【社労士の必要性を見極める質問】
社労士の必要性が高い企業の特徴を一言でいうと、人事労務関連業務の負担が増えてきている企業です。
人事労務関連業務を社内で対応しようとする場合、以下の懸念点があります。
- 業務経験や知識を持つ人が社内にいるか?
- 事業者が対応しきれる時間の余裕があるか?(従業員人数が少ない企業は特に)
- 手続きのミスや対応忘れをしないか?
上記の心配がある場合は、人を新たに雇用するか、社労士に外注するかの2択になります。
社労士の外注を選ぶ場合のメリットは次の3点です。
- 人を雇用する(平均で月額40万円ていど)よりも安くてミスがない
- 給与計算・社会保険手続きのようなルーチン業務から解放される
- 意図しない法令違反のリスクを減らせる
この記事では、社労士が自社にとっても必要かどうか不明な段階の事業主に向けて、社労士の必要性が高い企業とはどんなフェーズの企業なのかをご説明します。
社労士の必要性を見極める4つの質問
社労士の必要性が高い企業とは、一言でいうと、人事労務関連業務が増えてきていて、バックオフィス人材が足りない(欲しい)と感じている段階の企業です。
冒頭にあった社労士を見極める質問について、具体的に補足します。
- 従業員を雇用しているか?
- 採用を拡大する予定があるか?
- 人事労務関連の業務量が多く、対応が負担になっているか?
- 人事労務関連の業務を、社内ですべてこなせるか?
従業員を雇用しているか?
社労士が対応している業務(例:給与計算代理、社会保険手続き代理)は、前提として人を雇用していないと発生しません。そのため、人を雇用していない、あるいは直近で人を雇用する段階にならない限り、急いで社労士に依頼をする必要はありません。
人を雇用していない事業主にとって社労士の必要性が高くなるタイミングは、初めて人を雇うときです。
初めて人を雇うときは、少なくとも以下のような作業が発生し、ただでさえ通常業務で忙しい事業者がさらに忙しくなるためです。
- 勤怠管理・給与計算の用意
- 労働条件の明示
- 雇用契約書の用意
- 社会保険の被保険者になるための手続き
- 労働保険の適用を受けるための手続き
- 就業規則の作成(従業員10人以上で義務に)
- 税金の手続き
採用を拡大する予定があるか?
人を雇用すると、給与計算や社会保険手続きのような事務作業が増えます。
事務作業が増えると…
- 本業に割く時間が圧迫される
- 手続きのミスや忘れが増える可能性が高くなる
- 就業規則や賃金規定のような、ルール決めが必要になる
特に、必要最低限のルールについては早い段階で適法かつリスクを回避できるような内容で定めておきたいところです。
最初にルールを決めておかないと、後々揉め事になりそうですが、ここで具体的な例を一つ。
例えば、就業規則に懲戒解雇に関するルールを記載していなかったとします。この場合、常識的に考えて懲戒解雇が妥当な従業員(犯罪を犯したなど)がいたとしても、懲戒解雇をすると不当解雇が認められるリスクを抱えることになります。
従業員が増えると、当然従業員間、労使間トラブルが増えることは予想されるので、早いうちに就業規則で最低限のルールを決めておきたいところです。
人事労務関連の業務量が多く、対応が負担になっているか?
人を採用していても、人事労務関連の業務を全て自力で対応できる余力があるなら、すぐに社労士に外注する必要はありません。時間がなくなってきたと感じてきてからでもよさそうです。
人事労務関連の業務を、社内ですべてこなせるか?
