。例えば助成金申請の際に、要件を満たす為に、職場環境の改善・調整をはかる必要に迫られることがあります。
こういった時に、会社と社員と両方の立場になり、それぞれが幸せになるようなアドバイスや提案をしてくれる社労士が良いと言えます。
会社は労務管理・環境改善のプロではないので、時には知らずに間違った方向に進んでいってしまうこともあります。このような時に、時には止めてくれるような社労士は、会社や社員のことを考えてくれている良い社労士だと言えます。
自社の社風や特徴を理解してくれる
会社には、それぞれ特徴があり、自社ならではの社風などもあるでしょう。そういった特徴を理解しながら、仕事を進めてくれる社労士は、良い社労士だと言えます。
同じ物事を進める場合でも、社風や特徴により、方法が違うこともしばしばあります。そのような時に、自社の社風や特徴を理解しながら進めてくれる社労士でないと、会社や社員にストレスがかかってくることもあります。
こいうったことからも、自社の社風や特徴を理解してくれる社労士を見つけるようにしましょう。
社労士に助成金申請を頼んだ場合の費用は?
それでは「社労士に助成金申請を頼んだ場合の費用」についてご紹介します。
主に、下記の2パターンに分かれます。
- 助成金申請だけのスポットでの依頼
- 顧問契約も結び、助成金申請以外の仕事も依頼
助成金申請だけのスポットでの依頼
社労士に助成金申請だけのスポットで依頼する場合の料金相場は、下記の通りです。
- 着手金:2~5万円
- 成功報酬:助成金の10~20%
まず着手金を支払い、助成金申請で例えば100万円が支給されたら、成功報酬として10万~20万円を社労士に支払うというイメージです。
顧問契約も結び、助成金申請以外の仕事も依頼
助成金申請をする際に、受給要件を満たす為に、就業規則改訂や社内環境の整備をすることはよくあります。
このようなことも考えると、助成金だけのスポット契約ではなく、社労士自体と顧問契約を結び、他の労務関連の仕事も依頼しようかと考える人もいるでしょう。
社労士と顧問契約を結ぶ場合の料金相場の目安は、下記の通りです。
- 社員人数4人以下 2万円前後
- 社員人数5~9人 3万円前後
- 社員人数10~19人 4万円前後
- 社員人数20~29人 5万円前後
- 社員人数30~49人 6万円前後
- 社員人数50~69人 8万円前後
給与計算やコンサルティングを依頼する場合には、別途料金を設けている事務所もあります。また助成金申請についても、顧問契約の料金に含まず、別途料金規程を設けている事務所もありますので、それぞれ確認が必要です。
助成金申請をスポットで依頼し、良さそうな社労士だなと思ったら、改めて顧問契約を結んでみるという流れも良いでしょう。
まとめ
今回は、助成金の申請を社労士に依頼するべき理由をはじめ、費用や社労士の選び方についても詳しく解説いたしました。
社労士に依頼すると料金がかかりますし、決して安い値段とは言えません。しかし、素人が助成金申請に費やす時間と労力は、想像以上のものがあります。
私も身をもって体験しましたが、助成金は素人でも申請は可能ですが、可能というだけで決してオススメできるものではありません。
私の使った時間と労力を考え、社労士に依頼した場合との料金を比較すると、社労士に依頼した場合の方がお得だったと言えます。お金を使うべきところは使い、節約するべきところは見直すべきですが、助成金申請については、社労士というプロに依頼しお金を使って良いところだと言えるでしょう。
本記事を参考にし、是非みなさんの会社に合った社労士が見つかることを、応援しています。