給与計算を外注または社内で対応する際の選択肢5つと、それぞれの料金相場をご説明します。
給与計算を間違えると、従業員の信頼が失われたり、謝罪のメール作成や計算のやり直しなどの手続きをしたりしなければなりません。責任ある割に、時間をかけても売上や利益が増えるわけではないのが悩ましいポイントです。
給与計算はできるだけ少ないコストで正確に行いたい業務です。この場合の選択肢は…
- 外注する。給与計算を専門に扱う企業や士業を探して業務を外注する
- 社内で対応する。給与計算システムど導入して、作業効率を上げる
全体像をより詳しくご説明すると…
【給与計算を外注する際の選択肢と料金相場】
選択肢 | 料金相場 |
給与計算代行企業 | 【従量課金型】 ・初期費用0円~20万円(初期費用がないこともある) ・基本料金月額1万円~3万円(基本料金がないこともある) ・従業員1名あたり300円~2000円 【時間課金型】 時間課金型の料金相場は、時給換算すると2000円~6000円程度 |
社労士 給与計算に加え、社会保険の手続きも外注できる | ・基本料金月額1万円~8万円(従業員人数によって変動) ・従業員1名あたり500円~3,000円 ※給与計算の料金は社労士も税理士も同程度です。 ※料金は事務所ごとに設定できるので、料金とサポート内容に差があります。上記の相場は目安とお考えください。 |
税理士 給与計算に加え、年末調整や確定申告も外注できる |
【給与計算システムを導入し社内で対応する際の選択肢と料金相場】
選択肢 | 料金相場 |
クラウド給与計算システム | ・初期費用0円~20万円 ・(月額課金型の場合)月額1000円~10000円 ・(従量課金型の場合)1人あたり300~400円程度 |
給与計算ソフト (買切り型の場合) | 4000円〜40000円程度 |
以下、給与計算を外注した場合と内製化した場合の料金相場や、具体的にどんな費用がかかるのかをより詳細にご説明します。
料金も大事ですが、給与計算に付随する業務をなるべく手元に残さない、またはできるだけ効率化できることも重要なので、給与計算に付随してどの業務を外注すると楽になるのか、考えつつサービスを選びましょう。
給与計算代行企業にアウトソーシングした場合の料金相場
民間企業に給与計算を依頼する選択肢です。給与計算担当の人材を採用するよりも低コストで利用できるうえに、変動費として利用できます。担当者の採用を検討していたり、社内に給与計算の経験者がいなかったりする場合は民間企業への外注が向いているかもしれません。
税金や社会保険手続きについては、税理士や社労士でなければ代理できないので、これらの業務の負担が大きい場合は税理士や社労士に依頼することになります。
給与計算代行企業の概要
給与計算代行企業の料金体系は主に次の2パターンです。
従量課金型
給与計算を依頼した従業員の人数に応じて課金する方法です。
時間課金型と比較すると、どの作業にいくらかかっているかが明確です。給与計算だけを依頼するなら従業課金型が無難です。
時間課金型
労働時間に応じて課金する方法です。月20~50時間程度の時間で契約をし、時間の範囲内である程度柔軟に仕事を依頼できます。
給与計算に関連する雑務も任せやすい(依頼内容をカスタマイズしやすい)点がメリットです。勤怠管理の集計や、打刻忘れのリマインドのような、給与計算をするために必要な雑務ごと丸投げをすることもしやすいです。
外注をした後に、「この業務も外注できたら楽だったのにな」と気づいた場合も、追加で依頼しやすい点も◎。
ただし、税金や社会保険の手続きは税理士や社労士がいなければ対応できません。
給与計算代行企業の料金相場
従量課金型の料金相場
- 初期費用0円~20万円(初期費用がないこともある)
- 基本料金月額1万円~3万円(基本料金がないこともある)
- 1人あたり300円~2000円
従業員人数が多い企業向けのサービスを使う場合は、初期費用がかかることがあります。
基本料金月額については、かからないこともあります。
時間課金型の料金相場
- システムを導入する場合は、初期費用5万円~20万円程度
- 時給換算すると2000円~6000円程度です。
月20時間、月30時間、月50時間のように、労働時間に応じてプランがわかれているような場合、労働時間が長いプランの方が時給換算すると割安です。
1月契約でなく1年契約にすると割安になることもあります。
ただ、給与計算だけを外注したい場合は、従業課金型の方が安く済みそうです。
業務内容を具体的に決めずに、いろいろな業務をやってもらいたいニーズがあり、なおかつ専属で人を雇う程度のコストはかけたくない段階であれば向いているかもしれません。
給与計算代行の民間企業の具体的な料金やサポート内容について、以下の記事で詳しく比較しています。