人事労務関連業務の負担が増えてきた場合の対応は以下のいずれかになります。
- 事業主が頑張ってなんとかする
- 社内の既存の従業員が対応する
- 新たに人事労務担当者を雇用して対応する
- 社労士に外注する
社内の人材だけでの対応が難しければ、あたらに人事労務担当者を雇用するか、社労士に外注するかの2択を検討することになります。
人を雇用する場合は、平均で月額40万円(就労条件総合調査の概況)程度かかります。
社労士に外注する場合、どの業務をどのくらい外注するかにもよりますが、顧問料だけで考えるのであれば、月額平均2万円~17万円程度です。社会保険手続きや就業規則の作成・修正などは、手続きが発生するたびに費用が発生する料金設定になっていることが多いので、固定費率を高めずに済みます。
従業員規模がそこまで多くない段階であれば、人事労務よりも営業職のような、売上を伸ばす職種にお金を使いたい方も多いでしょう。
社労士に依頼すると、人を雇用するよりも安く、かつ手続きの忘れやミスのリスクも低いです。急に退職される心配もありません。
社労士との顧問契約がなぜ必要なのか?依頼のメリット4つ
社労士の必要性が高い方が社労士と顧問契約をすると、具体的にどんなメリットがあるのかについて、以下4点をご説明します。
- 毎月のルーティン業務をミスなく安く済ませられる
- 人事労務関連の法令違反・従業員とのトラブルを未然に防げる
- 人事労務業務の一部は社労士の独占業務なので、外注するなら社労士以外の選択肢がない
- 人事労務の相談をする場合、社内の状況がわかっていないと回答できないので顧問契約をして情報を共有しておく必要がある
毎月のルーティン業務をミスなく安く済ませられる
うえでお伝えしたとおり、人を新たに雇用するよりも安く社労士に外注できることが多いので、費用の負担が少なくて済みます。
さらに、社内の人間が対応する場合は、調べ物や勉強をするために時間とお金がかかります。退職のリスクや、業務の進め方をその人しか知らないような状況にもなりかねません。
社労士であれば既に専門知識を持っているので、安くミスなく仕事が終了します。既に社内に人事労務に対応している方がいる場合、最終確認や不明点があったときの相談だけを頼むような契約もあり得ます。相談や最終確認だけであれば、業務を外注するよりも社労士費用がかかりません。社内の方の専門知識も増えます。
人事労務関連の法令違反・従業員とのトラブルを未然に防げる
ご自身が営んでいる事業に関する法律を全て知っていなかったとしても、それは普通のことです。ただ、事業を拡大していけば、気づかない間に法令違反をしていた、ということも起こり得ます。
現行の法令を調べるだけでは不十分で、法令改正の情報を常に仕入れていなければなりません。人事労務関連でいえば、給与や社会保険料、解雇に関するルールを十分に把握していないと、金銭的なトラブルの温床になります。
顧問社労士がいることで、法令違反の心配がないかいつでも確認ができます。「法律に違反しているかも」という後ろめたさや不安を感じずに、自信を持って事業を推進できます。
人事労務業務の一部は社労士の独占業務なので、外注するなら社労士以外の選択肢がない
社労士の独占業務は社労士以外が代理できないことになっているので、外注をするなら社労士を選ぶことになります。
例えば社会保険手続き・助成金申請代理や就業規則の作成などは、社労士の独占業務です。
社労士の独占業務の内訳は以下の記事で解説します。
人事労務の相談をする場合、社内の状況がわかっていないと回答できないので顧問契約をして情報を共有しておく必要がある
顧問契約の必要性について説明します。明らかに単発で済む依頼でない限り、顧問契約をしないと対応が難しい業務もあります。例えば、社会保険の手続きをする際は、手続きの対象になる従業員の情報が必要です。社会保険手続きのたびに従業員の情報をいちいち共有するのは手間がかかるので、外注するメリットが小さくなります。顧問契約をして社内の情報をあらかじめ共有しておくことで、手続きが必要になったときにスムーズに作業を終えられます。
また、労務相談をする際も、顧問契約をしていた方が根本的な解決に至りやすいです。例えば、「社会保険料の計算が間違っていないか確認してほしい」という相談があったとしましょう。社会保険料の計算があっているかどうかを確認するためには、給与計算ツールや就業規則など、社内の情報を見ないと正しい計算ができないので、回答が困難です。
相談や手続きの外注がリピートする可能性がある場合は、顧問契約ありきで考えた方が良さそうです。
ただ、顧問契約によって提供される業務や料金体系は社労士事務所によって異なるので、依頼をする前に双方の認識を一致させたり、他の社労士にも見積もりを取ったりするのが無難です。
当サイトより、無料で社労士の一括見積もりができるので、社労士への相談を検討している方はぜひご利用ください。
社労士が必要ない、信用できないと言われる理由(よくある不満)
社労士についてネットで調べると、社労士が必要ない、信用できない、といったページが出てくることもあります。