給与計算代行企業の注意点
- 社会保険・労働保険の手続きは社労士にしか外注できない
- 税金関係の手続きは税理士にしか外注できない
- 給与計算関連業務も依頼する場合は、どの業務をいくらで外注できるか確認が必要
- 自社の業務フロー、書類のフォーマット、システムとの連携が可能か確認する
- 相談やカスタマーサポートの内容や可否
給与計算代行企業が適しているのはこんな人
- 給与計算をする人手が足りない
- 給与計算のために人の採用を検討している(外注費用は変動費なので低リスク)
- 自社で給与計算をした場合に計算ミスをする恐れがある
- 社会保険や税金関連の手続きは外注する予定がない
- 社労士や税理士に断られそうな雑務も任せたい(打刻忘れのリマインドなど)
社労士に給与計算をアウトソーシングした場合の料金相場
社労士は労働関連法令の専門知識をもつ職業です。これから採用を拡大するような企業であれば、契約内容をめぐって従業員とトラブルになったり、残業代未払いやハラスメントで訴訟されたりするリスクも想定されます。
給与計算のように、間違えるとまずい手続きや、就業規則のようなルール作りをしてトラブルを未然に防ぎたいとお考えの方に向いています。
社労士に依頼するメリット
- 社会保険・労働保険の手続きも外注できる
- 給与体系や昇給、残業代など、給与にまつわるルールをどうするか相談できる
- 従業員とのトラブルや訴訟が起きにくいようなルール作りができる
- 助成金の相談や申請をお願いできる
人を雇用すると発生する業務(勤怠管理、残業代の計算、社会保険手続き、就業規則作成 など)に不安があったり、工数がかかっていたりする場合は社労士に相談するといいかもしれません。
以下の記事で社労士に相談・依頼できる業務を詳しくご説明しています。
社労士に給与計算を依頼した場合の料金相場
料金相場は概ね次のとおりです。
従業員数 | 月額 |
基本料金 | 10,000~30,000円 + 従業員1名あたり500円~3,000円 |
従業員数5~9人 | +5,000円~ |
従業員数10~19人 | +10,000円~30,000円 |
従業員数20~29人 | +20,000円~4,5000円 |
従業員数30~49人 | +40,000円~70,000円 |
従業員数50人~ | +50,000円~80,000円 |
社労士に依頼する場合、社会保険手続きとセットで依頼をしたり、顧問契約をしたりすると割引されることがあります。
という方は、以下の社労士事務所の1年間無料キャンペーンを確認されてはいかがでしょうか。
経営者からの要望が多かった業務を1年無料でトライアルできます。給与計算も無料対象業務に含まれています。
社労士に給与計算を依頼する際の注意点
社労士を比較する際は、以下の点に注意しましょう。
- 社労士事務所によって料金体系とサポート業務の範囲が異なるので、契約前によく確認しておきましょう。
- 意思疎通のしやすさはどうか。
- 自社が使っているツール(勤怠管理システムなど)との連携の可否
社労士を選ぶ際に確認したいポイントは次の記事でご説明しています。
社労士への依頼が適しているのはこんな人
社労士は労働関連法令に詳しいので、以下のような企業にとっては特に外注するメリットがあります。
- 初めて人を採用する
- 採用を拡大しようとしている
- 勤務形態や手当が多様である
- 残業、深夜労働、休日出勤がよく発生する
- 社会保険、労働保険、就業規則のような人事労務関連の業務負担が大きい
- 人事労務の専門知識を持つ人を採用していない(する予定がない)
- 労働関連の法律相談をしたい
- 残業代未払いや従業員とのトラブルのような法的トラブルを未然に防ぎたい
税理士に給与計算をアウトソーシングした場合の料金相場
給与計算を税理士に依頼することもできます。
年末調整や確定申告は年に一度しなければならないので、給与計算と併せて丸投げすると楽です。
税理士に依頼するメリット
- 確定申告や年末調整を既に税理士に依頼している場合は、窓口を一箇所に集約できる
- 財務や税務に関する相談ができる
- 税務調査をされた場合に立ち会いをお願いできる
年末調整や確定申告をする際は、給与計算をしたデータも使います。給与計算の方法が間違えていると、年末調整や確定申告で正しい内容で申告ができません。給与計算の段階から税理士が対応することで、年末調整や確定申告でミスをする心配を軽減できます。
税理士に給与計算を依頼した場合の料金相場
税理士に給与計算を依頼する場合の費用相場は概ね社労士と同程度です。
従業員数 | 月額 |
基本料金 | 10,000~30,000円 + 従業員1名あたり500円~3,000円 |
従業員数5~9人 | +5,000円~ |
従業員数10~19人 | +10,000円~30,000円 |