ここでは、社労士へのよくある不満や、必要ないと言われることが多い具体的な例をいくつかご紹介します。社労士を選ぶ際に注意するべき点としての教訓を得られるかもしれません。
【社労士が必要ないと言われる理由やよくある不満の例】
- 社労士が対応する業務の負担が少ないから
- 給与計算ツールなどに社労士業務が奪われると考える人もいる
- 助成金の提案など、社労士側からの働きかけがなかった
- 経営者の立場に立っていないと感じた
- 計算ミスがあった
※当然全ての社労士が上記に当てはまるわけではないので、あくまで個別具体的な例として上記のようなことがありうるとお考えいただければ幸いです。
社労士が対応する業務の負担が少ないから
社労士の必要性を見極める4つの質問
でお伝えしたとおり、人を雇用していなかったり、人事労務関連業務を社内で十分に対応できていたりする段階の方であれば、社労士が必要ないと考えるのが普通です。
給与計算ツールなどに社労士業務が奪われると考える人もいる
質の高い給与計算ツールやAIの契約書レビューサービスがリリースされているので、社労士の業務がなくなるのではと考える人もいるかもしれません。
確かに部分的には正しいかもしれませんが、ツールやAIが得意なのは、正解が決まっていて反復する可能性が高い業務です。
企業の事情によって正解が異なるような、人事労務コンサル業務や、社労士の独占業務については、ツールやAIで代替されるかというと、少なくとも今すぐにとはいかないでしょう。
ツールで解決する業務についてはツールを使い、ツールで対応できない業務は社労士に依頼するとよさそうです。
助成金の提案など、社労士側からの働きかけがなかった
社労士を変更したい方によくある不満です。決まった仕事をするだけで、助成金の提案や法令改正の共有など、社労士側からの働きかけがないことを不満に感じる方もいらっしゃいます。
ただ、この点は多少難しい問題です。助成金を受給するためには、受給要件を満たす取り組み(雇用を安定させるための取り組み)を就業規則に追記したうえで、実行する必要があります。
そのため、従業員の雇用を安定させるためにどういう取り組みを考えているのかを事業主から社労士に伝えない限り、社労士が助成金を提案するのは困難です。
極端な話ですが、例えば業務委託だけで事業を運営している事業主に向けて、「正社員を増やして助成金を受給しましょう」というのはズレた提案です。やはり、人の雇用に関して方向性を共有した方が、事業主にとってはメリットが大きいでしょう。
とはいえ、「事業主自ら助成金についてそこまで調べなきゃいけないのか」と面倒に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方は、助成金検索ツールを使って、自社の取り組みに近い助成金を探すといいかもしれません。
雇用関係助成金を検索することができます。…
受給したい助成金の名称と、雇用に関する自社の方向性を伝えられるだけでも社労士からの提案の質は上がります。
経営者の立場に立っていないと感じた
こちらもよくある不満かつ難しい問題です。
法律に違反しない範囲で売上を最大化し、コストを最小化するのが経営者の仕事なので、例えば「なるべく残業代が少なくて済むような仕組みにしたい」と考える方がいるのも普通です。
一方、社労士の仕事は経営者や企業が法令違反をしないようにすることなので、経営者がやりたいことであっても、法令違反や労使間トラブルの心配があれば、NOというのが普通です。
どちらが正しくてどちらが間違っているとは言いにくい問題なので、社労士と合わないなと感じたら、社労士を変更するのが無難な選択肢です。
社労士を変更する際は、経営者の立場に立っていないとシンプルに伝えるのではなく、より具体的なエピソードや詳細とともに伝えるといいでしょう。他の社労士から、「その問題であればこのようなアプローチがあり得る」という提案をもらいやすくなるので、相性の良い社労士を探しやすくなります。
計算ミスがあった
こちらも難しい問題です。給与計算のミスであれば割とすぐ気付けますが、社会保険料のミスであれば、こちらで計算をし直さないと間違っているかどうか判断できません。
この場合、別の社労士にセカンドオピニオンを求め、計算ミスがあった場合は社労士を変更しようと思う意向を伝えるとよさそうです。
まとめ
社労士の必要性が高いのは、給与計算や社会保険手続きのような、従業員を雇用すると発生するバックオフィスの業務負担が大きい企業です。社労士に依頼することで、新たに人を雇用するよりも安くミスなく業務を終わらせられます。社内に既に担当者がいるが、手続きのミスや意図しない法令違反が心配な場合は、相談や最終確認だけの顧問契約を結ぶと費用をさらに抑えられます。
企業のフェーズや、依頼した社労士との相性によっては、社労士が必要ないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、他の商取引と同様合わないものは合わないので、こういう場合は割り切って他の社労士を探すのが無難そうです。
自社にとって適正価格であり、なおかつ信頼できそうな社労士を選ぶなら、一括見積もりが便利です。依頼をするまでは完全無料でご利用いただけるので、是非お試しください。