従業員数20~29人 | +20,000円~4,5000円 |
従業員数30~49人 | +40,000円~70,000円 |
従業員数50人~ | +50,000円~80,000円 |
税理士に給与計算を依頼する際の注意点
税理士を選ぶ際の注意点は社労士を選ぶ際の注意点とほぼ同じです。
- 税理士事務所によって料金体系とサポート業務の範囲が異なるので、契約前によく確認しておきましょう。
- 意思疎通のしやすさはどうか。
- 自社が使っているツール(勤怠管理システムなど)との連携の可否
税理士への依頼が適しているのはこんな人
- 給与計算と一緒に年末調整や確定申告も外注したい
- 経理人材を採用していない、経理部門がない
- 既に税理士に確定申告をしており、対応や料金体系に満足している
- 節税のアドバイスを受けたい
クラウド給与計算システムの料金相場(月額課金が多い)
ここからは、外注をせずに社内で給与計算をする場合の選択肢についてご説明します。
社内で対応する際の選択肢は、以下の2点です。
- クラウド給与計算システム
- 買い切り型の給与計算ソフト
まず、クラウド給与計算システムを選ぶとどんなメリットがあり、費用はどのくらいかかるのかをご説明します。
給与計算ソフトと比べた場合のメリット
具体的なメリットは…
- データを一元管理しやすい(関連業務のクラウドサービスと連携しやすい)
- 法令改正に自動で対応
- 1ヶ月程度無料トライアルをしてから購入を決められる
- データの自動バックアップや復旧ができる
- windows以外でも使える
データを一元管理しやすい(関連業務のクラウドサービスと連携しやすい)
クラウドサービス最大のメリットは、従業員データを一元管理できる点です。
勤怠管理システムと給与計算システムの連携する例で考えてみましょう。勤怠データをエクセルを使って給与計算ソフトに手入力する場合、入力ミスをすると給与計算を間違えますし、間違えないように入力しようとすると気疲れしますし時間もかかります。
勤怠管理システムと給与計算システムが連携していれば、データを手入力する手間をかけずに給与計算ができます。
勤怠管理以外にも、以下のようなサービスと連携できます。
- 経費精算
- 申請書管理
- 採用管理
- 従業員情報管理
- 見積・請求書 など
サービスによって、連携できるサービスが異なります。クラウド給与計算システムについては以下の記事で詳しくご説明しているので、ご興味がある方はあわせてご確認ください。
法令改正に自動で対応
残業代の計算方法や社会保険料率などが変更された場合、変更通りに給与計算をしなければなりません。
エクセルなどで給与計算をしている場合は、自力で法令改正の動向を確認しなければいけないので大変手間ですが、クラウドシステムを使う場合は自動で法令改正の内容が反映されるので、効率的かつミスが起きにくいです。
1ヶ月程度無料トライアルをしてから購入を決められる
無料トライアル期間中にサービスを使ってみて、使いやすさや欲しい機能の有無などを確認できます。買切り型の給与計算ソフトには無料トライアルがないことの方が多いです。
買ってみたけど使いにくかった、というトラブルを回避しやすい点もクラウド型のメリットです。
データの自動バックアップや復旧ができる
買い切り型の給与計算ソフトを使う場合、ソフトが入ったPCを紛失・破損するとデータが失われたり、個人情報が流出したりすることがあり得ます。
クラウドサービスの場合はクラウド上にデータが保存されます。データのバックアップをしているサービスを選べば、データが紛失するリスクを軽減できます。
windows以外でも使える
買切り型の給与計算ソフトはwindowsのPCでしか使えないものも多いので、Macユーザーがいる会社の場合はクラウド型だと便利です。
クラウド給与計算システムの料金相場
クラウド給与計算システムの課金方法は主に次の2パターンです。
- 月額型:毎月固定の月額が発生
- 従量課金型:給与計算の対象となった従業員の人数に応じて課金
初期費用の相場は0円~20万円
初期費用の相場は0円~20万円程度です。初期費用がない、あるいは10万円未満のサービスも多いですが、従業員人数が多い企業を対象としたサービスの場合は初期費用が高くなることがあります。初期費用についてはHP上に掲載されていないこともあるので、資料を取り寄せて確認する必要があります。
月額型の相場は1000円~10000円
月額型の相場は1000円~10000円程度です。
会社の規模(従業員人数)によってプランが3つ程度用意されているパターンがよくあります。
例えば、マネーフォワードクラウド給与の場合は以下のような料金体系です。
月額 | |
個人事業主向け パーソナル | 980円/月 |
小規模事業者向け スモールビジネス | 2980円/月 |
中小企業向け ビジネス | 4980円/月 |
従量課金型の相場は1人あたり300~400円程度
従量課金型の相場は1人あたり300~400円程度です。サービスによっては追加で月額がかかったり、初期費用がかかったりするので、トータルの費用がいくらかかるのかを確認しましょう。
上記の料金相場は、以下の記事をもとにご説明しています。クラウド給与計算システムを11程度ご紹介しています。各システムの料金と機能を比較できるので、より具体的な費用が気になる方はあわせてご確認ください。
クラウド給与計算システムの注意点
- インターネットに繋がらない環境には不向き
- フリーWiFiを使わないよう社内で共有するのが無難
- 運営元がどのようなセキュリティ対策をしているか確認しましょう
- 初期費用がかかることもある
クラウド給与計算システムが適しているのはこんな人
- システムや法令改正対応など、自動でアップデートしてほしい
- 給与計算担当者が変わる可能性がある(ネットであれば誰でもログインできるので、給与計算ソフトが入ったPCを持ち去られてログインできなくなるような心配がない)
- リモートワークが発生する
給与計算ソフトの料金相場(買い切りが多い)
Amazonや楽天、実店舗などで購入をしてPCにインストールするタイプの給与計算ツールです。インターネット接続が必須ではないので、パソコンが盗まれたりログインパスワードが漏れたりしない限り、インターネットを経由した不正アクセスのリスクが低い点はメリットです。
とはいえ、社会保険手続きや年末調整など、関連業務も効率化しようと思うとソフトの価格があがるので、クラウドシステムを使って必要な時に必要なサービスと連携した方がいいようにも思えます。
なお、クラウドでデータを保存したり、クラウド版と併用するような折衷型のサービスもあります。
クラウド給与計算システムと比べた場合のメリット
- 費用は初期費用のみなので、長期間使うほど割安になる
- インターネット接続していなくても使えるので、インターネット経由でのハッキング被害のリスクが少ない
1点目のメリットを期待する場合、法令改正があった場合にどのようにシステムに反映されるのかを事前に確認しましょう。保守に費用がかかる場合もあります。
給与計算ソフトの料金相場
給与計算ソフトの料金相場は、4000円〜40000円程度です(Amazon.co.jp 売れ筋ランキング: 人事給与ソフトより)。
給与計算と給与明細の発行程度ができるだけでよければ、4000円程度のソフトで十分です。
40000万円に近いソフトを選んだ場合は、以下のような機能がついていることがあります。
- 登録できる人数が多い
- アフターサポートの有無
- 法令改正への対応
- 社会保険の書類作成サポート
- 年末調整のサポート
- 源泉徴収票・各種申告書の作成サポート
- クラウドシステムとの連携の有無
給与計算ソフトの注意点
クラウド給与計算システムであれば、アップデートがあればすぐに反映されますが、買い切り型のソフトの場合は更新が難しいこともあります。この点が最大の懸念点です。
- 残業代や税金などの法令改正があった場合に、システムや計算がどのように更新されるのか確認しておく必要があります。
- さらに、勤怠管理や人事データ管理など、関連業務のシステムやソフトとの連携が(クラウドサービスと比べると)しにくいことがあります。
- PCにインストールする形式なので、良くも悪くも誰もがネット経由でログインしてツールを使うことができない。
- windowsでしか使えないことも。
- ソフトによっては、年に一度、任意の保守サービスで購入費用と同じぐらいの費用がかかることも。
給与計算ソフトが適しているのはこんな人
- オフラインで作業することが多い
- 月額課金が嫌である
- データを社内だけで管理したい
まとめ
なるべく費用対効果よく給与計算に対応する際のポイントとして、以下のような点をお伝えしました。
- 給与計算を社内で対応するのか外注するのかをまず決める
- 社内で対応する場合の選択肢は、クラウド型システムと買切り型ソフト
- 法令改正への自動対応や、関連業務を効率化するシステムとの連携のしやすさを考えると、クラウド型が使いやすい
- 給与計算だけを外注する場合、従業員人数に応じて課金される料金体系の民間企業、社労士、税理士のいずれかが選択肢になる
- 給与計算の料金相場は社労士も税理士も大きな差はないが、事務所ごとに料金体系を定めているため、相見積もりをした方が自社にとっての相場を把握しやすい
- 勤怠管理、就業規則、社会保険手続き、残業代や昇給のルール決めなど、人事労務に関する業務負担や検討事項が多い場合は社労士への相談が向いている
- 年末調整や確定申告を依頼したい場合や、既に取引がある場合は税理士への相談が向いている